2020年04月

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1977年に出版されたスティーブン・キングの小説『シャイニング』のカバーイラスト。

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1997年にTVドラマ(ミニシリーズ)で映像化された『シャイニング』のキャスティング。カバーイラストと印象が非常によく似ている。

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小説『シャイニング』初版本の書影。

 小説『シャイニング』は1977年にハードカバーとして初版が発刊され、以降ペーパーバックスなどで重版がされてきました。1977年といえばキューブリックは映画化を決め、プリプロダクションをしている頃。その初版ハードカバーのカバーイラストが上記になりますが、これを見てピンと来る方も多いかと思います。そうです、後年キューブリックの『シャイニング』に不満を持ったスティーブン・キングが再映像化したTVドラマ版『シャイニング』のキャスティングにそっくりなのです。

 このカバーイラストをキングが監修したか否かは情報がありませんので不明ですが、少なくとも再映像化の際にこの印象を「引きずった」のは確実だと思われます。背景に書かれたホテルも、実際にキングが投宿し舞台のモデルにした「スタンリー・ホテル」にそっくりですし、映画版ではボツにされた生垣動物もクリケットの槌も描かれています。個人的にはこのイラストをキングが監修した可能性はかなり高いと思っています。つまり、キングの本音としては「初版カバーイラストのイメージで映画化して欲しい」ということだったのではないかと思います。

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キューブリックが映画制作時に使用したゲラに直接書き込んだメモ書き。

 キューブリックは出版前のゲラを読んで映画化を決めていますので、当然ですがその時点ではこのイラストを見ていません。その後この初版ハードカバーのイラストを見たかどうかも不明です。しかし、キューブリックはキングが書いた脚本を読みもせずに拒否したり、キャスティグの提案も一蹴したことは知られています。つまり「映像化はこちらの自由にさせてもらう」ということだと思います。もちろん見たとしてもキューブリックがこのカバーイラストに影響されることはなかったでしょう。ジャック・ニコルソンのキャスティングは早い段階からすでに決定済みでしたし、キャラクターを大きく改変されたウェンディに至っては「いじめられやすそうな人でないと」と発言しています(小説版やTVドラマ版のウェンディは夫との不和や過去のトラウマに悩まされつつも、我が子を守る自立した力強い女性として描かれている)。

 キングが監修したTVドラマ版『シャイニング』は、キューブリックが好き勝手に改変した映画版『シャイニング』を、自身が取り戻すための映像化だった、というのはよく語られる話です。この初版カバーイラストは、それを裏付ける非常に有力な「傍証」と言えるのではないでしょうか。ただ、それが「成功」だったかどうかはまた別の話ですね。

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キューブリック版『シャイニング』でトランス一家が「オーバールック・ホテル」へ向かうシーン。

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スティーブン・キングが監修したTVドラマ版『シャイニング』で同じくトランス一家が「オーバールック・ホテル」へ向かうシーン。キャスティングが違うだけだが、同一シチュエーションでも印象がかなり違う。

 米ワーナーメディアは現地時間16日、作家スティーヴン・キングの傑作小説「シャイニング」に登場する恐怖のホテルを描くドラマシリーズ「オーバールック(原題) / Overlook」を、新動画配信サービス「HBO Max」向けに製作すると発表した。製作総指揮を務めるのは、『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』のJ・J・エイブラムスだ。

〈中略〉

 また『シャイニング』の前日譚映画『ザ・オーバールック・ホテル(原題) / The Overlook Hotel』が、『わたしを離さないで』のマーク・ロマネク監督によって進行していたが、その後音沙汰がない。

〈以下略〉

(全文はリンク先へ:シネマトゥデイ/2020年4月17日




 以前この記事で第一報をお知らせし、その後進捗がないことから完全にボツったと思われていた『シャイニング』の前日譚『オーバールック・ホテル』ですが、映画ではなく動画配信サービス「HBO Max」のコンテンツとして復活するそうです。しかも製作総指揮がJ・J・エイブラムスで。企画が復活した理由は定かじゃありませんが、脚本が出来上がっていてすぐ制作に取りかかれる、ネームバリューのある作品の前日譚なので視聴率が期待できる、などの理由が想像できます。

 その『オーバールック・ホテル』の内容ですが、以前こちら記事にした映画版の脚本は「キングの原作から取り除かれたという序章と終章に基づき、ホテルの初代オーナーとなる人物、ボブ・T・ワトソンに迫るものになる」とあります。この「ワトソン」とは、キューブリック版の面接シーンでジャック・ニコルソンの隣に座っていたのが、初代オーナーボブ・T・ワトソンの孫のワトソン。TVドラマ版ではジャックにボイラー室の説明をしていたおしゃべりな親父がワトソンです。そのお祖父ちゃんであるオーナーボブ・T・ワトソンの物語・・・果たしてどうなることになりますことやら。もちろん完全に別脚本になる可能性もありますね。

 今のところスティーブン・キングの名前はないようですが、今後何らかの形で参加するかもしれません。そのうちキャスティングやPVが発表になると思いますので、その際にまた記事にしたいと思います。

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 私は地元ブロンクスの野球チーム「バラクーダーズ」に所属していた。時折、同じくらいの年齢の男が遊びに来ていたが、その男はあまり良いスポーツマンではなかったので、チームのメンバーは彼が試合に加わることを嫌がった。しかし、私は「入れてあげなよ!」と言って彼を参加させた。その男がキューブリックだった。

 キューブリックが最初の短編映画(『拳闘試合の日』)を作った時、私が音楽家(ジュリアード音楽院オーボエ専攻)であることを知り、その作品のための映画音楽の作曲を依頼された。快諾したが、私はそれまで映画音楽を作曲したことがなかったため、多くの映画を見ることで勉強し始めた。その短編映画はRKOに買い取られ、それが私の映画音楽作曲家としての出発点となった。 

 当時は現在のように映画音楽を教える大学やクラスはなかったため、独学しかなかった。よって映画を見続けることで勉強し続けた。例えばバーナード・ハーマンがあるシーンで流している曲が、画にマッチしていなかった。つまり、そのシーンでハーマンが、目には見えない映画の登場人物の気持ちや心理を曲で表現していることを知った。場面で曲を終わらせる時も、そこには終わらせる必然性がなければならないことを私は知った。つまり映画音楽の文法を理解し始めた。やがて私は学ぶだけではなく、プロの作曲家の仕事や、映画内でのそれの使い方を自分なりに分析、批評するようになり、より映画音楽の手法を身につけた。

 キューブリックが「キューブリック」になりうる前は、私に自由に作曲をさせた。2本目からキューブリックは少しづつ自分のアイデアを出すようになり、徐々に要求も高くなって来た。3本目では既に私たちは激しく議論するようになっていて、それはどちらかが打ち負かされるまでの「ノックアウト・バトル」になった。その時期までにキューブリックは、自己の趣味とスタイルを作り上げる過程にいた。

 キューブリックは議論をする相手としてはハードであり、同時に賢くて才能があった。私たちは議論をしたものの、大体は意見の一致に至った。『突撃』で私はキューブリックのアイデアや意見に合わせると同時に、自分でも全てに納得のいく仕事ができて興奮した。

(ここからはフリード個人の作風の説明になるので省略。フリードのスタイルは『現金に体を張れ』で確立し、同作のメインテーマは彼のトレードマークになったとのこと)

翻訳協力:カウボーイさま




 キューブリック初期作品の音楽を担当したジェラルド・フリードのインタビュー動画がありましたのでご紹介。フリードとキューブリックはタフト高校時代、共通の友人であるアレキサンダー・シンガーを通じて知り合い、キューブリックの初ドキュメンタリー映画『拳闘試合の日』の音楽制作を依頼されたのを皮切りに(フリード曰く「彼は私以外に音楽家を知らなかったから。笑」)、『恐怖と欲望』『非情の罠』『現金に身体を張れ』『突撃』のサウンドトラックを担当しました。一般的に『突撃』は、キューブリックが書いた脚本にカーク・ダグラスが感銘を受け、制作を熱望したと伝わっていますが、フリードによると、カークは同じドイツで『バイキング』の撮影があり、その合間に『突撃』も撮影できるから、というのも理由だったそうです。

 『突撃』以降、キューブリックとフリードは一緒に仕事をすることはありませんでしたが、偶然にもキューブリックが『2001年宇宙の旅』を制作するにあたり参考に観た映画『To the Moon and Beyond』を担当したのもフリードでした。また、後年まで手紙などの交流はあったそうです。

 フリードはその後、『スター・トレック・シリーズ(TV・映画)』『スパイ大作戦』『ルーツ』などのサウンドドラックを担当、『トランスフォーマー:ダーク・オブ・ザ・ムーン』に楽曲提供するなど現在もコンポーザーとして活躍中です。
 
▼この記事の執筆に当たり、以下の記事を参考にいたしました。
A Friendship Odyssey: Stanley Kubrick and Gerald Fried
GERALD FRIED ON STANLEY KUBRICK
Gerald Fried:IMDb
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 この『キューブリック・バイ・キューブリック』は、キューブリックと長年懇意であったフランスの映画評論家、ミシェル・シマンがキューブリック本人と関係者のインタビューをまとめたドキュメンタリーで、今年の「トライベッカ映画祭」で初公開される予定だったのですが中止になったため、現在アメリカでの公開を目指しているそうです。

 ミシェル・シマンといえば、当ブログのTwitterで毎日午前0時頃にbotでツイートしている『キューブリック語録』のソース本『キューブリック』の著者で、ファンにはお馴染みの人物。

 IMDbによると出演者は以下の通り。全てアーカイブ映像です。日本公開を期待したいですね。

スタンリー・キューブリック
ミシェル・シマン
マルコム・マクダウェル
ジャック・ニコルソン
シェリー・デュバル
スターリング・ヘイドン
アーサー・C・クラーク
マリサ・ベレンソン
R・リー・アーメイ
ヴィンセント・ドノフリオ
ピーター・セラーズ
ギャレット・ブラウン
ケン・アダム
レナード・ローゼンマン
トム・クルーズ
ニコール・キッドマン
クリスティアーヌ・キューブリック
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