現金に体を張れ

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Joe Turkel
画像引用:IMDb - Joe Turkel

〈前略〉

マイク・ジェンカレッリ:『シャイニング』でスタンリー・キューブリックと仕事をするようになったきっかけについて教えてください。

ジョー・ターケル: スタンリー・キューブリックとは3作目の作品だった。彼は私が撮った『マン・クレイジー』という小さな映画で私を初めて知ったんだ。彼は私の仕事を気に入ってくれて、1956年に彼が撮った『現金に体を張れ』という作品に私を使いたいと言ってきたんだ。彼は、ちょっとした役だが、もっといいのがあると言った。そのとき私は知らなかったのだが、彼が言っていたのは『突撃』だったんだ。彼は僕の人生を変えたんだ。

マイク・ジェンカレッリ:キューブリックとは過去に2度仕事をしていますが、20年後の『シャイニング』で彼のスタイルは変わりましたか?

ジョー・ターケル: 彼は当時、多くの時間を割いていたが、『シャイニング』でも多くの時間を割いていた。彼は多くのこだわりを持ち、そのこだわりを使うことを恐れていなかった。『アイズ ワイド シャット』でもそうだが、プロデューサーや映画関係者の撮影現場への立ち入りを禁止するルールを設けていたんだ。彼はそういう姿勢だった。

マイク・ジェンカレッリ:『シャイニング』のバーテンダー、ロイドというユニークな役柄を演じるにあたり、どのような準備をされたのですか?

ジョー・ターケル: 僕にとっては単なる役作りのひとつだった。他の役と同じように取り組んで、それでおしまい。

マイク・ジェンカレッリ:ジャック・ニコルソンとの共演はいかがでしたか?

ジョー・ターケル: ジャック・ニコルソンは本当に最高だよ。ジャックの話をしよう。私は彼のキャリアに責任を負っている。1961年、彼は東海岸から出てきたばかりで、私は10年間そこに住んでいた。彼はほとんど一文無しだった。ある日、友人と競馬場に行ったとき、デイリーダブルを当てて4,400ドル(約46万円)を手にしたんだ。今でこそはした金だが当時は大金だ。お金を精算していると、友人がジャックを見かけたので、今何が起こったかを話したんだ。友人のケニーは、ジャックに800ドルの借金があると言ってきた。だから彼に金を払えと言って、金を渡した。ジャックは僕にこう言ったんだ。「なあターケル、俺はニューヨークに帰ろうと思ったんだが、クソ寒いんだよ。この金で冬を越すよ」と。でもその冬の間に、彼は幸運にも役を得ることができ、あとは歴史に残ることになったんだ。

マイク・ジェンカレッリ:2つのシーンで構成される役ですが、それらが映画に与えた影響をどのように振り返ることができますか?

ジョー・ターケル: これほどまでにインパクトがあったとは驚きだよ。スタンリーと私は撮影現場で、この映画の素晴らしさについて話していたんだが、私は彼に「スタンリー、ありがとう。でも25年も映画の間隔を空けたくないんだ」と言ったんだ。私たちは同じニューヨーカーなので、特別な絆があったんだ。彼はまた一緒に仕事をしようと言ってくれたが、それが彼と会った最後となった。

マイク・ジェンカレッリ:作品があまりにも違うので、『シャイニング』と『ブレードランナー』の制作はあまり変わらなかったのでしょうか?

ジョー・ターケル: リドリー・スコットは、私の撮影中に3回ほど、スタンリー・キューブリックならあるシーンにどうアプローチすると思うかと聞いてきたよ。彼は完全に彼の作品に魅了されていた。スティーブン・スピルバーグは、彼のことを「映画作りのグランドマスター」だと言っていたよ。だからリドリー・スコットがやってきて、私に提案を求めてきたことは驚きだった。

マイク・ジェンカレッリ:エルドン・タイレル博士という象徴的なキャラクターを演じるにあたり、どのような準備をされましたか?

ジョー・ターケル: まあ、そうなるように仕向けたよ(笑)。そういう風に演じたんだ。いい役だったし、うまくいったよ。もっといい役もあったし、もっと悪い役もあった。世界の支配者からバーテンダーまで、私が演じた役はどれもユニークだった。どれもクレイジーだった。コメディも好きで、テレビでは何年もやったよ。

マイク・ジェンカレッリ:リドリー・スコットが今更ながら続編を手がけることについてどう思いますか?

ジョー・ターケル: 1作目ほど良くはならないだろう。続編は決してそうではない。常に1作目が注目されるんだ。

マイク・ジェンカレッリ:コンベンションでファンに会うことの何が一番好きですか?

ジョー・ターケル: それは素晴らしいことだ。本当に素晴らしい。彼らはとても喜んでくれる。僕に会えたことをとても喜んでくれる。Q&Aをしたとき会場は完全に満員だった。キューブリックと『ブレードランナー』について質問されたよ。『シャイニング』のバーテンダー、ロイドのコスプレをしてバーで写真を撮ったんだけど、あれもすごかったね。

(引用元:MEDIA MIKES/2012年7月19日





 ジョー・ターケルが2022年6月27日、サンタモニカの病院で亡くなりました。享年94歳。故人のご冥福をお祈りいたします。

 そのジョー・ターケルの10年前のインタビューがありましたのでご紹介します。なんと、ジャック・ニコルソンと競馬場でこんなやりとりがあったんですね。1961年というとロジャー・コーマンの映画に出演していた頃でしょうか?『シャイニング』での共演は正確には「再会」ということになります。キューブリックについてはどのインタビューでも「キューブリックがベスト」「私のヒーロー」と常に好意的に語っています。同郷人(どちらもニューヨーク出身で同世代)というシンパシーもあったようです。

 キャリアのハイライトは『シャイニング』のロイドと『ブレードランナー』のタイレル博士だというのは誰しもが認めるところでしょう。出演時間は短いものの、どちらも強烈なインパクトを残しています。いやインパクトどころか、この両シーンはもはやジョーの存在感なしには語れないと言ってもいいでしょう。どちらも映画史に燦然と輝く傑作ですから、ジョーの俳優人生は非常に充実したものだったのではないでしょうか。そのことはこのインタビュー(俳優を引退し、頻繁にイベントに出席していた頃)でも伺えますね。

 最高の映画の、最高のシーンをありがとう、ジョー・ターケル!そして永遠なれ!!
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panty_and_stocking

 そういえばそんなアニメもあったな・・・と思って調べてみたら、2010年オンエアなんですね。制作はあのGINAX。アメリカのカートゥーン『パワーパフガールズ』を思わせるキャラデザですが、時折日本のアニメキャラ的なサービスカットもあり、中割りを省いた作画はテンポよく派手に動いてくれます。

 この『現金に裸体を張れ』というエピソードは『現金に体を張れ』とは全く関係なく、パンティとストッキングがギャンブルに「裸体を張る」だけのお話ですが、当然引用元は『現金…』だと思います。エロと下ネタが多いので、そういったお下劣ノリを楽しめれば楽しめるかも。wikiで確認したところ、各話のサブタイトルの全てが映画ネタですので、その関係で採用されたのでしょうね。視聴は「dアニメストア」「GYAO!」「amazonプライム」などの動画配信サービスで有料で観れますので、興味のある方はぜひどうぞ。

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──あなたは『現金に体を張れ』に出演しておられましたね?

 スタンリー・キューブリックの! まったく素晴らしい映画だ。

──誰を演じられましたか?

 私はマリー・ウィンザーの夫を演じた。競馬の係のね。いい映画だった。スタンリーの最初の映画だ。ニューヨークで短編を3000ドルで作ってから(※『非情の罠』のこと)、こっちに来て監督した映画だ。いい映画、素晴らしい監督だ。後の作品を見てもわかるだろう? 良い監督だ。

──それで、その映画で何をされていましたか?

 どういう意味だ? ショットガンで撃たれる役さ。覚えてないのか? 私の顔がめちゃくちゃになる・・・。

──どうやってそのシーンを撮ったんですか?

 メイクアップの男が良い仕事をしてくれた、本当に。素晴らしい男だった。BB弾を私の顔に貼り付けたんだ。それから私は妻を撃って殺して死ぬ。スターリングは恋人と一緒に逃げる。彼は素晴らしい俳優だった。昔落下傘兵をしていたんだ、知ってたかい? オリジナルのエンディングでは彼はFBIに蜂の巣にされて倒れて死ぬ予定だったんだ。だが彼は落下傘兵の仕事で背中を痛めていたからできなかった。だからエンディングを変えたんだ。覚えてるかい? 犬が出て来て、札束が舞い散るエンディングになったんだ。良いファミリー、良い男だった。キューブリックは私に『ロリータ』のためにイギリスに来て欲しかったんだが、イギリス側はスターを欲していた。私のような個性派俳優は望まれていなかったんだ。




 このインタビュアーは『現金…』を観ずにこのインタビューをしたんでしょうか。終始話が噛み合わす、ちょっとじれったいですね。とはいえ、『現金…』のオリジナルエンディングの話は貴重です。当初は完全なバットエンドだったんですね。『ロリータ』のキャスティングの話も出てきますが、これはハンバート役でしょうか? キルティ役でしょうか? どちらもあり得る話ですが、エリシャならハンバートのような気がします。

翻訳協力:Shinさま
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 脚本が残っていたんですね。日付がないので時期は不明ですが、少なくとも脚本時には仮題として『バイオレンスの日(Day of Violence)』というタイトルが与えられていた時期があった、ということがこれでわかります。クレジットは伝えられている通り「脚本:スタンリー・キューブリック、追加台詞:ジム・トンプソン」となっています。

 よくキューブリックは脚本のクレジットで揉めますが、それはキューブリックにとって脚本は叩き台でしかないからです。脚本が完成しストーリーラインが決定すると、それをベースに俳優のキャスティング、セットやロケの手配をしますが、キューブリックの場合「撮影も創造の場」ですので、台本は撮影現場でどんどん変更になります。その影響で元の脚本から違った作品になってしまうのが常で(キューブリックは「脚本が完成するのは撮影が終わった時」と語っています)、その変更の判断ができるのはキューブリックだけであり、その結果、最終的な脚本のクレジットでキューブリックの占める割合が大きくなってしまうのです。

 もちろん叩き台としての当初の脚本や、その制作に協力してくれた小説家の役割を軽視しているわけではありません。ですが、キューブリック独自の撮影現場の方法論を知らなければ、脚本協力者からクレーム付くのも仕方ないといえば仕方ないですね。
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americananimals
予告編はこちらでご覧ください。

 大学生4人が時価1200万ドル(約12億円相当)のビンテージ本強奪を狙った実話を描く「アメリカン・アニマルズ」の本編映像を、映画.comが先行入手した。前代未聞の強盗に挑もうとする主人公たちが“映画を教科書に計画を練る”シーンを収めている。

〈中略〉

 本編映像では「ザ・クラッカー 真夜中のアウトロー」「マッチスティック・メン」「ユージュアル・サスぺクツ」「ザ・ドライバー」「明日に向って撃て!」「スティング」「男の争い」「華麗なる賭け」といった参考書ならぬ“参考映画”が登場するなか、主人公たちが「現金に体を張れ」(スタンリー・キューブリック監督)を真剣に見入っている光景を活写。スペンサーが映画を参考に図面を起こし、ウォーレンが「現金に体を張れ」のセリフから計画を練る様子が映し出される。なお、今回披露されたシーン以外にも、劇中には「オーシャンズ11」「レザボア・ドッグス」を“真似する”シーンが登場するようだ。

〈以下略〉

(全文はリンク先へ:映画.com/2018年4月18日





 過去の犯罪映画を調べるというシチュエーションで登場する映画の中に、『現金に体を張れ』があるというのはなかなか奮ってますね。『現金…』のオマージュといえばクエンティン・タランティーノ監督の『パルプ・フィクション』が有名ですが、キューブリック・フォロワー(最近では「キューブリキアン」と言うそうです)の代表格であるジェームズ・キャメロン監督の『ターミネーター2』でも『現金…』のオマージュシーンがありました。

 この『アメリカン・アニマルズ』は2019年5月17日(金)から全国公開されます。公式サイトはこちら
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