キューブリックのルック社時代の写真は全てニューヨーク市立博物館が収蔵していますが、このように世界各地で要請があれば展覧会も開催しています。上記動画にはその様子が収められていますが、やはり実物をこの目で見てみたいものです。日本でもどなたか手を挙げていただけないでしょうか?客の入りはこの私が保証します(笑。いや、でも「見たい」って方、多いと思うんですけどね。展覧会と同名の写真集が発売になっていますので(詳細はこちら)、とりあえずはそれで我慢するしかないようです。
ところで、キューブリックの「ルック社でフォトジャーナリスト(ヤラセ込み)をしていた」という出自は、映画監督になっても同じスタンスで制作していたように思えるんですよね。
フォトジャーナリストは
・撮影に値する出来事を狙う(起きなければヤラセ手法を使う)
・たくさんのショットを撮って、その中からベストのショットをチョイスする
というのが仕事の定石です。キューブリックがセンセーショナリズムを得意としていたウィージーのファンだったのもそうですし、『博士の異常な愛情』のピーター・セラーズの演技を高く評価していたのも「撮影に値する出来事を起こせる役者」ということだと思います。同じことはマルコム・マクダウェルやジャック・ニコルソン、リー・アーメイにも言えますね。それに(スチール)カメラマンと仕事をしたことがある方なら、採用ショットの裏には大量のボツショットが存在しているのをご存知だと思います。これらのことは、まさにキューブリックが映画撮影の現場で行なっていたことと全く同じです。
世界中のファンの間で、こういう考察がなされているのかはわかりませんが、少なくともこの点を(はっきりと)指摘している日本語の論を私は見たことがありません。キューブリックのカメラマン時代については、主に構図の鋭さや被写体に対する視点ばかりで、こういった方法論的な話はなかったように思います。今後、この論点で記事をまとめてみたいと思っています。
上記展覧会はポルトガルのカシュカイシュ・カルチャーセンターにて現在開催中。期間は5月22日までです。ポルトガル在住のキューブリックファンの方、いらっしゃいましたら、ぜひのご訪問を。