
画像引用:IMDb - Eyes Wide Shut
キューブリックの死に不審な点があることは、数年前から噂になっている。実は死後出版された『アイズ…』の脚本を担当した小説家、フレデリック・ラファエルの著書『アイズ・ワイド・オープン』に以下のような記述がある。
そのあとすぐ、私はスタンリーに、故ケネディ大統領の支持者のあいだで始まったある集まりに関する、FBIの極秘報告書の抜粋とされている書類をファックスで送った。中心となった人々のほとんどは裕福で、「田舎者」に占領された民主党の政策には徹底的に敵対する姿勢を取っていた。この団体は社会的モラルに大胆すぎるほど挑戦的であったJFKに賞賛の声を送り、表向きは彼を支援するものであるかのように見えた。彼らは外見上はあくまでも大統領を指示する一派に属しつつ、同時に、その仲間うちだけできわめて享楽的な生活習慣を実践していたのである。彼らのスローガンが「十分では、決して十分ではない」というものだった。彼らは自分たちのことを「ザ・フリー(自由人)」と呼んだ。
この自由の表現はセックスを中心に行われた。メンバーになれるのは友だちの友だちまでとし、入会の条件には自分たちで快楽を追求することに積極的であり、仲間が同じようにすることを決して否定しないということが含まれていた。〈以下略〉
キューブリックがこの書類を読み、あわててラファエルに「どこで手に入れた」と問いただし、ラファエルは事も無げに「自分の頭の中だ」と答えている。キューブリックに「この乱交パーティーに来る客がどういう人間なのか、アイデアを出してくれないか、そうすればこういう人間たちがすることを現実的に信じられるようになると思うんだ」と言われたラファエルが、これをでっち上げたのだ。
この一連のやりとりを読むとキューブリックは作品内のワンシーンや一つの台詞にも裏付け、つまり裏設定を求めていた事がわかる。それは『2001年…』で膨大な裏設定、資料が存在する事でも明らかだ。キューブリックはこのプロジェクトの最初から「乱交パーティーには苦労するだろう」と指摘していて、参考になるものなら何でもいいから送ってくれ、とラファエルに要請している。例の怪しげな儀式も、ジョージ・マッソンの『イタリア・ルネッサンス期の高級娼婦たち』が資料としてキューブリックに送られている。
今巷で言われている、ユダヤやフリーメーソンの儀式の秘密を暴いたため消された云々が、いかに馬鹿馬鹿しいかがこれで理解できるかと思う。もっと言えばキューブリックは自宅で死亡している。しかもキューブリックは『時計…』で脅迫が相次いだ事もあって、かなり身辺には気を使っていたはずで(だから引きこもりのようなライフスタイルになった)第三者が侵入して殺害するのは不可能に近い。では近親者がキューブリックを?それを疑うのは長年連れ添ったクリスティアーヌに失礼というものだ。
陰謀論者は陰謀論でメシを食っている。それは911テロやアポロの月面着陸、日航機墜落事故でも同じだ。実は声高に陰謀論をまき散らすも者ほど、その陰謀論自体を信じていない。金になるからやっているだけだ。そんな連中の懐を暖めてやる義理などこちらには一切ない。そんなものに振り回されている者は自分の馬鹿さ加減を自己申告しているようなものだ。相手にする必要など全くない。