2017年10月

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 キューブリックがジェーム・B・ハリスと組んで「ハリス・キューブリック・ピクチャーズ」を設立し、最初に映画化権を取得したのはライオネル・ホワイトの小説『強奪(The Snatch)』でした。しかしこの小説は幼児誘拐を題材としていて、アメリカ映画制作配給協会(Motion Picture Producers and Distributors Association)は制作を許可しませんでした。キューブリックはユナイトにホワイトの別の小説の映画化権を買うことを要求し、フランク・シナトラ主演で企画が進んでいた『見事な結末(Clean Break)』の映画化権を獲得、『現金に体を貼れ(The Killing)』として制作・公開しました。

 ちなみに『The Snatch』は1969年にキューブリックとは何かと因縁深いマーロン・ブランド主演、ヒューバート・コーンフィールド監督で『私は誘惑されたい(The Night of the Following Day)』として映画化されました。ただし、無用なレイティングを避けるためか、幼児誘拐は女性へと改変されていて、その予告編が上記になります。

 以上の経緯から、この作品は「キューブリックが映画化を企画した作品」としてリストアップされるべきですが、なぜかこの件に関してはIMDdにある『The Night of the Following Day』のトリビアの項目に紹介があるのみです。つまりハリスやキューブリックが語っていた「たまたま書店で『見事な結末』を見つけて気に入り、それを映画化した」のではなく、「『強奪』の映画化が不可能になったハリスとキューブリックは書店でライオネル・ホワイトの別の小説を探し、気に入ったのが『見事な結末』だった」ということになります。なぜ『強奪』の経緯を伏せていたのかはわかりませんが、この小説の映画化権を巡って何らかのトラブルがあったとしたら、1969年公開というフィルム・ノワールものとしては遅きに失した映画化も、なんとなく納得できますね。
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 役者が手前の通路を通っているときは遠心機を回転させ、役者が遠心機に乗った瞬間に遠心機の回転を止め、通路を回転させる・・・という理解でいいんでしょうか。キューブリックは合成による画質劣化を嫌がり、ありとあらゆるアイデアとテクニックを駆使して、なるべく合成をしない「一発撮り」をしていたそうですが、このシーンだけはどうやって撮ったかはわからないままでした。

 ディスカバリー号の操縦室でボーマンとプールがありえない角度で立っているシーンは鏡を使い、宇宙遊泳や緊急エアロック、HALのメモリ室などの無重力シーンは垂直にセットを建て、真下から真上にカメラを向けて撮影したそうです。遠心機はセットが縦に二分割できるようになっていて、その合わせの隙間の上にカメラのドリーを乗せてぐるぐる回る映像が撮影されました。隙間にはゴムがついていてカメラの支持棒が通り過ぎると自然に塞がれるようになっていました。

 わかってしまえば非常にシンプルで原始的ですが、それにしてもよくこんなトリックを思いつきますね。
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和訳してくれたRoots4BOSSさん、感謝です。

 ユーチューバーのNostalgiaCriticが、スティーブン・キングが制作したTV版『シャイニング』を、キューブリックの映画版と比較しつつ、辛辣批評した動画です。キューブリック版のパロディ満載で、いかにCriticがキューブリック版が好きかが伝わってきますね。

 個人的にはほぼこの動画と同意見ですが、彼が見出した唯一の「TV版のいいところ」さえ管理人は評価していません。原作では「アル中で癇癪持ちの超絶ダメ親父だが、息子を愛する気持ちだけは本当だった」という「瞬間」に感動するのですが、TV版では「それなりに素敵なパパ」に見えるスティーブン・ウェバーがキャスティングされたため、この「落差」が緩くなってしまっています。それにウェンディ役のレベッカ・デモーネイも違和感があります。原作のジャックはウェンディの「気の利かない愚鈍な女」っぷりを「これでもか」というばかりに貶します(原作では夫婦の不和も重要な要素)が、デモーネイが美人すぎ、また行動も機知に富んでいるので「気の利かない女」要素を全く感じさせません。ダニーに至っては終始口元の緩さが気になってしまい、「聡明な少年」という印象が全くありません。キューブリックが原作を改変したのはそれなりに「意図」があり、その「意図」に最適なキャスティングをしたと感じましたが、原作至上主義者のキングが何故こんな「ダメキャスティング」を許してしまったのか理解に苦しみます。

 そのためTV版のラストシーンは、ジャックの心理描写、恐怖シーンの積み上げ、キャスティングの失敗などを挽回するための「感動ゴリ押し改悪」にか見えなくなってしまっています。管理人はこの「感動ゴリ押し」に「感動」できるほど純粋ではないようで「ふーん」で終わってしまいました。原作の穏やかで平和なラストシーンをそのまま映像化した方が、余韻が残って感動できると思います。

 そんなこんなでとってもダメダメなTV版ですが、管理人が考える「TV版のいいところ」がひとつだけあります。それは「映画版を酷評したキングが制作したTV版があまりにも酷かったため、逆に映画版の評価が高まった」点です。このTV版が制作されるまで原作ファンは映画版を「なぜ小説の通りに映像化しなかったんだ!」と酷評していました。映画版が公開時にラジー賞にノミネートされた事実もそれを物語っています。しかしこのTV版が放映されたあと、原作ファンは手のひらを返して映画版を賞賛しはじめます。つまりキューブリックの言う「小説と映画は全く違った媒体」「小説をそのまま映像化しても上手くいかくとは限らない」を原作ファンが真に理解したからです。「キューブリックはホラーのなんたるかを理解していない」と豪語していたキングは、皮肉なことに「いかにキューブリックの映画版がすぐれているか」を身を以て証明してしまったのです。最近のキングのキューブリック批判を見ても、自身が制作したTV版に全く触れないことからも、キングにとってもこのTV版は「黒歴史」と自覚しているようです。

 キューブリックファンにとって、キングのキューブリック批判なんて蚊に刺された程度にも感じません(「キューブリック批判をしない」がTV版の制作条件だったはずなので、いいかげん「うざい」ですが)し、このTV版も「冗漫で失笑もののネタドラマ」くらいにしか思っていませんが、このTV版を映画版より評価する人の意見も納得できるものですし、それを否定するつもりはありません。ですが、その「TV版を評価する層」でさえ「恐怖描写はキューブリック版が上」と評価されている現状を考えると、「キングはホラー(映画)のなんたるかを理解していない」と皮肉られても仕方ないな、と思う次第です。


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 キューブリックはこれとおなじことを『2001年…』では垂直で行いましたが、NASAは水平で実験していました。映像は水平に回転する遠心機を俯瞰(真上)から撮影したものです。最初は1分間に4回転のスピードで0.1G、次は1分間に9回転のスピードで0.5Gの人工重力(遠心力)を発生させ、どの程度人間が歩けるかを検証しています。

 映像を見る限り0.1Gではちょっとおぼつかないですが、0.5Gでは体が落ちずに床に足がしっかりくっつき、歩きやすそうに感じます。『2001年…』の小説版によるとディスカバリー号は「10秒に1回転で月とほぼ同じ重力」とあるので、この映像の表記に合わせると1分間に6回転で0.165Gとなります。0Gでの映像もありますが、体のコントロールは全く不可能です。まあこれは当然でしょう。

 しかし、こんな巨大な金属の塊がブンブンと宇宙船の船内で1分間に6回転もしているというのは、ちょっと現実離れしているような気もします。『2010年』に登場したレオノフ号のように、遠心機は船外にある方が現実的ですね。もしくは船体全体が回転するとか。そのレオノフ号船長は「危険な風車」とドッキングするのを嫌がってましたが、その意味がこの映像を見るとはっきりとわかりますね。
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アイズ ワイド シャット [Blu-ray]


 スタンリー・キューブリックの監督作「アイズ ワイド シャット」に迫るドキュメンタリー「SK13(原題)」の企画が進行中であることをVarietyなどが報じた。

(全文はリンク先へ:映画ナタリー/2017年10月22日




 記事にある「Filmworker(原題)」とは、『バリー・リンドン』でブリンドン卿を演じて以来、片腕として長年キューブリックを支えてきたレオン・ヴィタリのドキュメンタリーですが、その監督が『アイズ…』のドキュメンタリーを企画中とのことだそうです。

 1999年の公開時には全く話題にもなっていなかった「イルミナティ」とか「フリーメイソン」とかのくだらないこじつけ陰謀論を聞かされるのなら願い下げですが、真摯な考察なら傾聴に値します。『アイズ…』の制作舞台裏(主に脚本制作時)は、脚本を担当したフレデリック・ラファエルが著書『アイズ ワイド オープン』で明らかにしていますので、それを予備知識として一読していれば惑わされることはないでしょう。

 いずれにしても、期待しつつ続報を待ちたいと思います。
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