著者の津田ゆうじ様よりご提供いただきました。ありがとうございました。
黒木探偵に持ち込まれた「私を探しますか?」と微笑むスマホ映像の美少女。同じ顔の少女が大正時代の古い写真の中にもいた。二つの時代に同じ少女。この謎から、全てが始まる。意図を持って刷り込まれる映像の「魔」。仕組まれた洗脳装置は映画だった。映像が、人々を最悪の世界へコントロールする。映画オタクの天才美少女、蟻亜三久がその謎に挑む。相棒は、前作『ピノキオは死を夢みる』のゾンビ男、火野時生。あのスタンリー・キューブリックが映画に隠した謎。様々な映画に隠された洗脳装置。そして巨悪は…第三帝国の男。映像に潜むマインドコントロールを暴け。二人は時空を超え、究極のゲームに挑んで行く。
(引用元:amazom『ピノキオは鏡の国へ 』津田ゆうじ 著)
おおまかにプロットを説明すれば「JKがゾンビ男とコンビを組み、タイムマシンを駆使して世界を救う話」となるでしょうか。時代も場所もあちこちに「飛び」、その「飛んだ先」での大活躍で二人は世界を(日本を)救おうとするのですが・・・そう簡単にはコトは運ばず、ありとあらゆる試練が行く先々で待ち受けています。いわゆるタイムトラベルものとして、タイムパラドックスは当然絡んできますし、歴史上の人物も続々登場します(ナチスドイツの面々は特に)。その登場人物の中にキューブリックがおり、「スタンリー・キューブリック監督に現代のJKが会いに行く」というくだりがあります。
実はこの小説、全編に映画の引用や解説(裏話)が散りばめられていて、その種類も古今東西かなりの分量があります(映画ファンなら楽しめます)。で、その解説に一番文章を割いていたのがキューブリックなんですね(著者は大ファンなのだそう)。もちろんキューブリックとJKが会った、などという事実はなく完全な創作なのですが、虚実取り混ぜた「会談シーン」はファンならニヤニヤできること請け合いでしょう。
最近話題になったクリストファー・ノーランの『オッペンハイマー』でも問題提起されていたように、この小説の中心には「核問題」があります。それはプロローグからも示唆されているし、核を巡るまるでスパイ小説のようなスリリングな展開(もしナチスドイツが核兵器を手に入れていたら)もあって、読むものを飽きさせません。
読み終わって感じたのは「アニメ化すれば面白くなりそう」というものでした。ただ例のチョビ髭やお寺マークの扱いをどうするかというセンシティブな問題はありますが・・・。個人的にはスーパーJKミクちゃんの八面六臂の大活躍と、イケメンゾンビ男の凸凹っぷりをアニメ絵で見てみたいと思いました。その際はぜひ魅力的なキャラデザ(『リコリコ』な感じがいいかな)でお願いしたいですね。