2017年05月

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NG1
『シャイニング』では「盛会じゃね!」のセリフとともに登場する。役名は「負傷したゲスト(Injured guest)」とそのまんま(笑

NG2
『バリー…』ではヴェルベットの仕立て屋役で(左から二番目)

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『時計…』ではBBC(TV局)のプロデューサー役(一番左)で登場

 キューブリック作品で複数作品出演者といえば、『現金…』のティニー、『突撃』のアーノー二等兵、『シャイニング』のバーテンダーのロイド役で有名なジョー・ターケルや、『時計…』のアレックスのパパ、『バリー…』の執事のグレアム、『シャイニング』のグレイディ役を演じたフィリップ・ストーンの名前が挙がります。それぞれが印象的な役ですし、キューブリック関連書籍でもよく採り上げられているのでご存知の方も多いはず。でもノーマン・ゲイと聞いてほとんどの人は「はて、そんな役者いたっけ・・・?」となると思います。彼の場合、全作品が「ほんのチョイ役」なのであまり話題になりませんが、上記の三役はすべてノーマン・ゲイです。中でも一瞬の出演ながら「盛会じゃね!」の名セリフと血の水割りでインパクトを残す『シャイニング』の出演が一番有名でしょう。

 キューブリックがなぜこのノーマン・ゲイを重用したのかは不明ですが、キューブリックはある時期からオーディションのプロセスを嫌うようになったそうなので、重要なキャスティング以外のチョイ役は、キューブリック独自の映画製作のプロセスに慣れている過去の出演者から選ぶようになったのかも知れません。その方が現場のコントロールがしやすいですからね。家族もよく作品内に登場(この詳細はこちら)しますが、やはりそれもコントロールしやすいからでしょう。そんなキューブリックを『フルメタル…』の伝説的日本語字幕を担当した映画監督の原田眞人氏は「コントロールフリーク」と評しています。

 まあ、こんなマニアックなネタ、飲み会なんかで披露しても呆れられるだけですが、因みにキューブリック作品の最多出演者は『2001年…』『バリー…』『シャイニング』『フルメタル…』の4作品に出演したキューブリックの三女、ヴィヴィアン・キューブリックになります。次点はこのノーマン・ゲイとジョー・ターケル、フィリップ・ストーン、それに『時計…』『バリー…』『アイズ…』に出演したキューブリックの義長女、カタリーナ・キューブリックです・・・ってやっぱりマニアックなネタですね(笑。
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リシェン
マリサ・ベレンソンと違う「可愛い美しい」タイプのリシェンを演じたダイアナ・コナー。

 バリーが軍を脱走した際、ひと時の宿と安らぎ得るためにこのドイツ人夫人、リシェンと一時期を過ごすことになりますが、実は原作とかなり違います。原作ではバリーがイギリス軍将校と身分を偽るための、精神疾患患者を装う芝居に付き合うなどかなり快活な女性として描かれています。おそらくキューブリックはこの「精神疾患患者を装う芝居」がレイティングで問題になるだろうと判断して、映画では「ホモ将校が沐浴中にその軍服を奪う」というシチュエーションに変更したのではないか、と推察しています。この件に関してキューブリックは

 そこでの問題は、バリーをどうやってイギリス陸軍から解放させるかということだった。それを描いた本の部分は全く長ったらしくて複雑(※戦闘で重傷を負ったフェーケナムと、殴られ怪我をしたバリーがリシェンの家で療養し、傷の癒えたバリーが熱でうなされうわ言を言うフェーケナムを真似て入れ替わり、ドイツ軍に取り入ると言う算段)だった。2人の同性愛の将校の場面の機能は、バリーが脱出するより簡単な方法を提出することだった。これも小説とは違う道を通って、小説と同じ終点へ行き着いている。バリーは書類と、彼に自由への道をもたらすイギリス将校の制服を盗む。この場面は全く説明的だから、喜劇的な状況が作者(※自分のこと)の意図を隠す助けになる。

(引用先:ミシェル・シマン著『キューブリック』※は筆者補足)


とインタビューに応えていますが、「精神疾患患者を装う芝居」を避けたかったのもその一因ではないでしょうか。

 映画ではロウソクの明かりに照らされた非常に繊細で美しいシーンですが、初めはフェーケナムと名乗っているのに、別れ際には本名の「レドモンド(レイモンド)」とバレてしまっているというのは、例のキューブリックの「わかりにくいギャグ」ですね(笑。あまりの映像の美しさに笑うタイミングを失してしまうのですが、それもキューブリックらしいと言えば言えるでしょう。

 ところで、この『バリー…』ではレディ・リンドンを演じたマリサ・ベレンソンの気品ある美しさばかり語られるのですが、個人的にはこのリシェンを演じたダイアナ・コナーの方が好み。初めて『バリー…』を観たとき、あっさりお別れしてしまう展開に「なんてもったいない!」と思ったものです。

 そのダイアナ・コナーは70歳を超えた現在も女優として主にテレビで活躍中だそうです。
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 歌詞を調べたところ特にキューブリックは関係なく、ただ「Shining」(イケてる、くらいの意味?)と言いたいだけちゃうんか!と(笑。サビは「Stanley Kubrik but motherf*cker I'm shining (スタンリー・キューブリックだ、くそったれ!俺はイケてる)」という感じでしょうか。まあタイトルがタイトルなんで、PVも当たり前のようにキューブリック感満載になってます。いちいち指摘はしませんが、それなりにオマージュはしてますね。
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47669d14

Cannes Film Review: ‘Filmworker’

Leon Vitali, who left acting to be Stanley Kubrick's right-hand man, is the subject of an arresting cinemaniac documentary.

〈以下略〉

(全文はリンク先へ:Variety/2017年5月19日




 今年のカンヌ映画祭でキューブリックの新作ドキュメンタリー『フィルムワーカー(Filmworker)』が上映されたようです。詳細はまだわかりませんが、記事によるとレオン・ヴィタリの証言を中心にしたドキュメンタリーで、出演者にはライアン・オニール、マシュー・モディーン、ダニー・ロイド、リー・R・アーミーなどの名前が挙がっています。現在のインタビュー出演としてはオニールとアーミーは確実で、その他はライブラリー出演か否か不明です。IMDbにも情報が上がっています・

 レオン・ヴィタリは『バリー…』以降のキューブリックを一番よく知る人物なのでその証言には興味があります。特典映像としてボックスセット等に収録されるのを期待したいですね。
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 『2001年…』に登場したコンピュータ、HAL9000ののPOV(主観ショット)に使われたレンズ。英語版wikiには「HALの主観ショットはフェアチャイルド・カーティス社の160度ウルトラワイドレンズ」となっていますが、どうやらこれは間違いで、ダグラス・トランブルやアンソニー・フリューインによると、ニコンの1:8 f=8mm 魚眼レンズが使用された(詳細はこちら)というのが正しいようです。

2001_sketch_sm
※HALのPOVショット

 確かにHALの主観ショットは円形にトリミングされた完全な「魚眼」(円周魚眼というそう)ですので、フェアチャイルド・カーティスの超広角レンズのように「広角」ではありません。ではこのフェアチャイルドのレンズはどのシーンで使われたのかというと、遠心機でのプールのランニングのシーンやポッドベイでの相談シーンに使われたようです。

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※遠心機のドリーショット用のカメラにマウントされたフェアチャイルドのレンズ

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※ポッドベイのショット。天井が歪んでいるのがわかる。

 ニコンの魚眼レンズの解説はこちらにあります。作例の写真はまさに「HALの見た目」です。キューブリックは同じレンズをHALのプロップに仕込んでいます(その記事はこちら)が、当然ですがそれはカメラにはマウントされていませんので撮影はできません。それでもキューブリックは同じレンズにこだわった・・・(笑。まあ、HALの目がアップになるシーンが何度も登場するので、レンズマニアが見れば種類がわかってしまうのかもしれませんが、細かいところまで徹底的にこだわるキューブリックの「こだわり主義者」っぷりがよくわかるエピソードですね。
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