マーベル映画『ブレイド』(1998)に出演した俳優スティーヴン・ドーフが、マーベル・スタジオ最新作『ブラック・ウィドウ』をインタビュー内でバッシングした。

 『ブレイド』で主人公と敵対するヴァンパイア、ディーコン・フロストを演じたスティーヴン。マーベル映画に出演した過去がある彼だが、The Independent のインタビューで「俺は『ブラック・ウィドウ』には出たくないからね」と切り出すと、「どうせ彼女は500〜700万ドルの出演料をもらっている。俺はそのような類の映画には出たくないし、俺は次世代の(スタンリー・)キューブリックとなる若手監督を探して、その人のために演じるよ」などとバッシングと思える発言をしている。

〈以下略〉

(全文はリンク先へ:シネマトゥデイ/2021年7月6日




 個人的にはマーベル映画には興味はないので作品について云々しませんが、以前スコセッシもマーベルを批判していましたね。マーベルに出演歴があるスティーヴン・ドーフがどういう意図でこんな発言をしたのかわかりませんが、ハリウッドでは「ヤンチャキャラ」で知られているそうです。ですが、マーベルを「ゲーム番組」と批判をするのは構わないのですが、それにキューブリックの名前を絡めるのはちょっと迷惑です。ただでさえ「気取った映画スノッブが讃えるアート系監督の代表」みたいな的外れ批判に辟易としているのに。

 キューブリックが「娯楽としての映画」を全否定していなかったのは、ファンの間ではよく知られている事実です。『スター・ウォーズ』にライバル心を燃やしたり、スピルバーグの『E.T.』を評価し、スピルバーグに「ファンタジーじゃ君にかなわない」と語ったことさえあります。「【関連記事】スタンリー・キューブリックが好んだ映画のマスター・リスト(2016年7月25日改訂版)」には、その時代のヒット作、娯楽作も多数挙げられており、必ずしも「アート系作品しか評価しない気難しい映画監督」ではありませんでした。このスティーヴン・ドーフの発言が「最近の映画産業における内容の薄っぺらさに辟易としている」ことから発せられているのだとしたら、共感する方も多いでしょう。しかし、「次世代のスタンリー・キューブリックとなる若手監督」が自作にキャスティングするほど、ドーフに俳優としての華々しいキャリアがあるのかというと甚だ疑問です。まあ「言いたいことはわかるけど、あなたが言ってもね・・・」というのが正直な感想です。

 ところで、キューブリックがもし存命なら、昨今のマーベル映画をどう評したか気になりますが、キューブリックは『フルメタル・ジャケット』の頃のインタビューで「今のひどい映画はただひどいだけ。重要な映画を作ろうという意欲はあるのかもしれないが、(ライターがシナリオの)書き方を知らないのだ」と応えています(詳細はこちら)。長女のカタリーナも「彼はテーマがある映画が好きだった」と語っていますし、おそらくマーベル映画は「映画作品としては」評価しなかったと思います。ただ、「なぜそんなに大衆に受け入れられているのか?」という点において興味を持ち、研究したかもしれませんし、その点においては評価していたかもしれません。キューブリックは常に「大衆」を意識した映画作りを行っていました。それは配給時期や配給方法、広告まで口うるさく介入した事実からも伺えます。

 そういえばスティーヴン・ドーフって、『バック・ビート』で主人公のスチュアート・サトクリフを演じた俳優だったんですね。この映画、スチュが主人公と言いながらジョン・レノンに完全に食われてしまっていて、印象に残るシーンと言えば激しい頭痛に苦悶するところくらい。もちろんジョンは強烈なキャラクターですし、脚本の問題もあったのかもしれませんが、スチュもそれなりに劇的な人生を送った人なのだし、演じたドーフにカリスマ性があればもっといい作品になったかも知れません。そのドーフがこの口ぶり。何を言わんや、ですね。