『2001年…』の準備段階で、ディスカバリー号の推進システムに小型の核爆弾を宇宙船後部で連続して爆発させ、それを緩衝装置を取り付けたディスクで受け止めて推進力を得るというオリオン(オライオン)計画の案が検討されていました。上記はその推進システムを搭載したディスカバリー号を、CGで再現した動画です。クラークはこの件について
『2001年』の仕事にとりかかった時期、ちょうどオライオン文書の一部が機密解除になり、プロジェクトの消滅に憤懣やるかたない科学者の手で、文書はわれわれのもとにもとどいていた。原子力パルス・システムが活動するところを描くのは胸おどるアイデアのように思え、何枚ものデザイン画が描かれた。だが、一週間かそこらで、スタンリーは、一分間に二十発の割合で原子爆弾を爆発させながら、地球からポンポンと飛び立っていく図は、少々おどけすぎているという結論を出した。加えて ─ 『博士の異常な愛情』のフィナーレを思い出せば ─ 彼が映画の題名のとおりに生き方を変え、原爆を本当に愛するようになったのではないかと、多くの人びとに見られるかもしれない。こうしてオライオンは放棄され、いま映画と小説のなかに唯一残っているのは、その名前だけである。(※スペースシャトル「オリオン3号」の事)
(『失われた宇宙の旅2001』より)
と、その経緯を語っています。再現された動画をみれば、確かにキューブリックの言う通り滑稽なのが分かりますね。最終的には熱核反応炉を利用したプラズマ推進という案が採用され、映画では推進装置の使用が終わり、慣性飛行状態からの描写となりました。上記動画のリンク先には「オリオン・ディスカバリー号」の当時のスケッチ画もありますので、興味のある方は是非どうぞ。