博士の異常な愛情

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 特別版DVDやBDに収録されている『博士の異常な愛情』の予告編に字幕を付けた動画をソニー公式がアップしていましたのでご紹介。

 この予告編を制作したのは、オープニング・シークエンスも担当したパブロ・フェロ。キューブリックは当初アーサー・リプセットにオファーしていたのですが断られてしまった(詳細はこちら)ために、当時CMディレクターをしていたパブロ・フェロにオファー。ものの見事にキューブリックの期待に応えたのでした。BGMやナレーションは『Dr. Strangelove and the Fallouts: Love That Bomb』が使用されています(詳細はこちら)。

 そのパブロ・フェロのインタビュー記事はこちら。ところで予告編最後の「月曜日、もしくは再来週の木曜日。もしくは日、水、金、火、土曜日に見てください」ってどういう意味なんでしょう・・・?当時のギャグか何かなんでしょうか?謎です。
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 米ソ冷戦時代を背景に核戦争の危機を描いた作品。『十二人の怒れる男』など社会派の巨匠シドニー・ルメットが、密室の会話劇を中心に緊迫感あふれるドラマを構築。同年の『博士の異常な愛情』と並び高い評価を得た。

 水爆を搭載したアメリカの爆撃機がモスクワ爆撃命令を受信。それは機械の故障による間違った指令だった。すでに爆撃機編隊を呼び戻す術は失われ、合衆国大統領は、核戦争回避のために恐ろしい提案をする……。

(全文はリンク先へ:BS松竹東急公式サイト/日曜ゴールデンシアター『未知への飛行』




 キューブリックファンにはおなじみ、キューブリックに盗作と訴えられたシドニー・ルメット監督の『未知への飛行』が10月23日(日)18:51よりBS松竹東急でオンエアされます。

 実はキューブリックが『未知への飛行』を訴えた真意は、製作が進んでいた似た内容の『博士の異常な愛情』より先に完成・公開させないためだった(『博士…』公開後に和解している)、というのもよく語られているエピソードですが、キューバ危機の記憶もまだ生々しかった当時、こういった「核戦争もの」はブームになっていて、『博士…』どほではなかったにせよ、『未知…』もそこそこヒットしたというのも当時の世相を色濃く反映しています。

 キューブリックと違って(笑、誠実で実直な映画づくりで定評のあるルメットらしい、実に誠実で実直な作品です。未見の方は同テーマにおける『博士…』との対比を楽しめる良い機会だと思います。また、ちょっと邪道ですが「本来はこうだった『博士の異常な愛情』」という見方もできるかも知れません。『博士…』の原作小説『破滅への二時間』は非常に真面目な内容ですので。

情報提供:崎環さま

追記:2022年11月3日、4日に川崎市アートセンターで開催される『2022 KAWASAKIしんゆり映画祭』で上映されるそうです。「大画面で観てみたい」という方はぜひ足をお運びください。詳細はこちら

情報提供:rinntapapaさま
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DrStrangelove
画像引用:IMDb - Dr Strangelove

ブラックユーモアで捉えた米ソの核開発競争

 国際政治学の議論というのは得てして抽象的になりがちで、掬いきれない部分がどうしても残ります。たとえば、アフガニスタン紛争の際に様々な議論がありましたが、市井のアメリカ人がどう受け止めているのか、なぜ紛争に賛成するのかなど、わからないことばかりでした。最近なら米中の対立を見て「中国政府が」とか「習近平体制が」などと言って考えますが、それでは中国に暮らす人から世界がどう見えているのかはわかりません。相手の社会を知らずに決めつけるのは危険ですが、これは国際政治学では手が届かない部分です。その点、映画は違う。フォーマルな理論とは違う引いた視点から捉えることで見えてくる社会の姿というものがある。そんな思いを胸に映画を観てきました。

〈中略〉

映画は政治学の手が届かぬ部分に迫れる

 それが一転するのが第二次世界大戦です。『カサブランカ』に現れるドイツ人は明らかに悪者でした。アメリカが戦争で世界を安全にし、民主主義という望ましい仕組みを広める、という考え方が根底に見えます。そしてこれがアメリカの正統な戦争認識になりました。映画は社会通念の変転を如実に映し出しています。

 一方で、映画にはそれと違う重要な働きもあります。そのことがよく表れているのが『博士の異常な愛情』です。まだ30代のスタンリー・キューブリック監督が米ソの冷戦と核兵器競争を辛辣に風刺した名作です。

〈以下略〉

(全文はリンク先へ:東京大学 UTokyo Focus/2022年6月14日




 我が国の学問の最高学府、東京大学のサイトに『博士の異常な愛情』が採り上げられていたのでご紹介。

 法学政治学研究科教授、藤原帰一氏の記事ですが、「(映画には)フォーマルな理論とは違う引いた視点から捉えることで見えてくる社会の姿というものがある」というスタンスは素晴らしいですね。「正しいこと」は絶対的なものではなく、相対的なものである場合が多く、キューブリックも「ナチスドイツに屈して戦争をしない方が良かったとは思わない」「絶対的な悪とは人類が自らを滅ぼす文明ぐらいなものだ」といったことを語っています。理論は理論として構築すべきですが、理論が世の中の問題を全てを解決し、説明してくれるわけではありません。それは映画も同じで、映画で描かれたことが常に正しいというわけではないのです。

 キューブリックは映画の持つ虚飾や虚構に自覚的で(ルック社でヤラセ写真ばかり撮っていた影響もあるかもしれない)、決して「映画で正しいことを描く」ということをしなかった監督です。むしろ「間違ったことばかり描いている」と言っていいほどです。映画は真実を描くには不適切なメディアで(かならず制作者のバイアスがかかる)、得てして底の浅いプロパガンダに成り下がりがちです。キューブリックはむしろ「間違ったことを描く」ことにより、逆説的に「真理」に近づこうとした監督です。それは『時計じかけのオレンジ』、そしてこの『博士の異常な愛情』に顕著なのはいうまでもないですね。

 監督は少し引いて見ている。ここには正義の戦争を行うアメリカは微塵も存在せず、馬鹿なことをやるんじゃないぞという意図が見えます。対象を突き放して作り手が独自の表現をする、映画というものの力を感じさせる一作です。

 対象を突き放して描くのがキューブリックの描き方です。現在の映画は共感性(つまり反響と興収欲しさ)を重視するあまり、対象に近づきすぎるぐらい近づいて描くやり方が主流です。キューブリック作品に慣れていると(観過ぎじゃないの?と言われそうですが。笑)、その「近さ」を「くどく」感じてしまうことが多々あります。見ただけで味がわかるコッテリとしたスープを無理やり飲まされているようなものです。つまり情報量(制作側の主張や意図)が多すぎ、分かりやすぎるのです。それが今風だと言えばそれまでですが、それでは満足できない層も確実に存在します。キューブリック作品はそれを分かつ分水領として存在している面もあるかも知れませんね。
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 キューブリックのニューヨーク時代の友人には、その後映画業界やTV業界などで活躍した人が多かったのですが、この『ボクサー』の脚本を担当したハワード・サックラーもその一人です。

 キューブリックとタフト高校で同級生だったサックラーは、キューブリックの劇映画処女作『恐怖と欲望』と次作『非情の罠』で脚本を担当します。その後劇作家となり、『ボクサー(グレート・ホワイト・ホープ)』でピューリッツァー賞、トニー賞、ニューヨーク・ドラマ・クリティックス・サークル賞を受賞しました。本作は1967年にブロードウェイで上演、そして1970年には映画化されました。主役を演じたジェームズ・アール・ジョーンズとジェーン・アレクサンダーはオリジナル作品に出演、その後ブロードウェイ版、映画版でも同じ役を演じました。二人はこの作品でアカデミー賞主演男優賞・主演女優賞にノミネートされています。

 そのジェームズ・アール・ジョーンズは『博士の異常な愛情』で爆撃手のゾック役を演じていますが、有名なのは『スター・ウォーズ』のダース・ベイダーの声です。この予告編でも、その深くてよく響く「良い声」を聞かせてくれます。Amazonのレビューでも評価が高いようですので、ぜひ本編も観てみたいですね。
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Titan_Bomb
左がICBM「タイタンII」、右が『博士の異常な愛情』の水爆。

 『博士の異常な愛情』に登場するB-52に搭載された水素爆弾のデザインは、現在の目で見ると違和感を感じます。これは、当時水爆は軍事機密扱いだったためで、デザインを担当したケン・アダムは「(映画制作時の)1962年の時点では、核(水素)爆弾なんて見たこともなかった」と語っています。

 では、現実はどうだったのかというと、1961年に起こったノースカロライナ州でのB-52墜落事故「ゴールズボロ空軍機事故」が参考になると思います。この事故では実際に1発の水素爆弾が爆発寸前だった可能性があるという、非常に恐ろしい事故なのですが、墜落したB-52には、4メガトンのMARK39水爆2発が搭載されていたのです(当時事故は機密扱い)。

Mark_39_nuclear_bomb
B-52に搭載されていたMARK39核爆弾(水爆)。

写真を見る限り、『博士…』に登場した水爆よりずいぶんと小ぶりです。それにカラーリングも全く異なりますので、ケンもキューブリックもやはり水爆のことは全く知らなかったと考えて良さそうです。

 ですが「全くの空想」でデザインすることをキューブリックは良しとしませんので、何か元になったデザインがあるはずです。そこで候補に上がるのがICBMの「タイタンII」です。形状といい、カラーリングといい『博士…』の水爆と非常によく似ています。実はキューブリックは『博士…』の原作、『赤い警報』のストーリー上の重大な「プロットの穴」に気がついていました。それは1962年の時点において、B-52による核攻撃警戒活動はすでに時代遅れになっており、ICBMによる核ミサイル抑止に移行しつつあったことです(詳細はこちら)。つまり、時代に合わせてICBMが核危機を起こすプロットにしたいと考えていたが、それだと米ソ首脳が右往左往するという時間がなくなってしまうのです。

 キューブリックは結局、核ミサイルの存在を無視することにせざるを得ませんでしたが、その判断を下すためにICBMについても調べ上げたのだと思います。となれば、ICBMのデザインを元に水爆のデザインをさせたと考えても不思議ではありません。もちろん「爆弾」と「ミサイル」とは運用方法が全く異なる「別物」です。ですが見たこともない水爆のデザインに、なんとかリアリティを与えようとして、似たような用途の核ミサイルを参考にした可能性はかなり高いと思います。核爆弾に米空軍のマークがある理由がこれで説明できますし、ICBM黎明期の公開当時は、あまり不自然には見えなかっただろうと思います。それは現在に至るまで「『博士…』の水爆のデザインは間違っている」という指摘がない(いや、ミリオタには指摘されていたかもしれませんが・・・)ことを考えれば、このデザインは劇中に「なじんでいる」と言えるのではないでしょうか。

 キューブリックの「わからないものは、今あるものを参考・発展させてデザインする」という方針は、次作『2001年宇宙の旅』で徹底されることになります。また、その方針は異星人のデザインを「想像できないものは想像できない」として放棄させることにもつながりました。更に言えばそれはキューブリック作品の普遍性に大きく寄与しており、なおかつ現在の映画制作における「常識」になっていると考えると(当時は映画の劇中に「空想の産物」が溢れてかえっていた)、キューブリックの先見性は、やはり目を見張るものがあると思っています。

▼この記事の執筆に当たり、以下の記事を参考にいたしました。
Quora/Were the nuclear weapons dropped in the Kubrick film Dr Strangelove accurately modelled?
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