2020年07月

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 キューブリックと一緒に仕事ができなかったことを非常に後悔しています。作曲を依頼され、承諾したのですが、彼の律儀さゆえに、ちょうど私が作曲した音楽をミックス中のセルジオ・レオーネ監督に電話をかけてしまったのです。私はもうその仕事を終えていたのですが、レオーネはキューブリックに、私はまだ作曲中だと伝えてしまいました。それでキューブリックはもう頼んできませんでした。このことで『時計じかけのオレンジ』の音楽を作曲することができませんでした。とても残念です。キューブリックはその後二度と連絡してくれなかったのです。



 先日逝去の報が伝えられた、映画音楽の世界で多大な足跡を残したエンニオ・モリコーネですが、キューブリックは『時計じかけのオレンジ』の音楽をモリコーネに依頼していたそうです。ですが、キューブリックが律儀にもセルジオ・レオーネに電話(おそらく「今度モリコーネと一緒に仕事することになったので彼を借りるよ」的な挨拶の電話)したところ、レオーネ監督は「モリコーネはまだ私と仕事中」と応えてしまい、それからモリコーネにキューブリックからの連絡は途絶えてしまったのだそう。

 どうしてレオーネは終わったはずの仕事(『夕陽のギャングたち』の音楽)なのに「まだ私と仕事中」と応えてしまったのでしょう? 理由は「キューブリックにモリコーネを取られるのが嫌だった」「モリコーネは終わったと思っていたが、レオーネは曲のリテイクを考えていた」などいくつか考えられますが、理由はどうであれ、この件でキューブリックがモリコーネに不信感を抱き、連絡を絶ったのだと思います。キューブリックは片手間で自分の作品の仕事をしてもらうのを嫌います。オファーを受諾したからには自作に全力投球をして欲しがるのです。ですので、レオーネの仕事をしながら自作の仕事をしてもらうことを許容できなかったのですが、モリコーネはこの件を非常に悔いているようです。レオーネにしてみれば「やれやれ」だったのかもしれませんが。

 そのレオーネとキューブリックの間にはこんな会話もあったそう。

キューブリックが私に言った。「私はエンニオ・モリコーネのアルバムをすべて持っている。 どうして私はあなたの映画音楽が好きなのか、私に説明してもらえないか?」私は「心配しないで!私は『2001年…』を見るまでリヒャルト・シュトラウスを使うなんて考えつかなかったから」と答えました。(引用:【関連記事】スタンリー・キューブリックが好んだ映画のマスター・リスト(2016年7月25日改訂版)

このコメント、『時計じかけのオレンジ』でのモリコーネの奪い合いが影響しているのだとしたら、レオーネの若干皮肉めいた言い方も腑に落ちますね。

 その両巨匠に愛されたエンニオ・モリコーネは2020年7月6日に逝去しました。享年91歳。故人のご冥福をお祈りいたします。

情報提供・翻訳協力:Shinさま
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『レディ・プレイヤー1』公開時の予告編。

『レディ・プレイヤー1』と『シャイニング』の比較動画。ネタバレ注意!!

 2018年4月に公開され、「俺はガンダムで行く!」で話題になったスティーブン・スピルバーグ監督作品『レディ・プレイヤー1』が、2020年7月3日の夜9時から11時24分まで、日テレ系「金曜ロードSHOW!」にて地上波初オンエアされます。OAの時間帯はTwitter上の話題を独占しそうですが、この作品にはストーリーの重要な「鍵」として、キューブリックの『シャイニング』が登場します。

 実はこの「鍵」、原作では『ブレードランナー』だったのですが、諸事情により映画では『シャイニング』に変更になりました(その経緯はこちら)。おそらく多くのキューブリックファンが「初見時は気に入らず、それをキューブリックに見破られて困った」(後に「お気に入りになった」とコメントしている)と語っていたスピルバーグが『シャイニング』を採用したことに驚いたと思いますが、この後に『シャイニング』の続編小説『ドクター・スリープ』の映画化が控えていたことを考えると、商魂たくましいワーナーさんの、一種の「プロモーション戦略」ではなかったかと思います。

 でもまあ、今作や『ドクター・スリープ』が話題になり、昨今のキューブリック・リバイバルに繋がっているとも言えるので、それを云々するのは浅慮というもの。オールドファンはそんな無粋なことは脇に置いておいて、このリバイバルを大いに楽しむべきだと思っています。また、今作やGUのTシャツなどで『シャイニング』やキューブリックを知った、という新しいファンは、他のキューブリック作品を是非とも制覇して欲しい(そんなに作品数ないですし。汗)。キューブリックの諸作品は、日本のアニメ、マンガ、ゲーム、映画、音楽、CMなど多くのカルチャーやサブカルに多大な影響を与えています(それはこのカテにまとめております)。そのため、キューブリック作品を知っていると知っていないとでは、ありとあらゆる分野のクリエーターが発表する作品の「楽しみ方」が違ってきてしまいます。誤解を恐れず言えば、キューブリック作品は「カルチャーやサブカルの基礎教養レベル」と断言できるでしょう。

 キューブリックが逝去し、もう20年以上が経過しました。2000年代から2010年代前半まで、キューブリックは「過去の映画監督」とされ、若い世代にその影響力が伝承されていませんでした。昨今のキューブリック・リバイバルはファンとしても感涙ものの「椿事」(いや、20年後にこんなことになるなんて想像だにしていませんでしたよ)です。願わくば、その影響力が確実にさらなる未来に伝承されていって欲しいと願っています。
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