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 キューブリックは1970年のインタビューで、明快に『2001年…』のプロットを説明していますので、それをご紹介します。なお、完全にネタバレしていますので、未見の方は閲覧しないでください。

 「進化を促す第一の人工物を地球上に置き、400万年前のヒトザルの進化に干渉した地球外知的生命体は、第二の人工物を月に置き、人類の進化が宇宙へと進んだ場合に備え、信号を木星の衛星軌道上の第三の人工物に送るようにセットした。それに導かれボーマンが木星まで到達すると、彼を内なる宇宙と外なる宇宙の旅に投げ込み、銀河系の別の場所まで運び、人間動物園ような環境に入れた。そこで老い、死に、そして新しい生命体へ生まれ変わった彼は、人類の次なる進化へのステップに備えるために地球へと帰還した」

(引用元:『メイキング・オブ・2001年宇宙の旅』


 あの映画は、400万年前のヒトザルの行動を観察し、その進化に影響を与えようと決めた、地球外の知的生命体の探検家によって、地球に残された人工物から始まった。第二の人工物は月の表面に埋められていて、人類の宇宙への最初の稚い歩みの信号を発するようにプログラムされていた。ー宇宙の盗難警報器よいったところだ。そして最後に第三の人工物が木星の周囲の軌道上に置かれていて、人類が自分の太陽系の外縁に達する時を待っていた。

 生き残った宇宙飛行士ボーマンが、遂に木星に到達すると、この人工物は彼を力場、あるいはスター・ゲイトへ運び込む。それによって彼は、宇宙の内なる宇宙と外なる宇宙に投げ込まれ、最後に銀河系の別の場所に運ばれる。そこで彼は、彼自身の夢と想像から作られた(※クラークの小説版は「月のモノリスが地球上のTV番組をモニターしていて、そこに登場したホテルの部屋を模した」とはっきり解説している)、地球の病院のような環境の人間動物園に置かれている。時間のない状態で、彼の人生は、中年から老年、そして死に至る。彼は生まれ変わる。高められた存在、スター・チャイルド、天使、スーパーマン。なんとでも呼んでくれ。そして彼は地球に帰り、人類の進化上の運命である次なる飛躍に備える。

(引用元:『イメージフォーラム増刊 キューブリック』


 実は、ここで説明されているプロットは、何の予備知識がなくても、映画を注意深く観れば全て理解できるようになっています。(かなり不親切な作りであるにしても)もし一回観ても分らない場合は何度でも観ればいいのです。ですので、この「最低限のプロット」を理解した上で本作を語ってほしい。本作の解釈や個人の好悪が分かれるのは実はここからなのです。本作を「長い」「退屈」と言って投げ出してしまうのは簡単です。しかし、退屈している暇など全くありません。本作は上記の表層的なプロットの他に、映像や音楽に暗喩的な意味が込められているからです。しかも、それらは鑑賞者によって様々な解釈が可能になっているのです。

 キューブリックは21世紀にふさわしい神話を創りました。それは推測でき得る近未来を、でき得る限りのテクノロジーを利用して創った「科学的に定義された神話」でした。それは本作の持つ普遍性が十二分に証明しています。

「『2001年…』の核心には神の概念がある。だが、それは伝統的な、人の姿に似せた神ではない」

「地球外知的生命体は、物質の完全支配を成し遂げているかも知れない。肉体の殻を破って宇宙に存在する意識のようなものかも知れない。こういった可能性を議論する時、宗教的な関与は不可避だ。何故なら、これら属性は、我々が神に与えた属性だからだ」

「ここで扱っているのは科学的に定義された神だ。彼らが人類の問題に干渉していたとするならば、我々はそれを神、もしくは魔法としか理解できないだろう」

「我々が伝えようとしたのは、人間と同等、もしくはそれ以上の機械的実体が存在する世界のリアリティだ」

「こんな話を聞いた事あるのではないだろうか?科学者たちは究極のコンピュータに一番最初にするにふさわしい質問を何ヶ月も考えたあげく、ようやく思いついた。『神は存在するか?』ライトを点滅させた後、コンピュータは一枚の紙を吐き出した『ここにありき』と」

「もし『2001年…』があなたの感情を刺激し、潜在意識に訴え、神話への興味を掻き立てたとしたら、この映画は成功したと言える」

(引用元:『イメージフォーラム増刊 キューブリック』


※初出:2006年7月18日、加筆:2015年5月13日