2017年11月

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『時計じかけのオレンジ』のレコードショップのシーンで、中央上部に飾られた『マジカル・ミステリー・ツアー』のアルバム(黄色いジャケット)が目を引きます。このレコードショップは実在(現在はマクドナルドになっている)し、ロケで撮影されたのですが、たまたまそこにあったのか、それともわざとキューブリックが目立つ位置に飾ったのか・・・それは謎です


 ビートルズといえばキューブリック以上に世界中にマニアがいるアーティストですので、管理人程度の知識で云々するのはおこがましいにもほどがあるんですが、それでも「ビートルズで一番好きなメンバーは?」と聞かれると「スチュアート・サトクリフ」と応える程度にはひねくれていますので(笑、今回はキューブリックとビートルズの意外な結びつきについてまとめたいと思います。


(1)ビートルズのTV映画『マジカル・ミステリー・ツアー』の『フライング』で使用された映像は『博士の異常な愛情』の空撮のアウトテイク

ほんの一部ですが、オフィシャルにアップロードされたものです。全編は『マジカル・ミステリー・ツアー』のBD/DVDでご確認を

 これを初めて知った時には驚きました。どうやらアップルのプロデューサー、デニス・オデルがキューブリックにオファーして、アウトテイクを譲ってもらったそうです(その記事はこちら)。なんだかリドリー・スコットが『ブレードランナー』で使用するため、『シャイニング』の空撮のアウトテイクを譲ってもらった話を彷彿とさせますね。『マジカル・ミステリー・ツアー』のオンエアは1967年12月26日ですので、キューブリックは『2001年…』の制作真っ最中。当時スタッフとして参加していたアンドリュー・バーキン(ジェーン・バーキンの兄、後に映画監督になる)は、この『マジカル…』のスタッフでもあったので、両者の間にはスタッフの交流があったのでしょう。


(2)ビートルズは『ロード・オブ・ザ・リング』映画化を企画し、その監督としてキューブリックにオファーした



 この記事によると「『ロード・オブ・ザ・リング』映画化の権利が1969年にユナイトに売却された際、ビートルズはキューブリックに監督を引き受けてくれるかどうか尋ねた」とあります。1969年といえば『2001年…』の直後、ちょうど『ナポレオン』の企画に取り掛かっている頃です。当時『ナポレオン』に夢中になっていたキューブリックが、残念ながら『ロード…』の企画に興味を惹かれることはなかったでしょうね。


(3)ローリング・ストーンズ版『時計じかけのオレンジ』に、ミック・ジャガーの出演を求めるビートルズのサイン入り嘆願書が発見、競売にかけられた

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 キューブリックが映画化する前、小説『時計じかけのオレンジ』の映画化権はミック・ジャガーが持っていたというのは割と有名な話ですが、ドルーグたちにはミックをはじめ、ストーンズのメンバーがキャスティングされる予定でした。しかもそのストーンズ版『時計じかけのオレンジ』のサントラはビートルズが担当するという話があったそうです。しかしこの企画は思うような進展を見せず、当時『時計…』の脚本担当していたテリー・サザーンはアレックス役にデイヴィッド・ヘミングスを考えるようになりました。それを知ったストーンズやビートルズのメンバーがテリー宛に「以下に署名のあるわたしたち一同は、『時計じかけのオレンジ』のアレックス役にあなたがミック・ジャガーではなく、デイヴィッド・ヘミングスを推していることについて、(あなたへの)期待が砕け散った幻想となってしまった思いですし、そのことを極めて激烈に抗議します」という内容の嘆願書を送ることにしたそうです(その記事はこちら)。

 テリーはストーンズやビートルズとビジネスする難しさ(スケジュールの確保や権利関係、意味不明な取り巻き連中も含めて)に他のキャスティングを考え出していたのかも知れません。しかし結局この企画は頓挫、テリーは『博士…』で一緒に仕事をしたキューブリックに映画化権を譲渡し、そしてあの傑作が生まれるということになりました。まあ、結果オーライだとは思いますね。


(4)『2001年宇宙の旅』で猿人「月を見るもの」を演じたダン・リクターは、ジョン・レノンの取り巻きの一人だった

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ジョンの写真を撮るダン・リクター。後ろにはヨーコの姿も。

 『2001年宇宙の旅』で猿人「月を見るもの」を演じたダン・リクターは、猿人のシーンの撮影終了後も異星人を演じるために撮影所に留まっていたそうですが、キューブリックがそれを断念した後は俳優仲間や音楽関係者と共に、ジョン・レノンが購入した南イングランドのアスコットにある「ティッテンハースト・パーク」に移住しました。要するにダンはジョンとヨーコの「取り巻き」の一人だったのです。そして1971年にダンは撮影監督としてドキュメンタリー『イマジン』の制作に参加(詳細はこちら)。また、名盤『ジョンの魂』のジャケ写はダンが撮影したものです(詳細はこちら)。ジョンとヨーコは1971年8月までここに住み、その後ニューヨークに引っ越しました。ダンは1973年に二人と別れたそうです。


(5)小説『シャイニング』の着想源はジョン・レノンの『インスタント・カーマ』が着想源だった



 スティーブン・キングが公言しているように、この「シャイニング」という言葉はジョン・レノンの『インスタント・カーマ』の歌詞「Well we all shine on Like the moon and the stars and the sun(そうさ私たちは輝けるさ、月のように、星のように、そして太陽のように)」が着想源です (すべての歌詞とその和訳はこちら)。「カーマ」はサンスクリット語で「業」を意味しますが、業の概念が分からないキリスト教圏の人間であるキングは、このカルマという言葉を「悪の因果」と解釈しています。つまり小説『シャイニング』で語られているオーバールック・ホテルが積み重ねて行った「悪い行いの繰り返し」の事です。そのカルマ、つまり悪の因果の果てにホテルに棲み着いた悪霊・悪魔に対抗できる唯一の(キリスト教的な)聖なる光が「シャイニング(輝き・ひらめき)」だとキングは理解し、小説のアイデアの中心に据えたのです。

 しかし映画化に当たってキューブリックはこのアイデアを採用しませんでした。映画版では「シャイニング」の役割は単に「ハロランに助けを求めるテレパシー」でしかありません。またカルマの「業」は、文字通りアメリカ人の「業」(白人至上主義による侵略・搾取の上に成り立っている国・国民)に置き換わっています。舞台はアメリカにもかかわらず、全体的にはどこかしらヨーロッパ的静謐感の漂う映像(これはキューブリックの「ヨーロッパ趣味」の影響が大きい)になってしまいました。『シャイニング』における『インスタント・カーマ』の影響は、スティーブンキング製作のTVドラマ版『シャイニング』方がはっきりと感じられると思います。


 以上ですが、キューブリックはポピュラー・ミュージックには疎かったようですので、ここに挙げた小ネタには「単なる偶然、巡り合わせ」でしかないものもあります。しかし、キューブリック側は意識していなくてもビートルズ側は意識していたようで、ジョン・レノンの「『2001年』?毎週見てるよ!」というコメントも伝わっています。『マジカル…』に『博士…』の映像を流用しようと考えたのも、『ロード…』映画化の監督にとキューブリックに白羽の矢を立てたのも、キューブリックがこの時期「映画界のトレンド・リーダー」であったことを示しています。

 まあ、当のキューブリックはそんな巷の騒ぎには一顧だにせず、我が道を貫き通していたのは周知の事実ですし(映画を当てたいキューブリックは映画界のトレンドの動向には注視していましたが)、それはキューブリックのどうしょうもないファッションセンスが示すとおりです(笑。とはいえ、「映画でもロックでも一番熱い1960年〜70年代」に両者の間に邂逅があったというのは興味深い事実ですね。
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日本版の予告編ではカットされていますが、本国の予告編には0:40に登場しています。

 作家スティーヴン・キングが完成まで実に30年もの月日を費やした同名シリーズを、イドリス・エルバとマシュー・マコノヒー共演で実写化する『ダークタワー』が来年1月に公開。原作小説では現在公開中の『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』の怖すぎるピエロとも繋がりがあり、本作でも“他作品との繋がり”が劇中で登場するか否かがファンの間で早くも注目が集まっているが、そこで今回、その疑問について語るスティーヴン・キングのコメントがシネマカフェに到着した。

〈中略〉

 原作では『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』で、ピエロ“ペニー・ワイズ”を彷彿とさせたキャラクターが登場しているほか、スタンリー・キューブリック監督で映画化もされた『シャイニング』の象徴的なホテルの写真や、「呪われた町」に登場していた神父が重要な場面に関わっているなど、キングの言葉通り、小説のシリーズには他作品との共有ポイントが随所に散りばめられていることが分かる。

〈以下略〉

(全文はリンク先へ:cinemacafe.net/2017年11月27日




 いやいやいやいやキングさん!『シャイニング』のオーバールック・ホテルを引用するなら、自身が小説執筆時に投宿したスタンリー・ホテルをロケ地にしたTVドラマ版『シャイニング』のホテルを引用すべきでしょう! あれだけキューブリック版を批判しておきながら、こういうところだけちゃっかりと拝借しちゃう(もしくは借用を許す)なんてちょっと調子良過ぎません?

 もうね、こういう態度のキングを見るにつけ、あのキューブリック批判は「批判」ではなく単なる「コンプレックス」「ヤキモチ」「嫉妬」にしか思えません。もういい年なんだし素直に「確かに小説を勝手に改変されたのは腹が立ったけど、やっぱり映画は傑作」と認めたらどうなんでしょう? みっともなさを通り越して哀れみさえ感じてしまいます。

 キングはキングで才能ある小説家(ストーリー・メーカー)ですし、それは世界中にファンがいることで十分証明されています。もうそろそろ大人になって「懐の深さ」を見せてもいいような気がしますね。

 『シャイニング』に登場する「オーバールック・ホテル」のモデルになった、実在する3つのホテルに関する考察はこちらをどうぞ。

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スティーブン・キングが小説『シャイニング』を執筆し、自身が監修したTVシリーズ版のロケ地になった「オーバールック・ホテル」のモデル、「スタンリー・ホテル」

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キューブリックの映画版「オーバールック・ホテル」の外観に使用された「ティンバーライン・ロッジ」
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早く日本でも開催してほしいものです。



 『キューブリック・フェスティバル2017』と題し、今年一年間デンマークのコペンハーゲンで開催されてきた一連のイベントの集大成として、『スタンリー・キューブリック展』が2017年9月23日から2018年1月14日までアートギャラリーKunstforeningen GL Strandにて開催中です。その展示の様子がスタンリー・キューブリック展のオフィシャルサイトにアップされていました。

 こじんまりとした展示のようですが、現地の盛り上がりはどの程度なんでしょうか? Twitterのオフィシャルアカウントもちょっとさびしいフォロワーですし、展示の様子を撮影した動画もアップされていないようですし、あまり盛り上がっていないのでしょうか。もう何度もここで訴えていますが、次回開催は現時点では未定のようですので、ぜひなるべく早くの日本での開催を実現してほしいですね。

 『キューブリック・フェスティバル2017』のオフィシャルサイトはこちら。今までの開催地リストはこちら
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ジョンの写真を撮るダン・リクター。後ろにはヨーコの姿も。

 ジョン・レノンのドキュメンタリー『イマジン』といえば、ジョンの死後、1988年に公開されたドキュメンタリー映画『イマジン』が有名ですが、それではなく、ジョンとヨーコが1972年に制作・発表したプライベート・フィルムの『イマジン』の方です。一部は名曲『イマジン』のPVに使われているので観たことがある方も多いかと思いますが、下記はそのパート1で、4分2秒あたりから写真を撮るダン・リクターが映っています。



 また、ポールへの悪意満載の迷曲『ハウ・ドゥ・ユー・スリープ?』のレコーディング風景を納めた動画にも2分5秒あたりから映り込んでいます。



 『2001年宇宙の旅』で猿人「月を見るもの」を演じたダンは、猿人のシーンの撮影終了後も異星人を演じるために撮影所に留まっていたそうですが、キューブリックがそれを断念した後は俳優仲間や音楽関係者と共に、ジョン・レノンが購入した南イングランドのアスコットにある「ティッテンハースト・パーク」に移住しました。要するにダンはジョンとヨーコの「取り巻き」の一人だったのです。そして1971年にダンは撮影監督としてこの『イマジン』の制作に参加。ジョンとヨーコは1971年8月までここに住み、その後ニューヨークに引っ越しました。ダンは1973年に二人と別れたそうです。

 ところでキューブリックとビートルズに関してはこの記事この記事など、いくつか逸話がありますので、今後まとめて記事にしたいと思います。

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猿人の衣装を身につけたダン・リクター
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サイズはXS。168cm・63kgの管理人は通常Mサイズですが、同じMでもぴったり目を好むので肩幅や身幅はそれと同じくらいでした。ただし丈は少し長め。H&Mのサイズ感は大きめMならS、小さめMならXSを選ぶといい感じ。

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タグに「STANLEY KUBRICK COLLECTION」のロゴ。非正規品はヤフオクなどで簡単に入手できますが、ブログやツイッターのネタにするには抵抗がありました。その点正規ライセンス品は安心感がありますし、プレゼントしても後ろめたくないですね。

 Twitterで見かけ、面白そうだったので銀座のH&Mで探したのですが、季節外れなのか見つからず、仕方ないのでH&Mのネットショップを探したのですが在庫なし。一旦あきらめたのですが、たまたまネットショップで在庫が復活していたので、すかさず購入しました。メンズ用で価格は1,799円。確かに生地はペラッペラですが、値段が値段なのでまあこんなものでしょう。

 ところで写真には2枚写っていますが、これはクリスマスプレゼント用に購入したものだからです。私的な話で恐縮ですが、管理人の身近には双子の姉妹がいます。その双子にクリスマスにプレゼントするつもりで買いました。ですので、メンズですがサイズは最小のXSになります。女性にはちょっと大きめになりますがこれしかないので仕方ないですね。

 ちなみに姉妹とも『シャイニング』は鑑賞済み。たぶんこんなものをクリスマスにプレゼントされたところで「え〜っ・・・」と微妙に嫌がるだけだと思いますが、その嫌がる反応を楽しみたいと思っています。まあ、部屋着かパジャマくらいにはしてくれるでしょう。

追記:予定通りクリスマスにプレゼントしましたが、予想に反して大好評でした(笑。「カワイイ!」って幽霊だよ? 君たちと同じ双子だよ? と言いましたが「でもカワイイ!」だそうです。まあ、喜んでもらえてなによりでした。
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