2020年07月

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Kubrick By Kubrick

 このドキュメンタリー『キューブリックが語るキューブリック(Kubrick By Kubrick)』は、キューブリックと懇意だったフランスの映画評論家、ミシェル・シマンのインタビューテープを中心に構成されたもので、そのインタビューの多くはシマンの著書『キューブリック』に掲載されています。ですので、こちらはそのダイジェスト版的な位置付けになりますが、『キューブリック』に掲載されていないコメントもあり、ファンにとってはとても興味深いドキュメンタリーでした。

 意外に思われるかもしれませんが、キューブリックは自作に関しては割と雄弁に語る監督です。その最たるものは『メイキング・オブ・2001年宇宙の旅』に掲載されたプレイボーイ誌のインタビューで、例のラストシーンについても「説明」しています。そしてもちろんシマンの『キューブリック』にもある程度の「説明」はされていて(意図の解説や解釈は語りたがらなかった)、それらはキューブリック作品を読み解くヒントになり得るものです。それに加えて自身の思想や思考、スタンス、認識、政治、人生観まで幅広く語っています(これらは他のインタビューでもそう)。

 ですので、このドキュメンタリーに期待していたのですが、構成が時系列や作品別ではなく、インタビューで飛び出したキーワードをつなぎ合わせていくというものだったので、キューブリック本人や作品にある程度触れている中級者以上の内容だと感じました。それに加えてNHKの放映枠の関係からかオリジナルの70分から50分にカットされてしまっていたのが残念です。

 NHKさんのことですからいつかはノーカットでのOAがあることを信じておりますし、また、ソフト化の可能性もあると考えています。ですので現時点では不完全で、なんとなく消化不良なモヤモヤ感はありますが、とりあえずこのドキュメンタリー内で管理人が個人的に気になったキューブリックのコメントをピックアップし、解説してみたいと思います。

(1)私が考える映像美学について語る意味があるとは思えないし、それが可能だとも思わない。それに映画を作った理由を問われ、気の利いたことを言わなければと思うことも面倒なんだ。

 キューブリックは以前は(自身を売り込む目的もあって)自分や自作についてよく語る監督でした。それが一転するのは『時計じかけのオレンジ』でマスコミに暴力主義者と批判され、脅迫されるようになってからです。インタビュアーのミシェル・シマンがキューブリックに初めてインタビューしたのは、キューブリックがそうなる直前の『時計…』公開時でした。(1)のコメントはキューブリックの本音でもありますが、マスコミを避けるようになってからも(1)の理由をたびたび持ち出しています。

(2)自分以外の誰かが書いたストーリーだからこそ初読の喜びがある。物語への期待感や心を動かされるような感覚は、自分が書いたものからは得られない。

 キューブリックは自分でストーリーを書く(ストーリーメーカー)ことはせず、小説を映像化する「ストーリーテラー」でした。その理由が(2)なのですが、本人は「そんな才能はない」「小説家じゃないので(ストーリーメイク)は手伝えない」と度々語っています。

(3)確かに私は探偵のように細かな調査でヒントを探す。『バリー・リンドン』では何千ものスケッチや絵画を集めた。書店で美術書を買い集め、バラバラにして分類した。映画の衣装はデザインではなく当時の絵画から忠実にコピーしたんだ。

 キューブリックはいわゆる「ソース主義者」で、どんな細かいことでも「ソース」を求めました。過去の物語なら歴史書などの資料、未来の物語なら予測の根拠、まったくのでっちあげである『アイズ…』の儀式でさえソースを欲しがりました。それは「デザイナーに〈18世紀風〉の服を作らせるのは愚かなことだ」のコメントにも表れています。そしてその理由は(4)になります。

(4)すべての作品が直面するのは見る側に映像は本物だと思わせることだ。時代設定が現代でない場合は、特にリアルな雰囲気を作るのが出発点だ。

 キューブリックは「リアルな雰囲気」にこだわりました。それは「昔から歴史物の映画の照明はウソくさいと思っていた」と語るように、ウソくささが見えると観客をストーリーに引き込む力を弱めてしまうと考えていたからでしょう。現在は撮影技術の向上によりキューブリックの時代よりはるかに簡単にリアルな映像が手に入るようになりました。ただ、CG臭さ全開のような映像をキューブリックがどう思ったかはわかりません。

(5)映画に何かしら意図を盛り込む点では、(『恐怖と欲望』は)その後の作品にも通じている。中身のない単なる娯楽映画にはしたくなかった。

 これはもう解説の必要はないですね。これがあるからこそ、キューブリック作品は多くの人を惹きつけるのでしょう。

以降、各作品に対するキューブリックのコメントが続きますが、それは番組でお楽しみください。

(6)人類が存続できるかは機械の「超知性」次第とも言える。知性というのは良いものだと私には思えるからだ。超知性の機械が人間よりタチが悪いはずがない。

 ここで言う「超知性」は、スピルバーグが監督した『A.I.』のラストシーンを思い起こさせます。クラークも機械については「申し分なく進歩すれば実質人間と変わらない」という考えの持ち主でした。

(7)20世紀のあらゆる芸術で失敗を招いた原因の1つは独創性に固執しすぎたことだ。「革新」は前進を意味するが、古典的な形式や現行の手法を捨て去るわけじゃない。だが、真の意味での芸術の爆発は物語の構造から解放されたときに訪れるだろう。

 至言ですね。
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『Kubrick by Kubrick』の予告編。いままで邦訳されていなかったインタビューに期待。

 2020年7月14日(火)NHK BS1 午前0時(火※月曜深夜)にOAされる『キューブリックが語るキューブリック(Kubrick by Kubrick)』の予約はお済みでしょうか?本作は今年の「トライベッカ映画祭」で初公開の予定だったのですがコロナの影響で中止になったため、4月にフランスで初OA、ドイツ、ウクライナでもOAされたようです。そしてなんと7月に日本でOAは世界的に見てもかなり早い登場。本国アメリカやイギリスより早いなんて、さすがキューブリックびいき(?)なNHKさん、いい仕事してます!

 このドキュメンタリーは、キューブリックと長年懇意であったフランスの映画評論家ミシェル・シマンが、キューブリック本人と関係者のインタビューをまとめたものです。ミシェル・シマンといえば、当ブログのTwitterで毎日botでツイートしている『キューブリック語録』のソース本『キューブリック』の著者で、ファンにはお馴染みの人物。

 IMDbによると出演者は以下の通り。全てアーカイブ映像です。番組ホームページはこちら。録画予約やHDDの空き容量の確認も忘れずに!(管理人のよくやるミス。汗)

スタンリー・キューブリック
ミシェル・シマン
マルコム・マクダウェル
ジャック・ニコルソン
シェリー・デュバル
スターリング・ヘイドン
アーサー・C・クラーク
マリサ・ベレンソン
R・リー・アーメイ
ヴィンセント・ドノフリオ
ピーター・セラーズ
ギャレット・ブラウン
ケン・アダム
レナード・ローゼンマン
トム・クルーズ
ニコール・キッドマン
クリスティアーヌ・キューブリック
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 このザ・レモン・ツイッグス (The Lemon Twigs)というバンド、というか実質はブライアンとマイケルのダダリオ兄弟のユニットだそうで、出身はニューヨーク州ロングアイランド。ジャンル的にはソフトロックやポップロックと言えると思いますが、1960〜80年代のサウンドを彷彿とさせるいわゆるロック・リバイバル系ですね。

 この曲『These Words』は歌詞を読む限り現在のSNS時代を題材にしているようですが、それがなぜ『バリー・リンドン』になるのかはわかりません。単にMVの監督の趣味なんでしょうか? それにしてもしつこいくらいのズームアップ・ズームアウトやロウソクや決闘のシーンなどは、笑ってしまうくらいにキューブリックしています。

 最新MV曲『The One』も聴いてみましたが、ポール・マッカートニー&ウィングス、バッドフィンガー、パイロット、ラズベリーズ、そしてBCRなどを彷彿とさせる70年代パワー・ポップが懐か新しい。こういったサウンドが評価される海外と違い、日本では完全に無視されている現状は悲しい限りですが、日本の「ロック」は完全にガラパゴス化していますので、今後彼らが日本でメジャーになる、などということはないでしょう。いわゆる「好きな人は好き」というニッチなニーズを満たすだけだとは思いますが、せっかく知ったバンドですし、今後の活躍を注目しておきたいと思います。

情報提供:Love cinemaさま
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『シャイニング』の空撮が流用された『ブレードランナー』初公開(国際)版のラストシーン。シネスコサイズに合わせたので、空撮のカットが横に伸びている。

正しいアスペクト比の『シャイニング』のオープニングシーン。

リドリー・スコットの発言は24:45頃から。

 『ブレードランナー』初公開(国際)版のラストシーンの空撮は『シャイニング』のオープニングの流用であるというのはファンの間では有名な話ですが、その詳細を語るリドリー・スコットの動画がありましたのでご紹介。内容の概略は

 17時間に及ぶ山脈の空撮映像が編集室に届き、キューブリックが『ブレードランナー』のラストシーンで使用される車の種類を電話で質問してきた。私がブロンコだと答えると、「俺の方はフォルクス・ワーゲンだぞ。困ったな」と言い、『ブレードランナー』のスクリーンサイズを尋ねられ、ワイドスクリーン(シネスコサイズ)だと答えたら、「それならワーゲンが伸びてブロンコに見えるな。それで大丈夫だ」と言った。

 後日、再びキューブリックから電話があり、「もうひとつ言っておくことがあるんだ。今、君はそのフッテージを観ているところだと思うが、俺が使った部分を君が使った場合、その時点で使用禁止になるからな。いいね」と言って電話を切った。これぞキューブリックさ。

(翻訳:カウボーイさま)


とのこと。

 『シャイニング』は全編35mmのフルサイズで撮影されていて、それを上下カットしてワイドスクリーン化して上映されました。キューブリックがスコットにスクリーンサイズを尋ねたのはそれがあってのことですが、「ワーゲンが伸びてブロンコに見える」とは、35mmフルサイズを左右に伸ばしてシネスコサイズにしたら、ワーゲンの車体が左右に伸びてブロンコ(SUV車)に見えるね、という意味だと思います。もちろんキューブリックのジョークですが、実際は車が映ったカットは使用されませんでしたので問題はありませんでした。それよりも上記の映像を比較すれば「左右伸ばし」なのがモロわかりなのが興味深いです。

 キューブリックは『シャイニング』から35mmフルサイズで撮影し、上映時は上下カットのワイドサイズ(ビスタサイズ)で、TV放映時はフルサイズ(当時のTVは4:3だった)でというフォーマットで落ち着きます。ワイドサイズのTVが当たり前になった現在では、旧版のDVDでしかフルサイズを視聴することはできません。キューブリックのアシスタントだったレオン・ヴィタリの証言によると、キューブリックは『シャイニング』の頃まではビデオソフトには特に注意を払っていなかったそうです(ビデオが一般化するのは80年代前半以降)。もちろん一般化してからは例によって例のごとく「こだわりの虫」が騒ぎ出し、自作のビデオ化にも口うるさく介入、そのとばっちりはレオンが一手に引き受けることになるのですが、その一部はドキュメンタリー『キューブリックに魅せられた男』で伺い知ることができます。本作は最近DVD化されましたので、ぜひご覧ください。

情報提供:カウボーイさま
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 革新的な1968年の映画『2001年宇宙の旅』の宇宙服は、デイヴィッド・ボーマンがHALを「殺害」したときに着用したと考えられており、来月オークションに出品されます。

 7月17日から18日にビバリーヒルズで開催される、ハリウッドと宇宙探査の記念品ショーのハイライトである宇宙服は、控えめに見積もっても20万ドルから30万ドルと推定されています。

〈以下略〉

(全文はリンク先へ:Gulf Today/2020年6月30日




 20万から30万ドル(約2,100万円〜3,200万円)とはまたすごい金額ですが、宇宙服は月面のモノリス発掘現場のシーンで使用されたものに見えます。ヘルメットは記事によるとボーマンによるHAL殺害シーンの撮影に着用した可能性があるとのことで、その理由は緑色の塗料が付着しているかだらそう。白と黄色のペンキの層になってるという記述もあるのでプールのヘルメットの可能性もありますが、もしそうだとしても、白に塗り戻す必然性を感じません。撮影の順番は月面シーン→ディスカバリー号のシーンなので、月面シーンで使用したヘルメットを色を塗り替えてディスカバリー号のシーンで使用したなら、緑や黄色のまま残っているはずです。撮影が終わってわざわざ白に塗り戻す、などということはちょっと考えられません。詳細は現物を観察しなければ不明ですが、管理人の予想は、このヘルメットは月面シーン(もしくはムーンバスのシーン)に使用されたもので、その後色のテストか何かで黄色や緑色に部分的に塗られたか、作業中に塗料が付着しただけのものではないでしょうか。

 そうなるとこの約3,200万円という落札予想価格は高額すぎると思えますが、果たしてどうなることやら。買われるにしても来春に開館予定(また延期したらしい!)のアカデミー博物館に展示する展示物(『2001年…』で現存する唯一のモデル「アリエス1B宇宙船」が展示予定)として、アカデミー協会にぜひ落札して欲しいものです。
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