キューブリック作品のロケーション

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在りし日のMGM英国スタジオ。現在は「Panattoni」という倉庫会社の倉庫になっている。

●『恐怖と欲望』
ロケーション:サンフランシスコのサン・ガブリエル山脈
拠点:ロサンゼルス

●『非情の罠』
ロケーション:ニューヨーク市内
拠点:ニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジ

●『現金に体を張れ』
スタジオ:ハリウッドのチャーリー・チャップリン・スタジオ(※閉鎖)
ロケーション:ロサンゼルス市内
拠点:ハリウッド

●『突撃』
スタジオ:ミュンヘンのガイセルガスタイク・スタジオ
ロケーション:ダッハウ(戦闘シーン)
拠点:ハリウッド

●『スパルタカス』
スタジオ:ユニバーサル・スタジオ
ロケーション:スペインのデヘサ・デ・ナバルビラー(大規模戦闘シーン)
拠点:ハリウッド

●『ロリータ』
スタジオ:ABPCスタジオ(現エルスツリー・スタジオ)
ロケーション:イギリス南部、アメリカ東海岸
拠点:ニューヨーク、ロンドン

●『博士の異常な愛情』
スタジオ:シェパートン・スタジオ
拠点:ニューヨーク、ロンドン

●『2001年宇宙の旅』
スタジオ:シェパートン・スタジオ、英国MGMスタジオ(※閉鎖)、エルスツリー・スタジオ
拠点:ニューヨーク、ロンドン

●『時計じかけのオレンジ』
ロケーション:ロンドン市内、イギリス南部
拠点:ロンドン

●『バリー・リンドン』
ロケーション:アイルランド、イギリス南部
拠点:アイルランド、ロンドン

●『シャイニング』
スタジオ:エルスツリー・スタジオ
拠点:ロンドン

●『フルメタル・ジャケット』
ロケーション:ロンドン市内、イギリス南部
拠点:ロンドン

●『アイズ ワイド シャット』
スタジオ:パインウッド・スタジオ
ロケーション:ロンドン市内、イギリス南部
拠点:ロンドン

 おおまかな流れとして、ニューヨークで映画づくりを始めたキューブリックはハリウッドに進出するが、『スパルタカス』で経験したハリウッドの様々な制約を避けるために拠点をニューヨークに移してロンドンで撮影、しばらくはニューヨークとロンドンを行き来(客船で)する生活になる。『時計じかけのオレンジ』で完全にロンドンに拠点を移し(ニューヨークの治安悪化、娘たちの教育の問題もあったらしい)、以降はロンドンに定住する・・・と理解しておけば良いでしょう。

 一般的にキューブリックは「引きこもり」と言われるのですが、それはロンドン北部のアボッツ・ミードに定住した頃、『時計…』の上映騒ぎで脅迫されてからで(アボッツ・ミードへの引っ越しは『2001年』製作時)、それまではニューヨーク、ロンドン、ハリウッドを行き来する生活でした。キューブリックはこの三つの街を比較して「映画製作ならハリウッドがベストだが、住みたくはない。ニューヨークはロンドンに劣る」「ロンドンはセカンドベスト」と評しています。
【ご注意】当ブログの記事は報告不要でご自由にご活用頂けますが、引用元の明記、もしくは該当記事へのリンク(URL表記でも可)を貼ることを条件にさせていただいております。それが不可の場合はメールや掲示板にてご一報ください。なお、アクセス稼ぎだけが目的のキュレーションサイトやまとめサイトの作成、デマや陰謀論をSNSで拡散する等を意図する方の当ブログの閲覧、ならびに利用は禁止させていただきます。※当ブログはネタバレありです。





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Canterbury House

 『シャイニング』が撮影されていたエルスツリー・スタジオのすぐ近くにある「カンタベリー・ハウス」という高層マンション。その駐車場に迷路の中央部のみのセットが組まれました。そこをシェリーとダニーが歩き、それをマンションの上層階から撮影、その映像を中央部をくり抜いた模型の映像と合成し、あの摩訶不思議なシーンが作られたそうです。確かによく見ると、実写と模型と合成部分がなんとなくわかりますね。でもパースを正確に合わせなければ違和感が出てしまいますので、かなり微調整を繰り返したのではないかと思います。

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 このシーンは小説にはない映画オリジナルですが、キューブリックが特撮や特殊メイクに頼らず、「映像の違和感」で恐怖を演出しようとしたのは、ルック社のカメラマン時代から「ストレートな表現」を好んだことにルーツがあると思います。確かに『2001年宇宙の旅』では特撮を多用しましたが、どれも特撮の技術水準を極限まで高めたもので、特撮による技巧には走りませんでした。キューブリックは「技術」には頼るが「技巧」には頼らないのです。それは『シャイニング』でも同様であるし、そのことはスティーブン・キングのTVドラマ版『シャイニング』と比較すればよく理解できます。キングの『シャイニング』は安易に「技巧」に走ってしまった失敗例と言えるでしょう。

 ・・・まあ、それなら北米版にある、あの「骸骨パーティー」はなんだったんだ?という話なんですが(笑。あのシーンはギャレット・ブラウンも批判していましたね。

 Googleマップのリンクはこちら
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画像引用:wikipedia - Longleat

 『バリー・リンドン』で池に浮かぶボートでバリーとレディ・リンドンがデートするシーンと、バリーがカードの誘いを断られるレストランのシーンが撮影された、イギリス・ウィルトシャーにある邸宅。

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 撮影されたのはこのボート遊びのシーンなのですが、初めて観た時からずっと違和感があって、なぜかと言うと池の位置がかなり高いのです。後ろの建物の1階部分が完全に見えません。となると、上記写真の建物正面の池ではないことがわかります。下のドローン動画には建物右側に川が流れているのが見えます。この川で撮影した可能性がありますが、ここで撮影しても建物1階部分が見えないということがあり得るのかどうか疑問です。残す可能性は、敷地内の小高い丘の上に当時は池があったのか、もしくはキューブリックがボート遊び用の池を作らせたかです。池自体が歴史的に貴重な建造物なら、ボートを浮かべるのがNGになり、わざわざ撮影用に作らせた可能性があります。



 下の動画の4:07にバリーがカードの誘いを断られるレストランの部屋が登場します。この撮影はジョン・オルコットが一番苦労したと語ったシーンです(詳細はこちら)。

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 『バリー・リンドン』はアイルランドやイギリス南部の歴史的建物の外観と内装をツギハギして撮影されています。全てのシーンの撮影場所を特定するのは非常に困難です。特に室内シーン、蝋燭シーンは難しいです(外観シーンは特定しやすい)。何か情報をお持ちの方がいらっしゃいましたら情報提供をよろしくお願いいたします。
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ワシントン・スクエア・ホテルのPV

ワシントン・スクエア・ホテルで映画の歴史にチェックイン

〈前略〉

 おそらく、ワシントン・スクエア・ホテルと関係のある最新の興味深い映画の1つは『アイズ ワイド シャット』(1999)です。映画界の伝説的人物スタンリー・キューブリック(『2001年宇宙の旅』(1968年)『時計じかけのオレンジ』(1971年)『フルメタル・ジャケット』(1987年))が製作と共同脚本を担当したこの映画は、実際でもセクシーな俳優カップル、トム・クルーズとニコール・キッドマンが主演しましたが、2年後に離婚することが広く報じられました。エロティック・ミステリーや心理的なドラマとして説明されているこの映画には、架空の「ホテル・ジェイソン」が登場します。Wikipediaによると、ホテルの外観やその他のグリニッチ・ビレッジの風景は、キューブリックの完璧主義者の基準により英国のロンドンのパインウッド・スタジオでリアルに再現されました。ワシントン・スクエア・ホテルにインスパイアされたキューブリックは、実際にマンハッタンにクルーを派遣して道の幅を測り、自動販売機の場所をメモして正確にシーンを再現しました。悲しいことに、キューブリックはワーナー・ブラザースに最後のカットを提出してからわずか6日後に亡くなり、これが彼の最後の映画になりました。

〈以下略〉

(全文はリンク先へ:ワシントン・スクエア・ホテル公式ホームページ




 『アイズ ワイド シャット』でビルに色目をつかうクラーク(アラン・カミング)が勤めているホテルは劇中では「HOTEL JASON」となっていますが、実は「ワシントン・スクエア・ホテル」を外観モチーフとして建てたセットです。キューブリックは実在するものをコピーしてセットを組むことが多いのですが、それは「まるっきりの空想で作ったものは説得力がない」という信念に基づくからです。キューブリックは乱雑に本が積まれたベッドサイトテーブルの資料写真を見て、「どんな美術スタッフでもこんな風には作れない」と語っています。

 そのモチーフになったワシントン・スクエア・ホテルですが、キューブリックが若い頃、チェスで日銭を稼いでいたワシントン・スクエアの角にあります。ひょっとしたらキューブリックはこのホテルの存在をすでに知っていて、第二班に資料写真を撮らせに向かわせたのかもしれませんね。そしてそれは、その事実を誇らしげにサイトに掲げるホテルにとっても喜ばしいことだったのだと思います。

 PVによると作家のヘミングウェイやジョーン・バエズ、ボブ・ディラン、チャック・ベリー、ママス&パパス、ローリング・ストーンズなど多くのミュージシャンも宿泊したそうです。キューブリックファン、ロックファンにとってチェルシーホテルと同じく、ニューヨークを訪れた際には是非立ち寄りたいスポットですね。

 Google Mapはこちら

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『アイズ ワイド シャット』でのシーン。ロンドンのパインウッド・スタジオに建てられたセット。
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Castles_of_Munster,_Castle_Grace
wikipedia - Castles of Munster, Castle Grace

ライアン・オニールとスタンリー・キューブリックは、ティペラリー県のキャッスル・グレイス農園の豊かな歴史の一部だ

 リンゴ園、ノルマン朝の遺跡、2つの川、古代の製粉所、これらすべてが本当にユニークな敷地の一部です。

 リンゴの果樹園がある古代のキャッスル・グレイスは、「何も足さない、ただ時間をかける」というキャッチフレーズにぴったりな場所ですが、これだけの歴史を持つ地所にとっては、あまりにも軽薄なスローガンです。

 1300年代、ストロングボウの義理の息子であるレイモンド・ル・グロのために建てられたノルマン様式の城がその始まりで、当時は「ル・グロ城」、現在は「キャッスル・グレイス」として知られています。

 その後、1800年代には商人で製粉業者のサミュエル・グラブによって、120エーカーの敷地に製粉所とジョージ王朝時代の邸宅が建てられ、さらに現代では、果樹園や多くの素晴らしい樹木が植えられています。また、最新の農園も設置され、その他にも多くのものがあります。

 1970年代には、スタンリー・キューブリック監督がアカデミー賞を受賞した映画『バリー・リンドン』の舞台に選びましたが、ノックミールダウン山脈の壮大な景色やノルマン城の素晴らしい遺構も、素手の拳で仲間の兵士と格闘するライアン・オニールの姿から見る者の気を逸らすことはできませんでした。

〈以下略〉

(全文はリンク先へ:Irish Examiner/2021年5月15日




 『バリー・リンドン』でイングランド軍に参加したバリーが、兵士(パット・ローチ)と殴り合いをしたシーンが撮影された、アイルランド・ティペラリー県の「キャッスル・グレイス(ル・グロ城)」を含む120エーカーが275万ユーロ(3.6億円)で売りに出されたそうです。記事は2021年5月15日付ですので、もう売れてしまっているかも知れません。

 『バリー・リンドン』のアイルランド・ロケは1973年5月〜11月までの6ヶ月間、IRA、もしくはその名を騙る何者かの脅迫で中止されるまで続きました。その間、アイルランド南部を転々とロケをした(同行した長女カタリーナは「キャラバンだった」と語っている)のですが、旅行嫌いのキューブリックが渋々とはいえ、よくこんな行程を了承したな、と思います。1974年にはイギリスに戻って撮影を再開しますが、同年にイギリスでの『時計じかけのオレンジ』の公開中止も決定しています。その判断にこの「IRAによる脅迫」が影響していないとは言えないでしょう。キューブリックは「連中は言うだけでなく本当にやる」ということを痛感したのではないでしょうか。

 現地のGoogle Mapはこちら。それにしても、よくこんな辺鄙な場所を見つけたものです。ロケハン担当スタッフと、そして何よりケン・アダムの苦労がしのばれますね。
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