キューブリック作品論

    このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック
 現在右カラムの中ほどで「キューブリック作品で一番好きなのは?」という投票を受付中ですが、当ブログ管理人のキューブリック作品の評価ランキングと作品論をご紹介いたします。あくまでいちファンの個人的見解・解釈です。当ブログの作品評価や論評、各種嗜好の傾向もこれに準じています。自説はあくまで一説です。読者に強要する意図はありませんので参考程度にどうぞ。

【1位】


2001年宇宙の旅 [Blu-ray](amazon)


【作品論(概論)】『2001年宇宙の旅』★★★★★


【2位】


アイズ ワイド シャット [Blu-ray](amazon)


【作品論(概論)】『アイズ ワイド シャット』★★★★★


【3位】


バリーリンドン [Blu-ray](amazon)


【作品論(概論)】『バリー・リンドン』★★★★★


【4位】


時計じかけのオレンジ [Blu-ray](amazon)


【作品論(概論)】『時計じかけのオレンジ』★★★★


【5位】


フルメタル・ジャケット [Blu-ray](amazon)


【作品論(概論)】『フルメタル・ジャケット』★★★★


【6位】


ロリータ [Blu-ray](amazon)


【作品論(概論)】『ロリータ』★★★★


【7位】


突撃 [DVD](amazon)


【作品論(概論)】『突撃』★★★★


【8位】


シャイニング [Blu-ray](amazon)


【作品論(概論)】『シャイニング』★★★


【9位】


博士の異常な愛情 [Blu-ray](amazon)


【作品論(概論)】『博士の異常な愛情』★★★


【10位】


現金(ゲンナマ)に体を張れ [DVD](amazon)


【作品論(概論)】『現金に体を張れ』★★★


【11位】


恐怖と欲望 [Blu-ray](amazon)


【作品論(概論)】『恐怖と欲望』★★


【12位】


スパルタカス [Blu-ray](amazon)


【作品論(概論)】『スパルタカス』


【13位】


非情の罠 [DVD](amazon)


【作品論(概論)】『非情の罠』


 因に「好きな作品ランキング」になると以下のようになります。「評価」と「好悪」はあくまで別の感性です。よく混同されがちですので、評価とは別に紹介させていただきます。

【1位】 『シャイニング』
【2位】 『時計じかけのオレンジ』
【3位】 『博士の異常な愛情』
【4位】 『フルメタル・ジャケット』
【5位】 『ロリータ』
【6位】 『2001年宇宙の旅』
【7位】 『アイズ ワイド シャット』
【8位】 『バリー・リンドン』
【9位】 『現金に体を張れ』
【10位】 『非情の罠』
【11位】 『突撃』
【12位】 『スパルタカス』
【13位】 『恐怖と欲望』

 けっこう違いますね。1位から5位まではちょっと主人公や登場人物がキちゃってる系の作品です。『シャイニング』は最初の面接のシーンでジャックがニヤっとしただけでもう楽しめちゃいます。アレックスやディム、ストレンジラブ博士にリッパー将軍、ハートマンやパイル、ハンバートとキルティ・・・一癖も二癖もある連中が暴れ回るのは観ていて楽しいですね。6位から8位は高い評価はしているのですが、しょっちゅう観たいとは思わないのでこの順位になります。9位、10位は犯罪ものですか、どこかシニカルな感じがあって好み。11位、12位はカーク・ダグラスのステレオタイプなヒーロー演技が苦手なのでこの順位になります。特に12位はそれに加えてメロドラマ要素もありますからね。13位は希少性・資料性は高いのですが、エンターテイメントとしての完成度は厳しいですね。
【ご注意】当ブログの記事は報告不要でご自由にご活用頂けますが、引用元の明記、もしくは該当記事へのリンク(URL表記でも可)を貼ることを条件にさせていただいております。それが不可の場合はメールや掲示板にてご一報ください。なお、デマサイトやデマ動画チャンネルの制作者、アクセス稼ぎだけが目的のキュレーションサイトのライター様などは当ブログの閲覧、ならびに利用は禁止させていただきます。※当ブログはネタバレありです。


KUBRICK.Blog.jp おすすめ記事





2
    このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

恐怖と欲望 [Blu-ray](amazon)


 キューブリック初の劇場用長編映画『恐怖と欲望』。若干25歳のキューブリックが作り上げたこの作品にははっきりとキューブリックの強い意志が込められている。それは通常の劇映画ではあまり試みられてこなかった「映像で語る」という手法だ。短く挿入されるインサート・カットやヴォイス・オーバーの多用、凝ったカメラアングルや画面構成、影を巧みに使った演出など、後にキューブリックのスタイルを象徴する手法が頻出している。キューブリックは最初から「演劇的映画」との決別を考えていたのだ。

 だがそれは後年の洗練さとはかけ離れた、いかにも青臭く、気取りだけが鼻につく稚拙なものだった。加えていかにも低予算ありきで作られた雑な脚本、敵と味方が同一の役者で演じられるという苦し紛れのキャスティング、飛行機や敵基地等、必要な大道具やセットを用意できなかった為であろう安っぽい映像・・・。キューブリックが後年封印したがるのも無理のない低質な完成度だった。

 斬新な映像表現にたいする自信と意欲、その反面求めたクオリティには到底及ばない様々な現実。キューブリックは次作『非情…』からはあえて「演劇的映画」へと舵を切り、まずは興行的成功と知名度のアップを目指すようになる。時折「映像で語る」という手法をチラつかせつつも、それは『ロリータ』まで約10年我慢しなければならなかった。

 本作で着目すべきは、若干25歳にしてはっきりと自身の目指す映像表現のアイデアに確固たる自信と確信を持っていた、という事実だ。それを確認できるだけでもファンにとっては価値ある映像だろう。キューブリックが封印したという事実に鑑み、鑑賞を自粛する考えもあるようだが、未公開映像ならともかく、いったんオフィシャルに上映された以上それを取り消す事はできない。それはどのジャンルのアーティストも同じだ。これについてはキューブリックに諦めてもらうしかなさそうだ。
【ご注意】当ブログの記事は報告不要でご自由にご活用頂けますが、引用元の明記、もしくは該当記事へのリンク(URL表記でも可)を貼ることを条件にさせていただいております。それが不可の場合はメールや掲示板にてご一報ください。なお、デマサイトやデマ動画チャンネルの制作者、アクセス稼ぎだけが目的のキュレーションサイトのライター様などは当ブログの閲覧、ならびに利用は禁止させていただきます。※当ブログはネタバレありです。

    このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック




 キューブリックがロンドンで『シャイニング』を制作していた頃、フィリピンである巨匠監督の大作が破綻寸前まで追い込まれていました。そうフランシス・フォード・コッポラ監督の『地獄の黙示録』です。キューブリックとコッポラ、直接交流があったかどうかは証言が残されていないので分かりませんが、キューブリックはコッポラの『ゴッドファーザー』を高く評価し、嫉妬さえしていました。そんな「意識している」コッポラの最新作『地獄の黙示録』の製作現場がまさに「地獄」と化していたその状況が、キューブリックの耳に届いていたとしても不思議ではありません。

 『ゴッドファーザーPART1/2』で名声を確たるものにし、巨匠として名高いコッポラでさえ思い通りに映画を創れない・・・巨額の制作費、キャスティングの変更や俳優の病気、わがまま放題のマーロン・ブランドやデニス・ホッパー、台風によるセットの破壊、やがて製作は完全に行き詰まり、ヒットどころか公開まで危ぶまれる事態に、『バリー…』のアイルランドロケで同じような(『バリー』の方が全然マシですが)経験をしていたキューブリックはとても他人事だとは思えなかったでしょう。

 結局1979年に『地獄…』は公開され大ヒット、無事制作費は回収され、カンヌ映画祭でグランプリを獲得するのですが、それまでの苦労と苦悩を考えれば、コッポラはこの快挙を手放しでは喜べなかったでしょう。しかも完成した作品は当初の予定とは似ても似つかないものになってしまっていたのですから。

 1979年といえば『シャイニング』は丁度ポストプロダクションに入った頃です。前作『バリー…』で興行的に失敗していたキューブリックは、この度こそヒットさせなければなりませんでした。あれだけトラブっていると聞き及んでいた『地獄…』がヒットした事もプレッシャーに感じていたのかもしれません。ここで記事にした明らかに説明的すぎるラストシーンも、その迷いのひとつの証左のように思えます。

 その後、ロケに懲りたコッポラはその『シャイニング』を参考にしたのか、次作『ワン・フロム・ザ・ハート』で全編セットでの撮影を敢行します。でもそれが裏目に出て興行的に大失敗、個人のスタジオを手放してしまいます。一方のキューブリックはというと、次作『フルメタル…』で『地獄…』の失敗を教訓にしたのか(『地獄…』の脚本家であるマイケル・ハーが『フルメタル…』にも参加している)、東南アジアにロケすることなくロンドンとその近郊だけでベトナム戦争映画を作ってしまいました。

 一般的にコッポラもキューブリックを「完全主義者」と評される事が多いですが、どちらが柔軟で抜け目なく映画製作をしていたのか、これでよく分かるかと思います。キューブリックは完全主義者と言われてしまう側面はあったかも知れませんが、いかに自作を高く売るかを心得た「商才ある商売人」であり、リスク管理やコントロール能力に優れた「優秀な管理者」でもありました(ユダヤ人の血でしょうか?)。キューブリックを論評する際、一方的に神格化するのも偏執狂扱いするのも間違いです。こういった「ちゃっかりした」キューブリックの一面もファンなら知っておくべきではないでしょうか。

 ちなみに、キューブリックは街で声をかけてきたファンが自分とコッポラと勘違いしていた、という話を面白おかしく語っています。
【ご注意】当ブログの記事は報告不要でご自由にご活用頂けますが、引用元の明記、もしくは該当記事へのリンク(URL表記でも可)を貼ることを条件にさせていただいております。それが不可の場合はメールや掲示板にてご一報ください。なお、デマサイトやデマ動画チャンネルの制作者、アクセス稼ぎだけが目的のキュレーションサイトのライター様などは当ブログの閲覧、ならびに利用は禁止させていただきます。※当ブログはネタバレありです。

    このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

バックビート BACKBEAT [DVD](amazon)

※ハンブルク時代のビートルズ(主にスチュとジョン)を描いた青春映画

 偉大なアーティストというものはいつの時代も、そしてそのジャンルも関係なく、ファースト・ステップもやはり偉大だった・・・。そんな感想を持ちながら渋谷の街を後にした。

 ここにはキューブリックの若さと、映画に対するエネルギーが凝縮し、渦巻き、爆発している。まるでハンブルク時代のビートルズのように。シングル『ラヴ・ミー・ドゥ』でデビューする前、ビートルズ(メンバーはジョン・レノン、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン、ピート・ベスト、そしてスチュワート・サトクリフだ)はドイツのハンブルクのクラブで激しいビートと大音響でまるでパンクバンドのような演奏をしていた。薄暗く汚い場末のクラブで荒くれ共や酔っぱらいを相手に、その時にできる最大限度でエネルギーを放出していたのだ。この「初期衝動」による創作エネルギーは、特定の年齢とそれを全開可能な状況が揃わないとなかなか実現できない。またとても厳しい環境下である事も必須の条件である。

 バンブルクでのビートルズはステージで寝泊まりし、楽屋はトイレ、ロクな音響や機材もない中、言葉の通じない客を相手にそのエネルギーを爆発させていた。この『恐怖…』もまさにそれで、最低限の機材、スタッフ、素人だらけの役者、そして4万ドル(1,440万円)という極少の予算・・・・ただ劇映画を創るんだ、という初期衝動のエネルギーだけを頼りに、それを隠しもせずキューブリックはそのままフィルムに焼き付けたのだ。凝ったカメラアングル、短く挿入されたインサートショット、ボイス・オーバーの重用は既にこの頃からアイデアとしてあったのだろう、勢い余ってくどいくらいに多用しているのも特徴だ。

 ただ、技術的、内容的には非常に稚拙でキューブリックが後に封印したがったのも納得するレベルだ。また、映画制作の基礎的なスキル、経験も不足している事が手に取るように分かる。それを批評し、低評価を下す事は非常に容易だ。(詳細な考察・検証は全国公開終了後に行います)

 だが、次作『非情…』ではとたんにプロらしくなってしまう事を考えると、この『恐怖…』における「若さと荒々しさ」は非常に貴重だ。それはハンブルク時代のビートルズにも共通する「若さと荒々しさ」だ。「ビートルズの前期と後期、どちらが好き?」と聞かれ「どちらでもなくハンブルク時代」と答える好事家も多いように、この若さ故のエネルギーの爆発には抗いがたい魅力がある。キューブリックはその「若さ」を嫌ってこの『恐怖…』を抹消しようと企てた。それはそれで理解できるが、今はこの作品の「若さ」を素直に楽しむべきだろう。それが頑に閉ざした封印をこじ開けてまで鑑賞しようとする我々ができる、キューブリックに報いる唯一の方法ではないだろうか。
【ご注意】当ブログの記事は報告不要でご自由にご活用頂けますが、引用元の明記、もしくは該当記事へのリンク(URL表記でも可)を貼ることを条件にさせていただいております。それが不可の場合はメールや掲示板にてご一報ください。なお、デマサイトやデマ動画チャンネルの制作者、アクセス稼ぎだけが目的のキュレーションサイトのライター様などは当ブログの閲覧、ならびに利用は禁止させていただきます。※当ブログはネタバレありです。

    このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック
EWS_nicole
ある「象徴」に対して二重三重の「意味」を与えるのはキューブリックの常套手段だ。

 キューブリックが『アイズ ワイド シャット』というタイトルを選んだ理由で、まず考えられるのは慣用句の「Eyes wide open」(しっかりと見る)のもじりだという事。それは脚本を共同執筆したフレデリック・ラファエルの著『アイズ ワイド オープン』からも伺えます。

 それと同時にこの言葉を聞いてすぐ思い出される格言があります。それは「Keep your eyes wide open before marriage, half shut afterwards.(結婚をする前には、両眼をぱっちり開けてよくみるがよい。しかし、結婚後は片眼を閉じたほうがよさそうだ。)」で、これはアメリカ独立の功労者であり、100ドル札の顔にもなっているベンジャミン・フランクリンのものです。説明するまでもなく「結婚前はよく見て相手を選び、結婚後は多少の不満にも目を瞑りましょう」という意味ですね。この格言を読む限り、そのまま『アイズ…』の内容を説明をしているようでとてもしっくりきます。つまり、キューブリックはこの格言を観客に想起させるために、それを略し『EYES WIDE SHUT』としたのでしょう。

 ・・・多分、そういった意味も含まれているとは思います。でもこんな単純な話でもないような気がします。ダブルミーミング、トリプルミーミングが大好きなキューブリックがそんな単純な理由だけでこのタイトルを採用するとは思えません。まず「Eyes wide」だけで「目を見開く」という意味があります。次の「Shut」は「閉じる」ですね。つまりこの文節だけで矛盾する意味を併せて持つトリッキーな表現となっています。無理矢理訳すなら「目を見閉じて」となるでしょう。では何を見て、何を見ていないのでしょうか。

 「見ている」のはもちろんこの映画です。ちょっと間の抜けた金持ちのイケメン医者が、美人の奥さんの浮気願望を聞かされて激しく動揺し、「だったら俺も浮気してやる」と夜の街に出かけたはいいがさんざんな目に遭って憔悴しきって妻の元に帰還。妻はそれを許した後「すぐセックスしましょう」と言い放って映画は終わります。とても美しく、思いやりに満ちた夫婦の愛の物語で、ハッピーエンドです。

 でもどうでしょう、観賞後にとてもハッピーな気持ちになれたでしょうか?「これから帰って嫁さんと子づくりに励むぞー!!」といったポジティブな気分になったでしょうか?それとも「トム様ってやっぱり素敵!こんな旦那様が欲しい!」と思ったでしょうか?「ニコール美人だなー、こんな人が嫁さんだったらなー」と思ったでしょうか?

 多分ほとんどの人が言いようのないモヤモヤした気分や、所在のない居心地の悪さを感じとって映画館を後にしたりプレーヤーの停止ボタンを押したと思います。それが「見ていない」ものの正体です。ヒントはニコールの最後の台詞「ファック」にあります。もちろん「セックス」という意味ですが他にも意味があります。どういう「ファック」なのでしょうか?何に対しての「ファック」なのでしょうか?それをキューブリックは閉じてしまっている「感性の目を見開いて」考えろ、と要求しているのです。

 因に私個人の解釈はこうです。ただしこれが全てだとは思ていませんし、もっと他にいくらでも解釈は成り立つでしょう。キューブリックは謎を残すのが上手い監督です。だから、もういいかげん「つまらない」「駄作だ」と思考停止するのは止めましょう。キューブリック作品は寡聞して存ぜぬでは駄目なのです。それは公開当時、さんざん駄作扱いされた『シャイニング』の今更ながらの再評価されっぷりが何よりも雄弁に物語っています。
【ご注意】当ブログの記事は報告不要でご自由にご活用頂けますが、引用元の明記、もしくは該当記事へのリンク(URL表記でも可)を貼ることを条件にさせていただいております。それが不可の場合はメールや掲示板にてご一報ください。なお、デマサイトやデマ動画チャンネルの制作者、アクセス稼ぎだけが目的のキュレーションサイトのライター様などは当ブログの閲覧、ならびに利用は禁止させていただきます。※当ブログはネタバレありです。

このページのトップヘ