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会場エントランスに鎮座する「モノリス」。

 『2001年宇宙の旅』がいかに世界中のアーティストにインスパイアを与え続けているか、などというのは今更語るようなことでもないかもしれません。2017年には「白い部屋」のインスタレーションが展示されたこともありました。今回の企画展も、はっきりと言ってしまえば『2001年宇宙の旅』という作品がなければ存在し得なかった作品ばかりで、言うなれば「キューブリック先生とクラーク先生から出された宿題に生徒(各アーティスト)が提出した回答用紙」だと思って鑑賞すれば、さほど難解ではないのではないか、と感じました。

 展示は3つの部屋に分かれており、第1展示室は「時空の歪み」、第2展示室は「月面とポストトゥルース」、第3展示室は「隠喩としてのスターチャイルド」と題されています。これだけでも『2001年…』を鑑賞済みなら「ああ、あのことね」とピンと来るものばかりです。キューブリックは「人間が知覚できない人智を超えた存在や世界」を「人間が知覚できる映像」として描き出そうとして挑戦し、絶望的な戦いを強いられましたが、最終的には「想像できないものは想像できない」と諦めてしまいました。それから約半世紀以上、世界中のあらゆるアーティストがそれに挑戦し、そしてあいもかわらず玉砕を続けています。厳密に言えば今回の展示もその「玉砕の記録」です。しかし「玉砕と知りながらも立ち向かう人間の姿」はとても素晴らしく、感動を呼ぶものです。『2001年…』をはじめとするキューブリック作品にはその「どうしようもなく愚かで、その愚かさゆえに愛おしい人間の姿」が描かれています。キューブリック作品に「(とってもひねくれてはいるが)人間愛・人類愛」を感じ取れる感性を持っている方なら、この企画展も楽しめるのではないでしょうか。ぜひ『2001年宇宙の旅』における「自分の回答」と「各アーティストの作品」とを比べ、感じてみてください。

 会場は表参道の「GYRE GALLERY」です。MoMAのストアが入っているビルの3階と言えばわかりやすいでしょう。ラルフローレンの向かいのビルです。入場無料ですので、お気軽に立ち寄ってはいかがでしょうか。



 『2001年…』が、あなたの感情を刺激し、潜在意識に訴えかけ、神話的なものへの興味をかき立てたのなら、この映画は成功したと言える。
−スタンリー・キューブリック

 昨日、私はこの会場で、あるファンレターを見つけました。「親愛なるスタンリー、あなたはこの映画において、私たちにどのように感じ、どのように考えればよいのかということについての説明をしませんでした。あなたは責任を持ってこの映画の製作を担当しました。私の担当は、責任を持ってこの映画の意味を解釈することです」──これは正に、50年以上の時を越えた今でも生まれる、フィルムメーカーと観客の完璧な組み合わせ以外の何物でもない、そう思います。
−カタリーナ・キューブリック

(引用:『【スペシャルレポート】ニューヨーク映像博物館(Museum of the Moving Image)で開催された『エンビジョニング2001』(Envisioning 2001: Stanley Kubrick's Space Odyssey)特別イベントのレポート[その1]』




2021年宇宙の旅 モノリス
_ウイルスとしての記憶、そしてニュー・ダーク・エイジの彼方へ


主催:GYRE / スクールデレック芸術社会学研究所
会期:2021年2月19日(金)- 4月25日(日)
会場:GYRE GALLERY 東京都渋谷区神宮前 5-10-1 GYRE3F Tel.03-3498-6990
出展作家:赤瀬川原平(日本、1934〜2014)、アニッシュ・カプーア(イギリス、1954年〜)、ピエール・ユイグ(フランス、1962〜)、オノデラユキ(日本、1962〜) 、森万里子(日本、1967〜)、 ダレン・アーモンド(イギリス、1971〜) ネリ・オックスマン(アメリカ、1976〜)、ジェームズ・ブライドル(アメリカ、1980〜)、プロトエイリアン・プロジェクト(Proto-A)

(詳細は公式サイトへ)