キューブリック作品の俳優たち

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左がソニエッタ、右がマーフィ。

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カットされたシーンのポラロイド。

 数いる監督の中で、スタンリー・キューブリックと働くのは最も面白い経験でした。彼には才能がありました。先見の明があります。彼はカメラでした。使っていた複雑なカメラが故障したとき、彼はそれを分解し修理しました。彼はカメラの隅々まで熟知していました。

 写真はカットされた場面からのポラロイドです。それは、ニシキヘビと一緒の場面でした。私たちは小さなアパートで撮影していました。照明が熱かったので、マルコムと私はベッドルーム(映画撮影がリビングルームで続く間に利用できる唯一の部屋)に避難しました。ヘビは餌を与えられて到着しました。私たちが横になっていたベッドの下(ドアに一番近いベッド)に置かれていました。いたるところから温められた暖房の中、ベッドの下にいる時間が長ければ長いほど、すぐに目を覚ましてしまいます。

 マルコムはヘビが好きではなかったので、ヘビを持ち上げることになってかなり悩んでいました。私はというと、ゲップをしたくてクスクス笑っていました。リラックスしていたんでしょう。私は物事の滑稽な側面を見ることができました。同時に危険も。それは間違いなく大きな、慈愛に満ちていました。私たちはシーンを素早く演じました。ですがそれは結局、編集室の床に捨てられました。マルコムのベッドルームで跳ね回っている女の子と一緒の速い場面は、キューブリックのお気に入りです。私たちは、箱の中の蝶のようです。

 キューブリックは私の口が気に入っていました。横顔でロリポップをしゃぶることになりました。すべての視線を集めて私はとても自意識過剰になり、あごを引き、ロリポップを気かけていないように見えるようにしました。クールで気にしない。上手くいきました。もしそうでなかったら、その場で言われていたと思います。余談ですが、キューブリックのフィルムテストは、私が今まで行った中で最もシュールなものでした。アポイントはキャスティング・ディレクターに会うことだけでした。キャスティング・ディレクターの部屋から出てきた人は誰も出てこず、悲惨な顔をして座っていました。

 キャスティング・ディレクターは非常に申し訳なさそうにしていましたが、これがスタンリーが試したかった方法でした。下着になって『バス停留所』でマリリン・モンローが演じたセリフを読むように言われました。キューブリックにはサディスティックな傾向があり、神経質にならざるを得ないことも理解していましたが、何の前触れもなく突然下着姿で見知らぬ人の前に立ち、『バス停留所』の弱々しく傷ついた人物としてカメラに向かって話すのはかなり奇妙なことで、薄い窓ガラス越しにロンドンの街の音が聞こえてきて、レンズの後ろには照れくさそうなキャスティングディレクターがいました。

 これは、壁の向こう側にある、別の現実の人生とは異なる女優の人生の、ちょっとした狂気のようなものです。私は本当にその「もうひとつの人生」に興味がありました。それは1と1で2になる。3ではない、もっとシンプルで優しい人生だと自分に言い聞かせていました。霧の壁に隠された俳優の人生とは違うと。しかし、まさにこの余分な数字「3」、つまり「小さな狂気」こそが、人形の背後にある炎であり、天井や壁に素晴らしい形を生み出し、私たちに夢をもたらすのです。

(引用元:GILLIAN HILLS.com




 『時計…』でアレックスにナンパされた女の子の内の一人、ソニエッタを演じたジリアン・ヒルズ自身のサイトでキューブリックについて語っていたのでご紹介。

 キューブリックがレコードショップでアレックスにナンパされる女の子の一人、ソニエッタ役をキャスティングするに当たって懸案となったのは、ソニエッタには3Pシーンがあったからなのですが、その適性を判断するために、下着姿でマリリン・モンローのセリフを読ませるというのはなかなか過激な方法で、現在なら「パワハラ」として訴えられかねない行為です。しかし、この『時計…』では性暴力も大きなテーマなので、このシーンを描かないわけにはいきません。それにキューブリックは『ロリータ』で、ハンバート役のジェームズ・メイソンと寝間着姿で同衾するのを断固拒否したシェリー・ウィンタース(結局ガウンを着たままだった)の苦い経験があり、「女優が服を脱ぐ」というシチュエーションのキャスティングには神経質になっていたんだと思います。キューブリックは演技力がさほど必要ないシーンでは(ヌードもOKの)モデルを重用したのもそれが理由でしょう。ちなみに『アイズ…』の乱交シーンに登場する女性たちは全員モデルでした。

 そんな事情を知らないジリアンがこういう感想を持ったのは仕方ないことですが、彼女も「神経質にならざるを得ないことも理解していた」としているので、結局何の問題もなかったのでしょう。そして完成したあのシーン(詳細はこちら)はさまざまな映像作品でオマージュやパロディにされるほどインパクトのあるものになりました。

 ちなみにジリアンは1972年には女優を辞め、イラストレーターとしてニューヨークに渡り、その後は英国と米国に住んでおり、AC / DC、エマーソン、レイク&パーマー、シンディ・ローパー、フォリナー、ビリー・スクワイアー、スコーピオンズ、ズッケロをマネージメントしてきたスチュワート・ヤングと結婚、現在も一緒だそうです。
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『2001年宇宙の旅』でカメラマン(左)を、『スターウォーズ(新たなる希望)』でデル・ゴレン(右)を演じたバーネル・タッカー

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『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』ではワイロン・サーパー大尉(一番右)役で登場

 クラビウス基地の会議室や、モノリス前での記念撮影のカメラマンを演じたバーネル・タッカーは、『スター・ウォーズ(新たなる希望)』で反乱同盟軍の通信士デル・ゴレンを演じているのですが、次作『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』では同じく反乱同盟軍の氷の惑星ホスのエコー基地所属、ワイロン・サーパー大尉を演じています。かと思えば『007は二度死ぬ』で潜水艦のクルー、『オーメン』ではシークレット・サービス、TVシリーズの『謎の円盤UFO』ではパイロット、『電撃スパイ作戦』では通信士や潜水艦のクルー、『U-571』ではデューク提督、『フラッシュ・ゴードン』では旅客機の副操縦士などを担当。

 キューブリック作品では『博士の異常ない愛情』でマンドレイクの副官を、そしてきわめつけは『シャイニング』で警察官を演じてるんですね。でもそのシーンはキューブリックによって公開後すぐカットされちゃいましたが(笑。

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『博士…』出演シーン。セリフは「将軍から」のみ。

 典型的な「なぜかそんな役ばっかり」の役者さんですが、ここまで警察・航空・軍関係ばかりが続いているのはめずらしいのでは? そんなバーネル・タッカー、『スター・ウォーズ』ファンの間では結構有名な存在らしく、こんな動画まであります。



 ただ、バイオグラフィはカナダ生まれだということぐらいでIMDbにもそれ以上の情報がなく詳細は不明。俳優業も2012年のTVシリーズ『ドクター・フー』以降出演がないようです。キューブリック作品に3回も起用されていますし、どこかでインタビューでも受けてもらって、当時の撮影秘話など聞いてみたいものですね。
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キア・デュリアが『2001年宇宙の旅』に出演する前に主演した映画『バニー・レイクは行方不明』。この後デュリアは『母の旅路』に出演後、『2001年…』の撮影(1966年前半)に臨むことになる。



 『バニー・レイクは行方不明』を撮っていたある日、私の代理人から「今、座っている?」と電話がありました。私は「いいえ」と答えた。彼は言った。「まあ、座ったほうがいい。スタンリー・キューブリックの次の映画の主役へのオファーがあった」。私はオファーを知りませんでした。私はオファーについて一言も聞いていなかった。私はすでにキューブリックのファンだった。私は演劇学校に通っていたときに観た『突撃』が大好きでした。

(引用元:cleveland.com/2011年7月9日




 IMDbの『バニー・レイク…』のトリビアの項目には「この映画のキア・デュリアのパフォーマンスは、キューブリックが『2001年…』のボーマン役を選んだことにつながりました」となっていますが、どうやらそれは間違いで、それ以前の映画(『リサの瞳の中に』?)を観てオファーしたことになります。このインタビューでデュリアは、監督であるオットー・プレミンジャーが恐ろしかったらく、「撮影はハッピーな体験ではなかった」「怒鳴ってばかりで、みんなを侮辱するのを楽しんでいるように見えた」とも語っています。

 この『バニー・レイク…』、そのせいもあってか全体的にピリピリとした神経質な雰囲気が張り詰めた、良質のサスペンス映画に仕上がっています。機会があればぜひご観賞あれ。

情報提供:sinika様
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 『キューブリック全書』には以下の記述があります。

 小柄なイギリスのコメディアン、ロニー・コーベット(コルベット)は、猿人の一人として出演する予定だったが、メーキャップテストをしたところ「スタジオの秘書たちが悲鳴を上げて廊下を逃げまわるほどグロテスクな姿」になったので、役を降りた。

 もっと詳細な証言は本人の口からも語られています。

「キューブリックはジブラルタル・バーバリーマカク役(映画『スナッチ作戦(Operation Snatch)』に登場したサル)の私を見て、会いにきた。しかし、それには重大な技術的問題があり、ボツになった」(引用元:The Gibraltar Olive Press/2016年4月16日

 とあります。「技術的問題」、つまりグロテスクだったということでしょう(笑。では、メーキャップされたのは当初案の「人間に近い猿人」か、それとも採用案の「猿に近い猿人」か、ですが

「恐ろしい経験でした」「彼らは私の鼻孔の上に2本のストローを入れて呼吸ができるようにし、私の顔全体をプラスチックで覆った」(引用元:Disital Spy/2016年3月31日

 とありますので、猿に近い猿人のメーキャップだったことがわかります。

 このロニー・コルベット。すでに故人ですが、イギリスでは有名なコメディアンだったそうで、逝去の際には、当時のキャメロン首相からも追悼メッセージがおくられるほどだったそうです。

 ちなみに当初案の「人に近い猿人」については以前こちらで記事にしていますので、よろしければどうぞ。

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『シャイニング』では「盛会じゃね!」のセリフとともに登場する。役名は「負傷したゲスト(Injured guest)」とそのまんま(笑

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『バリー…』ではヴェルベットの仕立て屋役で(左から二番目)

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『時計…』ではBBC(TV局)のプロデューサー役(一番左)で登場

 キューブリック作品で複数作品出演者といえば、『現金…』のティニー、『突撃』のアーノー二等兵、『シャイニング』のバーテンダーのロイド役で有名なジョー・ターケルや、『時計…』のアレックスのパパ、『バリー…』の執事のグレアム、『シャイニング』のグレイディ役を演じたフィリップ・ストーンの名前が挙がります。それぞれが印象的な役ですし、キューブリック関連書籍でもよく採り上げられているのでご存知の方も多いはず。でもノーマン・ゲイと聞いてほとんどの人は「はて、そんな役者いたっけ・・・?」となると思います。彼の場合、全作品が「ほんのチョイ役」なのであまり話題になりませんが、上記の三役はすべてノーマン・ゲイです。中でも一瞬の出演ながら「盛会じゃね!」の名セリフと血の水割りでインパクトを残す『シャイニング』の出演が一番有名でしょう。

 キューブリックがなぜこのノーマン・ゲイを重用したのかは不明ですが、キューブリックはある時期からオーディションのプロセスを嫌うようになったそうなので、重要なキャスティング以外のチョイ役は、キューブリック独自の映画製作のプロセスに慣れている過去の出演者から選ぶようになったのかも知れません。その方が現場のコントロールがしやすいですからね。家族もよく作品内に登場(この詳細はこちら)しますが、やはりそれもコントロールしやすいからでしょう。そんなキューブリックを『フルメタル…』の伝説的日本語字幕を担当した映画監督の原田眞人氏は「コントロールフリーク」と評しています。

 まあ、こんなマニアックなネタ、飲み会なんかで披露しても呆れられるだけですが、因みにキューブリック作品の最多出演者は『2001年…』『バリー…』『シャイニング』『フルメタル…』の4作品に出演したキューブリックの三女、ヴィヴィアン・キューブリックになります。次点はこのノーマン・ゲイとジョー・ターケル、フィリップ・ストーン、それに『時計…』『バリー…』『アイズ…』に出演したキューブリックの義長女、カタリーナ・キューブリックです・・・ってやっぱりマニアックなネタですね(笑。
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