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※キューブリックのノートに残されていた『博士の異常な愛情』のタイトル案(クリックで拡大)


(1)Doctor Doomsday
(2)Don't Knock the Bomb
(3)Dr. Doomsday and his Nuclear Wiseman
(4)Dr. Doomsday Meets Ingrid Strangelove
(5)Dr. Doomsday or: How to Start World War III Without Even Trying
(6)Dr. Strangelove's Bomb
(7)Dr. Strangelove's Secret Uses of Uranus
(8)My Bomb, Your Bomb
(9)Save The Bomb
(10)Strangelove: Nuclear Wiseman
(11)The Bomb and Dr. Strangelove or: How to be Afraid 24hrs a Day
(12)The Bomb of Bombs
(13)The Doomsday Machine
(14)The Passion of Dr. Strangelove
(15)Wonderful Bomb

(1)皆殺し博士
(2)爆弾をノックしないで
(3)皆殺し博士と彼の核賢者
(4)皆殺し博士がイングリッド・ストレンジラブと出会う
(5)皆殺し博士:または必要もないのに第三次世界大戦を始める方法
(6)ストレンジラブ博士の爆弾
(7)ストレンジラブ博士の天王星の秘密の使い方
(8)私の爆弾、あなたの爆弾
(9)爆弾の救済
(10)異常な愛情:核賢者
(11)爆弾とストレンジラブ博士:またはどのように一日の24時間を恐れたか
(12)爆弾の爆弾
(13)皆殺し兵器
(14)ストレンジラブ博士の情熱
(15)素晴らしい爆弾

 うーん、直訳だとちょっと意図が分かりにくいものばかりですね。(2)はロック映画として有名な『Don't Knock the Rock』に引っ掛けているのかも。配給が同じコロンビアですし。(3)も『Wisman』だとワイズマンという人名、『Wise Man』だと賢者という意味ですので、ダブルミーニングかも知れません。「核賢者」なんていかにもキューブリックが好きそうな皮肉を感じさせますし。(7)の天王星ですが、ラストシーンを「絶滅した地球を発見した宇宙人が作ったドキュメンタリー」にしようとしていた名残でしょうか。その宇宙人は天王星人とか?またギリシャ神話でウラヌスは全宇宙の支配者ですので、皆殺し爆弾の名称として予定していたものなのかも知れません。

 (8)は『フルメタル…』の行進ソング「私の海兵隊、あなたの海兵隊』を思い出してしまいました。(9)はNGO組織「Save the Children」のもじり?(13)は『博士…』にそのまま登場しています。(14)の『The Passion』は(イエスキリストの)「受難」という意味もありますので、情熱と受難のダブルミーニングでしょうね。

 採用された『Dr. Strangelove or: How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb(博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか)』に比べればどれもこれもイマイチですが、最初から人を食ったような、ばかばかしくも皮肉っぽいタイトルにしようとしていたのはここから読み取れます。

 それにしてもキューブリックは字が汚い(笑。他の直筆の資料を見てもそうなので、タイプライターを多用していたのも本人にとって悪筆はコンプレックスだったからでしょう。PCにすぐ飛びついたのも「メモ等も全てPC内に保存できるので、手書きしなくて済む」という思惑があったのかも知れないですね。

 因に・・・キューブリックは絵もヒドイです(笑。