2024年07月

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 スタンリー・キューブリック公式が制作した『シャイニング』のドキュメンタリー『Shine On - The Forgotten Shining Location』が、キューブリックの誕生日7月26日に公開されました。内容はエルスツリー・スタジオに現存するセットの痕跡を辿る内容で、登場人物はキューブリックの長女カタリーナ、義弟でプロデューサーのヤン・ハーラン、美術監督のレスリー・トムキンスです。

 あれから40年以上の月日が流れた現在、広大だったエルスツリー・スタジオも敷地を切り売りしなければならないほど経営が思わしくないらしく、『シャイニング』のセットとして使った部屋はたまたま残っていただけに過ぎないようです。しかもキッチン、食糧倉庫、ボイラー室のみという寂しいもの。すぐそばにあった『2001年宇宙の旅』を制作したボアハムウッドMGMスタジオも今は跡形もなく、時代の趨勢を感じずにはいられません。

 ちなみにジャック・ニコルソンがタイプラターを打っていたテーブルはキューブリック邸に、237号室のバスルームのバスタブはヤン・ハーラン家にあるそうです。映像にはありませんが、ほかにもカーペットや衣装の一部はアシスタント兼運転手だったエミリオ・ダレッサンドロが貰い受けていたり、タイプライターはキューブリックの三女ヴィヴィアンが使っていたりと、『シャイニング』のために購入されたプロップは当時のスタッフが分けあって持って帰っちゃったみたいですね。

 それもこれもキューブリックは手に入るプロップは全て当時購入できた既製品を使うよう指示したからなのですが、それがオーバールック・ホテルが「本物」に見えた要因(セットを知って驚いたものです)でもあるし、キューブリックらしいこだわりのなせる技だな、とつくずく思います。そのキューブリック曰く「欲しいものは金を払っても手に入るかどうかわからないが、金を払わないと絶対に手に入らない」・・・ごもっとも。
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(初回限定生産)2001年宇宙の旅 The Film Vault collection(4K ULTRA HD&ブルーレイセット)スチールブック仕様(3枚組/豪華封入特典付)[4K ULTRA HD + Blu-ray]

内容紹介
スタンリック(注:原文ママ)・キューブリック没後25周年―。
代表作『2001年宇宙の旅』が新デザイン・キーアートで、待望の4K ULTRA HDスチールブック化!

・イギリス発のアートスタジオ「VICE PRESS」のマット・ファーガソン&フローリーによる新デザイン・キーアートにより、『2001年宇宙の旅 』がよみがえる!

・1999年3月7日、70歳でこの世を去ったキューブリックの没後25周年を追悼し、代表作『2001年宇宙の旅』が4K ULTRA HDスチールブックとして初リリース。

・日本語吹替版を収録した4K ULTRA HD&HDデジタル・リマスター ブルーレイに、特典ディスクを加えた豪華3枚組。

※ディスクは「2001年宇宙の旅 日本語吹替音声追加収録版〈4K ULTRA HD&HDデジタル・リマスター ブルーレイセット〉(3枚組)と同じです。

・新デザイン・キーアートによるスチールブックに加え、特典として、アートカード(7枚組/両面仕様)、ポスター(2枚/片面&両面)をオリジナル封筒に収め封入。

【ストーリー】
人間 vs. コンピュータの戦いを、陶酔の映像と音楽で描き出し、アカデミー賞(R)を受賞した『2001年宇宙の旅』。キューブリック(アーサー・C・クラークと脚本を共同執筆)は、有史前の類人猿から植民地化が進む宇宙へ、数千年もの時間を超越(映画史上最高のジャンプ・カット・シーンのひとつ)する離れ業をやってのけた。人類がまだ見ぬ宇宙の領域に足を踏み入れた宇宙飛行士ボーマン(キア・デュリア)は、不滅の存在へと昇華していくのだろうか。「HAL、進入口を開けろ! 」という悲痛な願いと共に、無限の可能性に満ちた未知への旅を始めよう。

【キャスト】
デイビッド・ボウマン:キア・デュリア、フランク・プール:ゲイリー・ロックウッド

【スタッフ】
監督:スタンリー・キューブリック、製作:スタンリー・キューブリック

【特典】
“2001年”という神話
キューブリックが残した遺物
キューブリックの見た未来
2001年という“未来”
“2001年宇宙の旅”の哲学コンセプチュアルアート
キューブリックの初期作品
キューブリックのインタビュー

■製作:1968 アメリカ

(C) 2008 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

※映像特典、商品仕様、ジャケット写真などは予告無く変更となる場合がございます。

【Ultra HD ブルーレイ】
●ご視聴にはUltra HD ブルーレイ再生対応機器が必要となります。
●[4K ULTRA HDを高品質でお楽しみいただくために]
4K ULTRA HDは4K解像度・HDR(ハイダイナミックレンジ)・広色域での再生に対応しています。
ご視聴には、Ultra HD ブルーレイ再生対応機器に加え、4K/HDR対応テレビでのご視聴をおすすめいたします。

(引用:Amazon「(初回限定生産)2001年宇宙の旅 The Film Vault collection(4K ULTRA HD&ブルーレイセット)スチールブック仕様(3枚組/豪華封入特典付)[4K ULTRA HD + Blu-ray]




 ディスクは以前のセット(詳細はこちら)と同じでポスターやアートカード、おそらく当時のロビーカード(映画館のロビーにペタペタ貼られた装飾用カード)の復刻版が封入されています。クリスマス向け商材だと思いますが、同シリーズで『ブレードランナー』『ショーシャンクの空に』も同時に発売されるそうです(詳細はこちら)。紙モノ追加だけでこの価格は・・・という話もありますが、スチールブック仕様は一定の需要がありますので、欲しい人もいるのではないでしょうか。限定生産品なので、お早めにどうぞ。
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He wanted to take us places we could never have imagined, and so he imagined them for us.He is Stanley Kubrick.

He died before he could witness the century he had already made famous with 2001: A Space Odyssey.Stanley wanted us to see his movies absolutely as he envisioned them. He never gave an inch on that.He dared us to have the courage of his convictions, and when we take that dare we’re transported directly to his world and we’re inside his vision.

And, in the whole history of movies there’s been nothing like that vision… ever. It was a vision of hope and wonder, of grace and of mystery.It was a gift to us, and now it’s a legacy.

We will be challenged and nourished by that as long as we keep the courage to take his dare, and I hope that will be long after we’ve said our thanks and our goodbyes.

 彼は想像もできなかった場所に私たちを連れて行きたかったので、私たちのためにそれらを創り上げました。彼の名はスタンリー・キューブリックです。

 彼は『2001年宇宙の旅』ですでに有名になった世紀を目撃する前に亡くなりました。スタンリーは私たちに自身の映画を自分が思い描いたとおりに観てもらいたいと考えていました。彼はそれについては一歩も譲りませんでした。彼は私たちに自分の信念を貫く勇気を与えてくれました。私たちがその勇気を持てば、私たちは直接彼の世界に連れて行かれ、彼のビジョンの中に入り込むことができるのです。

 そして、映画の歴史を通じ、かつてそのようなビジョンはありませんでした。それは希望と驚異、優美で神秘のビジョンでした。それは私たちへの贈り物であり、今では遺産となっています。

 私たちが彼の勇気を受け入れ続ける限り、私たちはそれによって挑戦し続け、育まれるでしょう。それが私たちが感謝と別れを告げた後もずっと続くことを願っています。

スティーブン・スピルバーグ




 1999年3月7日にキューブリックが逝去し、その2週間後の3月21日に開催された71回アカデミー賞のオープニングで、スピルバーグがスピーチしたキューブリックへの賛辞の全文です。この時からすでに25年の月日が流れていますが、映画界においてキューブリックの存在感(と喪失感)はますますその大きさを増しているような気がします。アカデミーもそろそろキューブリックに何かの賞を贈るべきだと思うのですが、いかがでしょうか?『2001年宇宙の旅』の視覚効果賞だけなんて、その功績に比してあまりにも塩対応すぎると思うんですけどね(キューブリック作品をアカデミー映画博物館の広報に使うなら尚更)。

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おそらく生涯最後の出演になる、インディーズホラー映画『フォレストヒルズ』(公開未定)に出演したシェリー・デュバル

 『シャイニング』でジャック・トランス(ジャック・ニコルソン)の妻、ウェンディ・トランスを演じたシェリー・デュバルさんが2024年7月11日、糖尿病の合併症で亡くなりました。享年75歳でした。

 シェリーが精神疾患と糖尿病を患っていたのは当ブログでも何度かご紹介した通りですが、当人が精神疾患の治療を拒否していたのは事実のようで、そうであれば糖尿病の治療も拒否していた可能性があります(投薬程度の治療はしていたかもしれません)。晩年は歩行も困難になり、車で移動していたという記事も目にしていました。ならば、糖尿病の合併症で死去いうのはある程度予想がつく結末であり、本人が望んだ穏やかな生活での結果だとしたら、遅かれ早かれ死は彼女のすぐ近くにあったのだろうと思います。

 重度の糖尿病は精神の不調をきたすことが知られています。もしシェリーの精神疾患の原因が糖尿病によるものであれば、かなり筋の通った推察になりますが、これはあくまでも「推察」の域を出ません。過去には「『シャイニング』におけるキューブリックによるイジメのせい」などとデマが流布されたこともありますが、それは様々な事実や本人の証言から完全に否定されています。

 実際のシェリーは『シャイニング』で演じたウェンディのような「ひ弱で怖がりでオドオドしたいじめられやすい女性」とは正反対で、自立した自我を持った強い女性でした。それは女優という与えられる仕事だけではなく、自らプロデュース業に乗り出し成功を収めたことからもわかります。ですが2002年にそれらを全て放棄し、突然テキサスに引きこもってしまいました。その原因はノースリッジ地震(1994年)と兄弟の重病(ガン)と説明しましたが、これがそのまま精神疾患の原因とは考えにくいです。なぜなら時期が合わないからです。

 パートナーのダン・ギルロイ氏によれば、精神疾患は2000年代のある日突然に始まったそうで、その日以降、シェリーは目に見えない敵に怯える、指をパチパチと鳴らす、突然視界から消えるなど挙動不審を繰り返すようになったといいます。個人的には、その精神疾患による突然の精神の不調により、突発的に自死を選んでしまうことを危惧していて、それによってキューブリックに対して謂れのない批判が(「キューブリックのパワハラがシェリーを死に至らしめたんだ!!)巻き起こることを懸念しておりました。ですが、それは杞憂に終わったようです(こちらの記事を参照)。それはそれとして、人生100年時代が叫ばれる現代において75歳はあまりにも早い退場であり、非常に残念でなりません。

 謹んで故人のご冥福をお祈りいたします。R.I.P.

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