2001年宇宙の旅

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 ボウイファン、キューブリックファンには今更説明不要の名曲『スペース・オディティ(Space Oddity)』ですが、長い間不法にアップロードされた荒れた映像のMVしか視聴できませんでした。それがいつの間にか公式チャンネルが立ち上がり、やっと正式に高画質で視聴できるようになったようです。

 ボウイが逝去してもう5年が経つんですね。ボウイについては熱心なファンやマニアが大勢いらっしゃるので軽々には語れませんし、語るつもりもありませんが、この曲を聴くとアコギを持ち出してきてC-F-G-Aのリフを弾きたくなるのは管理人だけではないはず・・・(笑。

 YouTubeデヴィッド・ボウイ公式チャンネルはこちら
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2001
画像引用:IMDb - 2001: A Space Odyssey


 「ローマの休日」から「ローズマリーの赤ちゃん」まで。ヒッチコックにトリフォーに小津安二郎の誰もが聞いたことのあるタイトル、実はまだちゃんと観たことないってことありませんか? そこで、Netflixで観られるそんな作品をピックアップ。おうち時間中にそんな“今更未見”作をすかさずチェック!

〈中略〉

2001年宇宙の旅(1968)

 SF映画の原点と言われる、名匠スタンリー・キューブリック監督の不朽の名作。内容は難解ながら、時代をまるで感じさせない映像美は必見の価値あり。猿が骨を武器として使う最初のシーンから、かなりのインパクトで、「ツァラトゥストラはかく語りき」「美しく青きドナウ」といったクラシック音楽の使い方も強烈。400万年前、人猿が石の板(モノリス)と遭遇、知能を授かる。月のクレーターの地中から謎の石碑が発掘された18か月後、最新型人工知能「HAL9000型コンピュータ」を搭載した宇宙船ディスカバリー号が木星探査に向かう。やがて意志を持ったHALが反乱を起こす。

〈以下略〉

(全文はリンク先へ:ELLE/2021年5月25日




 女性ファッション誌の「ELLE」のWEB版が、50-60年代の名作映画で『2001年宇宙の旅』を採り上げていたのでご紹介。ピックアップされた作品を見てみると、「名作」と呼ぶにはなかなかアクの強い作品も混ざっていて、ELLEの読者層にそぐわないと思わないでもないですが、「50-60年代」「Netflixで配信中」という縛りがあったせいなのかもしれませんね。

 ともあれ、こういったメジャーな雑誌がキューブリック作品を採り上げていただけるのは喜ばしいことです。キューブリックアパレルの普及もあって、女性ファンも増えてきている実感もあります。それは2013年から始めたこのアンケートにも表れていて、開始当初は女性はほんの1割程度でしたが、現在は1/4ぐらいに割合が増えています。確かにキューブリック作品には、女性が視聴するには不都合な表現がありますが、そんな表層では語れない、性別や年齢を超えた魅力があるのも事実です。先入観や巷の噂などに惑わされず、「キューブリック作品を初見できる」という「特権」と、それに伴う「感動」を、(老若男女問わず)存分に楽しんでほしいと思っています。
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2001-A-Space-Odyssey-064

●宇宙ステーションVのロビーのイメージボードと撮影されたシーン

 イメージボードでは到着カウンターやバーが見えます。また、大きく開けられた窓からは月が見えます。セットではそれはヒルトンホテルのフロントに代わり、バーは自動販売機へと変更になりました。ずいぶんとシンプルで人の少ないデザインになりましたが、宇宙ステーションという限られた狭い空間に、厨房設備や大きな窓は現実的でないと判断されたのかもしれません。


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●クラビウス基地内の公園のイメージボードと撮影されたシーン(カットシーン)

 キューブリックが公開直前にカットしたことで有名なシーンです。比較すると天井一面の照明や壁のブルー、青々とした芝生(人工芝?)などが共通していますが、映画館やカフェ、学校などは省略され、通路の表示だけがあるがらんとした空間になってしまいました。本来はイメージボードにあるような、樹木も配置する予定だったのでしょうか。であれば、天井の照明はその名残でしょう。樹木を維持するには相当量の光源が必要になるはずです。このシーンにはキューブリックの長女と次女が出演していることでも知られていますが、一番左の少女が長女のカタリーナ、その隣が次女のアンヤではないかと予想しています。


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●クラビウス基地内の会議室のイメージボードと撮影されたシーン

 イメージボードでは球形の機器が見えますが、これはプロジェクターだと思います。だとすると、四方の壁はスクリーンですね。セットでは照明の役目しか果たしていませんでしたが、フロイド博士の挨拶の後、背後のスクリーンには会議の内容の情報が表示される設定だったのかもしれません。セットをよく見るとスクリーン上部に穴が見えます。もしこれがプロジェクターの映像投影口(2つあるのは立体映像的なものを想定していた?)という設定なら、キューブリック(か誰かが)「プロジェクターが部屋の真ん中にあったら邪魔では?」という指摘で壁に埋め込んだ(設定)だと考えられます。細かいことまでこだわるキューブリックなら、そんなことを言い出してもおかしくないですね。

 3点とも凝ったデザインからシンプルなものに変更になっています。これにはいくつか理由が考えられますが、一番大きな理由は予算の問題ではないかと想像します。キューブリックのこだわりのせいでスケジュールは遅れ、予算はどんどん膨らんでいたので、シーンは必要最低限に削られ、セットもシンプルなものに変化していったのだと思います。色については、トニー・マスターズによると「元々いろいろな色をつけたのだが、スタンリーがどんな色も受け入れなかったので、無色(白)にすれば失敗しようがない」とキューブリックに提案したそうです。

 モノリスの形状や色の決定、特撮シーンの撮影アイデア(特に遠心機のシリンダーを通って降りるシーンのアイデアは秀逸)など、『2001年…』におけるトニー・マスターズの貢献は、ファンの想像をはるかに超えるものだったことは『2001:キューブリック クラーク』を読めばよく理解できます。もちろんキューブリックがこだわりにこだわって、安易なレベルで妥協しなかったのも大きな要因ですが、そもそも仕事を依頼したスタッフに、それに応えるだけの優れた才能がなければ成立しません。キューブリックの厳しすぎるとも思える高レベルの要求は、それを見越してのことだったのです。キューブリックの厳しい態度の表面だけを単純に批判し、スタッフや俳優を過剰に擁護や同情(いじめだとか、かわいそうだとか、こんな上司は嫌だとか)する前に、その事実を見逃すべきではないと私は考えます。

 余談ですが、この美術監督にキューブリックは手塚治虫も候補者としてリストアップし、実際にオファーの手紙まで出しています。キューブリックが『鉄腕アトム』を観て、手塚治虫のどこに才を見出したのかは不明ですが、この方面の高い要求を手塚治虫が満たせたとはとても思えません(個人的には手塚治虫の最も偉大な才能はストーリーメイクだと思っています)。手塚自身も「やらないほうがよかった」と語っていることですし、『2001年…』における手塚治虫の存在を「過大に」語るのは控えるべきだと(誤解の元になる)思います。

出典:The official Facebook page of Stanley Kubrick/2021年5月25日
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Nakagin_Capsule_Tower_2008
レトロフューチャー感満載の外観と室内(wikipedia

 日本を代表する建築家・黒川紀章が設計し、世界で初めて実用化されたカプセル型の集合住宅『中銀カプセルタワービル』。日本発の建築思想・メタボリズムが体現された貴重な建物で世界的に有名な観光資産でもあるが、3月22日、老朽化により建て替えを前提にした不動産業者への売却が決定した。現在、実際に稼働しているカプセルは140基中約30基。外観・内装は映画監督スタンリー・キューブリックらが描いた近未来の世界観そのものだが、同ビル保存・再生プロジェクト代表・前田達之氏によれば、「利用者は昭和のような長屋的、トキワ荘的生活をしている」と時空の交錯をほのめかす。同ビルの歴史や魅力、問題点などについて聞いてきた。

〈以下略〉

(全文はリンク先へ:ORICON NEWS/2021年5月17日




 建築に詳しくない方の間でも知られている、カプセルが積み重なったような異様な外観が目を引く「中銀(なかぎん)カプセルタワービル」ですが、解体の危機に瀕しているそうです。このビル、住所は「銀座」となっていても最寄りは新橋、もしくは汐留になります。ですので、記事にあるように観光資源にするには場所が悪いですね。銀座といえば誰もが想像する4丁目交差点からのアクセスがよければよかったのですが、「和光も見たし、銀座観光のついでに中銀のビルでも見に行くか」とは、なかなかなりにくい距離です。再開発された汐留エリアがすぐ近くですが、そもそも汐留自体にそんなに観光地としての魅力があるわけではないので、その点からも望み薄です。居住者にビジネスニーズがあるのもこの一帯がビジネス街だからです。

 もし、ビルを大規模修繕して存続させるとするならば、一番可能性があるのがホテル事業(カプセルホテル)だと思います。まあ、その程度のアイデアはすでに上がっているとは思いますが、APAさんあたりが買い取って、文化的価値を尊重し、コスト的には全く合わないと理解した上でも、ビルを生き返らせていただければ、こんなに素晴らしいことはないとは思うのですが。

 東京駅のレンガ駅舎も存続の危機を乗り越えて、観光名所になったという経緯があります。この中銀カプセルタワービルがそれと同列に語れないのは重々承知ですが、安易なスクラップ&ビルドが繰り返されているこの国で(もちろん自然災害が多く、湿度が高いなど建築には厳しい風土ではあることは承知しています)、このような「個性的な建築」がひとつでも多く未来に継承されて欲しいと思っています。

 ところで、

 集まって一緒に映画鑑賞をすることもあった。作品はキューブリックはもちろん、『ブレードランナー』など退廃的近未来もの、同ビルの秘蔵映像など。

なんてすてきなこともあったそう。確かに『2001年宇宙の旅』より『ブレードランナー』が似合いそうではあります。もっと言えば『惑星ソラリス』が一番ふさわしいと思います。首都高もすぐそばですしね。
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Trumbull_Nolan
ダグラス・トランブルとクリストファー・ノーラン。

〈前略〉

ークリストファー・ノーラン監督の『2001年…』の70mmプリントについてはどう思われますか?

 彼のカラーグレーディングには同意できない部分もありましたが、彼がやっていることは素晴らしいと思いました。しかし、ワーナー・ブラザースとは『2001年…』に関して以前から親密な関係にあり、彼らのためにそのドキュメンタリーを制作していたので、ちょっとした驚きを感じました。当時、「私はすべてのオリジナルネガがどこにあるか知っています。私はキューブリックの撮影現場で一緒に働いていた人間だから、君たちがやりたい修復にはぜひ協力したい」と言ったんです。しかし、彼らはクリストファー・ノーランに連絡し、私には連絡しませんでした。そうなんです、すべては会社のため。お金の問題です。

 映画の修復を行う場合、ジョージ・ルーカスやロバート・ワイズなど、そもそも映画を作った原理原則を持ち込むことが重要なんです。彼らは『スタートレック』より良くしてくれました。『ブレードランナー』でも、映画をより良いものにするための作業が行われ、私もそれに協力しました。というのも、私はすべての特殊効果の65mmネガを保管しており、それをスタジオに提供したからです。一般的に、このような修復は、映画を作った人たち、特に撮影監督の原則によって行われるものではありません。『ゴッドファーザー』を復元するなら、コッポラを呼びます。

ー今後の修復で考慮してもらいたいフィルムの最も重要な点は何ですか?

 『2001年…』について、映画制作の過程で重要視していたのは「星」の存在でした。フィルムの乳剤の一粒ほどの大きさしかない星が、35mmプリント用に複製したときに消えてしまわないかどうか、非常に気を使いました。そのためにいろいろなテストをして、消えないようにしました。そうしないと、背景が黒くなって星がなくなってしまい、意味をなさなくなってしまうからです。幸いなことに、ブルーレイを含めてその点はよく保存されています。「星」はちゃんとあります。

〈以下略〉

(全文はリンク先へ:IndieWire/2021年5月1日




 私は幸運にも『2001年宇宙の旅』70mmアンレストア版を観る機会に恵まれましたが(詳細はこちら)、その監修をクリストファー・ノーランに依頼した話を知って、「ダグラス・トランブルはキューブリックとクレジットの件で色々モメてたのでシコリがあるんだろうな」と勝手に想像していました。また、現在の若い世代に『2001年…』を知ってもらうためにも、ノーランのネームバリューに頼るというのもいい判断だと思っていました。ですが、実際はワーナー側がトランブルを「スルー」したようです。

 ノーランは『2001年…』に多大な影響を受け、フィルム撮影や保存にこだわりがあることが知られていたので、適任だったとは思いますが、単純に考えれば当時直接制作に携わっていたトランブルの方が適任だったのは間違いありません。ですが、この『70mmアンレストア版』がお披露目されたのは、2018年のカンヌ映画祭での特別上映でした。そんな華やかな場所での広告宣伝効果を考えれば、ノーランの方が適任だと判断されたのだと思います。

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左からキア・デュリア、カタリーナ・キューブリック、 ロン・サンダース、ヤン・ハーラン、クリストファー・ノーラン。2018年カンヌ映画祭にて。

 まあ、お二人で仲良く・・・というのが理想かもしれませんが、エゴが渦巻くショービジネスの世界では、なかなかそうはならないというのは、みなさま周知の事実ですね。
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