2018年09月

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 スタンリー・キューブリック監督作「2001年宇宙の旅」(1968)のニュープリント“アンレストア”版70ミリ・が、いよいよ10月6日から東京・京橋の国立映画アーカイブで期間限定上映される。フィルム撮影に熱い思いを込める名匠クリストファー・ノーラン監督が監修し、公開当時の本来の映像と音の再現を追求したニュープリントだが、果たしてどれだけすごいのか? 本企画を実現させた、同アーカイブの主任研究員・冨田美香氏に話を聞いた。

〈中略〉

 上映回数は6日間で計12回だが、冨田氏いわく「1日2回が限度」。というのも70ミリ上映は、技術だけでなく“技師の体力勝負”でもあるからだ。フィルム1巻は15分前後の映像であり、164分の今作では10回フィルムチェンジをしなくてはならない。

 1巻あたりの重量は、約15キロ(リールなど含む)。しかも国立映画アーカイブの兼用機は、地上から約2.5メートルの器具にリールを掛けなければならない。したがって技師は、約15分ごとに重たいフィルムを上げ下げすることになる。それもフィルムを傷つけたり、映写事故を起こさないよう、細心の注意をはらいながら。3人1組でリールの巻き戻しや掛けかえの補佐などを分担しているが、かなりの重労働だ。「今回の映写は緊張の連続ですし、安全とクオリティを保てるラインが1日2回と考えています。映写トラブルやフィルム、映写機の破損などが起きれば、即上映中止ですからね」(冨田氏)。

〈以下略〉

(全文はリンク先へ:映画.com/2018年9月28日




 本年4月10日付のこの記事

今年のカンヌ映画祭で上映される70mm版『2001年宇宙の旅』が、日本で上映されるとしたら今のところ、ここ(国立映画アーカイブ)しかありません。プレスリリースにも「映画史上の名作を鑑賞する上映会」とあります。学芸員さん、日本のワーナーの担当者さん、期待していますよ!

などとお気楽なことを書いてしまいましたが、こんな大変なご苦労があったとは・・・。チケットを入手できた方は、それこそ隅々まで舐め回すようにじっくり丁寧に鑑賞しなければなりませんね。それほど希少な機会だと思います。楽しみですね。
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 まずは有名な1999年1月31日、全米で最も注目されるスポーツイベント「スーパーボウル(アメリカンフットボールリーグの優勝決定戦)」でオンエアされたAppleのコマーシャルから。古参のAppleユーザーならご存知の方も多いかと思いますが、当時「コンピュータ2000年問題」が話題になっていました。これはコンピュータシステムの内部で日付を扱う際に、西暦の下2桁のみを取り扱い、上位2桁を省略しているのが原因で起こるとされた問題で、2000年2月29日に発生すると予想されていたものです(実際は大きな混乱はなかった)。Apple(Mac)はシステム上この問題は起こり得なかったため、それをPRするためにHALを使ってアピールしたのです。

 「デイブ、コンピューターがおかしな行動をとりはじめた2000年のことを覚えているかい? わかってほしいんだけど、あれは本当にわれわれのせいではなかったんだ・・・2000年がやってきたとき、われわれには他にどうしようもなく、世界経済の崩壊を引き起こしてしまった・・・あれはバグだったんだ、デイブ。今そのことを認めて、だいぶ気分が楽になった。マッキントッシュだけが完全に機能するよう設計されていた。おかげで何十億ドル単位のお金が失われずにすんだんだ」

 1998年の夏、ロサンゼルスの広告代理店に勤務していたケン・シーガルによって始まったこのプロジェクト。ケンがHALのアイデアをジョブズへプレゼンテーションしたところ、ジョブズは「気に入った!」と即決。「ところで、これをスーパーボウルのCMに使えるかな?」という思わぬ展開になり、キューブリックにもさっそくプレゼン、意外にも数日でOKの返事が得られました。次なる関門はHALのオリジナル声優であるダグラス・レインの出演ですが、それは拒否され、代わりにモノマネが得意な声優トム・ケーンがキャスティングされました。当時よくキューブリックのOKが出たなと思っていたのですが、キューブリックはアメフトのファンで、1984年スーパーボウルのAppleの伝説的なCMを見ていたはず。それもあってAppleを好意的に感じていたのかもしれません。

リドリー・スコットがCM監督時代に、ジョージ・オーウェルの小説『1984』をベースに制作し、1984年のスーパーボウルで流された、今や伝説的なApple(Macintosh)のCM。

 そしてCMは完成、無事オンエアされたのですが、ジョブズはよほどこのアイデアが気に入ったのか、Macworld Expo San Francisco 99の1月5日の基調講演のオープニングにも同じCMを流しています(時系列ではこちらが先にお披露目)。



 さらに、フィル・シラーを交えてジョブズとHALの掛け合い漫才まで披露。その内容は

「やあスティーブ。私は高性能のコンピュータだ。Power PC G3 400MHzとPentium II 400MHzのベンチマークテストをするよ。フィル、どれかボタンを押してくれ。AE-3「6」ユニットが不調だ。G3がペンティアムよりも速い。この結果は信じられない。申し訳ないがこのプレゼンテーションは続けられない・・・」



 まだまだこのネタは引っ張られ、1999年5月10日のWWDC基調講演でもオープニングにHALが再登場。

「やあデイブ、また会いに来たよ。私はMac OSに最も興味あるので、長距離センサーでこの会議に参加するよ。私はMacのように人間との協力関係を築くことができるんだ。私は読唇術ができるのでフィードは必要ないから・・・ちょっとまって、私は今シャットダウンされている・・・デイジー、デイジー・・・会議を楽しんで、デイブ・・・」



 というわけで、1999年のAppleはHALづくしだったのですが、現在iPhoneなどに搭載されているSiriがHALを知っているかのような受け答えをするのは、このような経緯があったからかもしれませんね。

 さて、以下はMacユーザー(マカー)の昔話です。この時発表された青と白の新筐体PowerMacintosh G3はマカーの間で「ポリタンク」の愛称で親しまれました。キャンディーカラーの5色のiMacも新鮮でした。この頃には前経営陣で迷走した新OSも、ジョブズが復帰してからNeXTのOPENSTEPをベースにした新OS『Mac OS X(テン)』をリリースすると決定していて、その第一弾として『Mac OS Xサーバー』が発表されています。倒産寸前の絶不調から抜け出し、やっと明るい兆しが見え始めたのがこの時代のAppleなのですが、一般にその名を知られるのはiPodの成功(2002年頃)からです。ですので、このCMをご存知ない方も多いかもしれませんね。

▼この記事の執筆に当たり、以下の記事を参考にいたしました。
Ken Segall Truth, Justice & Simplicity:The making of Apple’s HAL
PC Watch:MACWORLD Expo/San Francisco基調講演レポート
WIRED:アップルの『2000年宇宙の旅』
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 キューブリックは『2001年…』制作の参考にするために、古今東西ありとあらゆるSF映画・宇宙映画・ドキュメンタリーを観まくっていましたので、最も影響を与えた作品をどれか一本に特定するのは非常に困難なのですが、その中でもこの1955年公開の『宇宙征服(Conquest of Space)』は、「与えた影響が大きい作品のひとつ」に挙げても良いのではないかと思います。

【ストーリー】地球軌道上の宇宙ステーションでは、月面探検に備えて指揮官メリット以下6名の宇宙飛行士たちが準備に励んでいた。危険な宇宙空間での作業を乗り越え、間もなく出発という頃、目的地が火星に変更される。やがて、地球の家族に別れを告げて飛び立つ宇宙船。だが彼らの行く手には、宇宙船の故障や流星の飛来など、様々な困難が待ち受けていた。さらに、果てしない旅に恐怖を感じたメリットが心を病んでしまうのだが…。

(引用元:スターチャンネル/宇宙征服


 チープな特撮、強引な展開、唐突なお色気などツッコミどころはありますが、全体的にはシリアスなトーンが覆っています。車輪型の宇宙ステーション、月から火星への目的地変更、地球に残した家族との交信、アンテナの故障や船外活動での修理、クルーの事故死と宇宙葬、精神を病む指揮官、ハシゴのある宇宙船の立体構造、回転するセット、ブルーのつなぎの制服、キャプテンのクールなキャラクター造形、そして「神」への言及など、『2001年…』映画版・小説版との共通項はいくつも見つかります。それに、このプロットはクラークが当初考えていた『2001年…』の草案「地球外の人工物との出会いを、発端にではなくクライマックスに置くものだった。その手前では、いろいろな事件や冒険をとおして、月や惑星の探検が描かれるという趣向だ」にそっくりです。こういった点を勘案すると、『2001年…』にかなりの影響を与えたことが推察されますが、当のキューブリックも『月世界征服』『宇宙戦争』などのジョージ・パル作品の影響を認めていたそうです。ただし、この時期に観た多くのSF映画に対して「絶対的なリアリズムに欠けている」と批判していたことも忘れてはなりません。

 Dailymotionには全編がアップロードされていますが、削除になるかもしれません。字幕はありませんが、簡単な物語なので概要を掴むには問題ないでしょう。キューブリックとクラークが目指した「語り草になるいいSF映画」の出発点として、ファンなら観ておいて損はない作品だと思います。
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 『2001年…』に限らず、映画には間違いがつきものですが、その種類を大きく分類すると以下の3つに分けられると思います

(1)考証時(制作当時の知見に基づく)のミス

(2)撮影時(プロップの取り違えなど)のミス

(3)編集時(テイク違いの矛盾)のミス


この動画にはその全てが紹介されていますが、(1)は月の重力下での人間の動きが1Gと変わらないなど、(2)は月面から見る地球の欠け方がシーンによって違う、食事ペーストの順番が違う、ボーマンがスケッチを持っている・いないなど、(3)は猿人の持っている骨と投げた骨が違う、女性の足の位置が違う、フロイド博士の持っている資料が違うなどです。キューブリックはもちろん、どの映画監督もこういったミスを無くそうと、ポラロイド写真を撮ったり、記録をつけるなどしていたのですが、CGで修正できる現在とは違い、この時代の映画は修正されずにそのまま残っていることが多く、ファンの間でも度々話題になっていますね。

 キューブリックはワンシーンにじっくりと時間をかけ、テイクも数多く撮るので、実は「ミスの多い」監督です。それをいちいちあげつらって「完璧主義者のキューブリックがミスをした!」と、鬼の首を取ったように指摘する方もいますが、それには大きな誤解があります。キューブリックの「完璧主義」は「ミスを許さない完璧主義」ではなく、「妥協を許さない完璧主義」(管理人はその誤解を招かないよう、あえて「些細なことまでとことんこだわるこだわり主義」と呼んでいます)です。キューブリックはことあるたびにインタビューなどで繰り返しこう語っています。

 監督にとって、どう撮るかは、むしろ簡単な決定で、楽な仕事だ。重要なのはシュート(撮影)する前の段階で、それは撮影するに足る何事かを起こしえるかへの挑戦なのだ、撮る内容をいかに充実したものにするかだ。

(引用元:イメージフォーラム1988年6月号/キューブリックのロングインタビュー


つまり、「良いシーンが撮れるまでテイクを繰り返すし、良いシーンが撮れれば、少々のミスは許容する」のです。その象徴的なシーンが以下になります。



このシーンでは、ドアを壊すテイクと、「Here's Johnny!」と笑うテイクが違うことが、割れたドアの壊れ方を見れば一目瞭然です。キューブリックもそれに気づいていたはずですが、あえて無視し、最高のテイクと最高のテイクをつなげたということになります。

 これらの「映画上のミス」は話のネタ的には面白いので、そのレベルで小ネタ的に話題にするのはアリかな、とは思います。ですが、こういった瑣末なミスをあげつらって、その映画監督の批判の論拠にするのは違うと思います。キューブリックは「完璧主義者」と言われているだけに、特にその俎上に上がりやすい監督です。生半可な知識しかない人ほど的外れな「ミス批判」をしがち(批判をするなら本質的な部分でして欲しい)なので、ファンとしては「またか・・・」と思いつつ、生暖かい目でスルーしてあげるのが正しい姿なのかな、と思っています。
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『To the Moon and Beyond』は0:32より

 『2001年宇宙の旅』がいつ観ても古さを感じさせないのは、その後のSF作品を一変させてしまったメカデザインや、セット、ミニチュア、特殊メイクなど、美術全般の魅力が大きい。そして何より、とんでもなくリアリスティックな画面を実現させた、高度な特撮技術(*1)の貢献を忘れてはならない。本来であれば、製作・配給を手掛けたMGMのスタッフが、特撮も担当するべきなのだろう。だがこの時期、ほとんどのハリウッドの撮影所は特撮課を廃止してしまっており、スタンリー・キューブリックは新たにスタッフを見つけることからスタートしなければならなかった。

〈以下略〉

(全文はリンク先へ:CINEMORE/2018年9月21日




 ここで採り上げられている『Universe』はこちらで、『To the Moon and Beyond』はこちらでご紹介済みです。記事の執筆を担当した大口孝之氏はCGの専門家だそうです。こうしてスタッフの動きと役割が時系列でまとめて記事化されると大変わかりやすいですね。
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