2013年11月

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 前作『マラヴィータ』から180度方向転換した新しい担当作品『ROOM237』が2014年1月25日(土)より全国順次公開されます。

 20世紀最高の巨匠スタンリー・キューブリックの『シャイニング』を徹底分析するドキュメンタリー映画。とてもとてもレアな作品です。ある1本の“映画”を題材にしたドキュメンタリー自体、かなり珍しいのではないでしょうか。これも謎多き傑作『シャイニング』だから成立するのですが。

 この『ROOM237』を宣伝するにあたり、実はとても大きな条件があります。本作の劇中では当然のごとく『シャイニング』の映像がたくさん使われており、コマ送りや画面分割など好き勝手に検証しています。また、キューブリックの長編デビュー作『恐怖と欲望』から遺作『アイズ ワイド シャット』までの全作品の映像を引用しています。劇中に登場するこれら映画の映像およびスチールをポスターや予告編などの宣材に使用できないという、宣伝マン泣かせのしばりがあるのです。

 ただ、この条件を逆手に取り、“見せない”“伝えない”ことが、本作の宣伝コンセプトとも言えます。ある5人のキューブリック研究家(『シャイニング』マニア)が大胆かつ奇抜に繰り広げる、『シャイニング』論。あらゆる映画ファンの知的好奇心を刺激する作品です。

 伝説の恐怖映画『シャイニング』に残された、想像もつかない壮大な“ミステリー”とは――?ぜひ劇場で<237号室>の扉を開いてみてください。

<『シャイニング』を読み解くキーワード>
1.オーバールック・ホテル
2.カルメット
3.先住民
4.タイプライター
5.ホロコースト
6.存在するはずのない窓
7.双子の姉妹
8.ダニーの三輪車
9.アポロ計画
10.スティーヴン・キング
11.ルームナンバー237

(cinemacafe.net/2013年11月29日)




 もちろんワーナーやキューブリックサイドが宣材にキューブリック作品のビジュアルの使用許可など出すはずがありませんね。上記の記事では「好き勝手に検証」としていますが要するに「デタラメのオンパレード」です。アメリカ公開時のポスターはこのデザインです。これだけ見ても、この映画がいかなるものなのか、想像がつくというものです。「『シャイニング』のドキュメンタリー」となっていますが、『メイキング・ザ・シャイニング』のようなものを想像していはいけません。正確には「『シャイニング』に関する根拠の無い妄想とこじつけを並べる過程のドキュメンタリー」ですので、その点は間違えないように。

 情報によれば現在も存命である当時のスタッフのインタビューや取材、映画で使用された小道具や衣装の調査等、一切していないそうです。あったとしても『メイキング…』の映像を恣意的に引用する程度でしょう。当時スタッフのインタビューなら英語ですがこちらにあります。貴重な証言が満載で、資料性の非常に高いこれこそドキュメンタリーです。しかも無料。まあ、こんなゴミ映画と比べるべくもありませんね。

 とにかく、こういった映画は興行的に失敗し、二度と製作されて欲しくはないです。マニアがお遊びでネットやる分にはまあ構いませんが、それを映画にして公開し、お金をふんだくるという行為はキューブリックの知名度を利用した詐欺と言っても構いません。その内DVDかBDになるんでしょうが、そのたびにここでしつこく批判したいと思います。最近キューブリックのファンになった方やライトなファンが誤解や勘違いをしてしまわないように。
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 伝説の映画監督スタンリー・キューブリックが脚本を執筆したが未製作に終わったという、フランスの英雄ナポレオン一世を題材にした作品。この作品をスティーヴン・スピルバーグがテレビ・ミニシリーズ化。監督にレオナルド・ディカプリオ主演『華麗なるギャツビー』(13)のバズ・ラーマンの名前が挙がっている。

 今年のカンヌ国際映画祭でフランス滞在中にスピルバーグが製作を発表したという同作。Deadlineによると、まだ初期段階の話だそうだがスピルバーグはラーマン監督に狙いを定めているという。同作は米HBO局でミニシリーズとして製作される予定だが、製作時期など詳細は現在不明。

 フランスのテレビ番組に出演したスピルバーグは、キューブリックにとって夢の企画だったと話していたという。1971年に映画製作会社の幹部に書簡を送り「最高傑作になる」と太鼓判を押したキューブリックだったが、製作費が下りず、製作を断念した作品だそう。キューブリックは同年、『時計じかけのオレンジ』が欧米で公開。以後、『シャイニング』(80)や『フルメタル・ジャケット』(88)などの話題作を世に送り出した。2001年作『A.I.』は1999年に他界したキューブリックからスピルバーグが引き継いだ作品だ。

 ナポレオンを題材にした作品は他にもこの11月に、米ワーナー・ブラザーズが映画化を発表。同作はフランス映画『ハートブレイカー』(11)のジェレミー・ドネルが脚本、『スノーホワイト』(12)のルパート・サンダースが監督に決まっている。

 今やアメリカのテレビ・ミニシリーズとなれば映画に匹敵する規模と豪華さ。キューブリック、スピルバーグ、ラーマンの3者の名前が揃えば、話題性も相当なるもの。ラーマンが監督に決まれば、HBO局が作品の製作に早急に動き出すだろうと、Deadlineは見ている。

(アメーバニュース/2013年11月27日)




 バズ・ラーマンですか。最適な人選かどうかはちょっとわかりませんが、無難な線ではあります。まあ製作にヤン・ハーランを始め旧キューブリック組がどこまで参加できるのか、どこまで製作に関与できるのかが重要ですね。何にしても実現させる事を期待しています。日本だとDVD化されるまで観れないかもしれませんけど。


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Vivian Kubrick, reclusive daughter of film great Stanley, turns up at anti-government Alex Jones rally

(THE RAW STORY/2013年11月27日)




 何やってんだヴィヴィアン・・・。キューブリックとその三女、ヴィヴィアンとの関係が上手く行っていなかったのはなんとなく知っていたのですが、サイエントロジストになったあげく、反政府主義者アレックス・ジョーンズの反政府集会に参加して気勢を上げている映像を目にするとは・・・。ビデオを見れば分かるように、新興宗教や特定の団体の支持者独特の風貌としゃべり方をしていて、かつてのヴィヴィアンの愛らしい面影は全く感じられません。

 キューブリックは生前、関係修復の為にカリフォルニアに逃げ出していたヴィヴィアンに40ページにも渡る手紙を書き、『アイズ…』の製作に参加して欲しいとのオファーもしたそう。でもその努力も虚しくキューブリック本人の葬儀には参列したものの、2009年にガンで亡くなった姉のアンヤの葬儀には参列もせず、家族の溝は深まるばかり。現在では母親のクリスティアーヌも義姉のカタリーナも匙を投げてしまっています。

 それもこれもヴィヴィアン次第。キューブリックの寵愛ぶりが裏目に出たと言えばそうかも知れませんが、それだけを原因に求めるのは違う気がします。実際姉のアンヤは問題なかった訳ですから。彼女は昔からキューブリックの家族の中では一番有名でしたから、怪しげな連中のいいカモだったのでしょう。ハリウッドという環境も災いしたのかも知れません。いずれにしても、なんとか家族と、特に母親のクリスティアーヌとの関係修復を願ってやみません。
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ブロードウェイにあったリアルト劇場でほぼポルノとして公開中の『恐怖と欲望』。

 キューブリックの劇場用映画処女作『恐怖と欲望』。キューブリックはこれを「アマチュアの仕事」とし、できるだけ多くのプリントを自費で購入し封印してしまった。作品の出来に満足できなかったから、というのが理由だ。しかしこれは本当にそうなのだろうか?また、それだけの理由だったのだろうか?今回はそれを検証してみたい。

 現在、DVDやBDなどで簡単に観る事ができる『恐怖…』だが、観ていただけたらわかるように、キューブリックが忌み嫌うほど悪い出来とは思えない。人間の陰と陽をそれぞれ対照的な二人のキャラクターに投影するというアイデアや、フィルム全体を覆う鬱屈した雰囲気、紅一点の口をきけない少女が醸し出すエロスと死という末路は十分キューブリック的で、次作『非情…』よりも完成度は遥かに高い。

 実際批評は悪くなく、いくつかの批評を抜き出してみてもバラエティー誌は「洗練された戦争ドラマで、新鮮なカメラ使いと詩的な会話がすばらしい」と高評価。ニューリーダー誌はキューブリックを「細かいクローズアップを通して、暗い森の中の植物の葉や太陽の輝きを写実的に描写する。非常に才能溢れる新人」と好意的だ。

 また、ギルド劇場での初公開翌日の1953年3月31日のニューヨークタイムスに掲載された広告を見ても、性的な匂いはありつつも、兵士の写真をビジュアルに使い、戦争映画である事は伝わるようにはしてある。(ただ、引用先のサイトの作者は批判的だ)

 しかし、何度か新聞広告を打ってみるも、単館で、しかも名もなき新人監督の「芸術映画」に人が集まるはずはなく、ギルド劇場での上映は約1ヶ月という短い期間で終了する。すると直後の5月11日、ライフ誌が『恐怖…』に出演していた女優、ヴァージニア・リースを取り上げ「沈黙のヴァージニアを発掘、小さな映画は大きな発見を生み出した」との記事を掲載する(1953年5月11日号P122P125)。

 この記事に目をつけた興行主、ジョゼフ・バースティンは他に恣意的にライフの記事を引用、ポルノまがいに宣伝し、『The Male Brute』(1951年公開の仏映画でポルノではない。詳細はここで)との二本立てとして仕切り直し、6月12日からロキシーシアターで上映を開始、やがて小規模ながら全米で公開される。

 キューブリックが自費と借金をつぎ込み、映画に対する熱い情熱を傾け完成させた『恐怖と欲望』。しかしキューブリックの熱意とは裏腹に映画業界や一般の観客の反応は一部を除いて冷ややかなものだった。結局二番館、三番館やドライブインシアターなど、そのフィルムは場末の映画館へと流れ、ほとんどポルノ映画として二本立ての内の一本として上映されるという屈辱を味わう事になったのだ。

 そういう経緯からか、キューブリックはこの作品を『非情の罠』以上に忌み嫌い、封印してきた。映画としての芸術性やキューブリックの目指した映像表現など、遥かに『非情…』より完成度が高いのにそうした理由は、自作の末路を屈辱的に感じていたからなのだろうか。

結論:キューブリックが『恐怖と欲望』を封印した主な理由は、初公開のギルドシアター以降、ポルノとして公開されたという過去を知られたくなかったためだと推察される。自作の未熟さも理由のひとつではあるが、その未熟さはたびたびインタビュー等でコメントしていたのに対し、ポルノとして公開された事実に一切触れていないという事実からも、このトラウマの根の深さが伺える。

 キューブリックは巨匠となってから『ブルー・ムービー』や『夢小説(アイズ ワイド シャット)』などポルノ的な映画を撮りたがっていた。それは自身が意気込んで大まじめに創った処女作をポルノにされてしまった遺恨を晴らすための、キューブリックなりのリベンジだったのかも知れない。

【『恐怖と欲望』上映記録】
都市        劇場        上映     上映期間
マンハッタンNY  ギルド       アート系   1953年3月26日(試写)
マンハッタンNY  ギルド       アート系   1953年3月30日〜4月28日
???       ロキシー      一番館    1953年6月12日〜?
ペンシルバニアPA メーカー      アート系   1953年7月25日〜?
マンハッタンNY  リアルト      三番館    1953年8月7日〜?
ブルックリンNY  ボーグ       アート系   1953年9月2日〜16日
アストリアNY   カメオ       三番館    1953年12月16日〜?
マディソンWI   マディソン     一番館    1953年12月15日〜18日
レッドバンクNJ  イートン      ドライブイン 1953年12月30日
ウォータールーIA RKOオーフィウム 一番館    1954年1月6日〜9日
ブルックリンNY  ボーグ       アート系   1954年1月24日〜26日※
サンアントニオTX アート       アート系   1954年2月5日〜11日
マディソンWI   マジェスティック  二番館    1954年2月22日〜25日
ヒューストンTX  アバロン      アート系   1954年3月26日〜?
ウィスコンシンラピッズWI プレイス      一番館    1954年7月6日〜7日
エルパソTX    ヤンデル      三番館    1955年4月1日〜2日
ロサンゼルスCA  ステート      一番館    1955年7月13日〜26日
エルムズNY    エルムズ      ドライブイン 1955年10月19日〜25日

※リバイバル上映

▼この記事の執筆に当たり、以下のサイトを参考にいたしました。
Fear and Desire
※尚、上記のサイトは『恐怖…』には72分版も存在すると主張している。(DVD/BDは61分)これについては改めて検証したい。
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『恐怖…』のポスターでポルノ男優のように扱われたフランク・ヴィラール(右)。

 全く稼がなかったキューブリックの劇場用映画第一弾『恐怖と欲望』と、二本立てで公開された『THE MALE BRUTE(野生の男)』ですが、LACMAで展示されたこのポスターでは「A Story of SIN,SEX and PASSION!(罪とセックスと情熱の物語)」とまるでポルノのように扱われています。ところが別の広告によると「The Story of a FRENCH PROSTITUTE ... and(フランスの売春婦の物語、そして・・・)」となっていますので、どうやらフランス映画のようです。

 調べてみると『THE MALE BRUTE』だけの広告を発見。出演俳優はMadeleine RobinsonとFrank Villardであった事が判明、ここまで来るとあとは簡単です。IMDdでこれを見つける事ができました。フランスでの原題は1951年公開の『Le garcon sauvage』、日本では『海を見た少年』としてVHS化された(劇場未公開)名匠ジャン・ドラノワ監督の作品です。

 ここに短い映像がありますが、ストーリーは「シモンは母親マリー(売春婦)に引きとられてマルセイユに戻ったが、キザな男ポールと、母の気ままな生活ぶりに反抗し・・・海の生活にあこがれる、多感な少年の姿を生き生きと撮った名匠ドラノアの作品」と、全くポルノではありません。原題を訳せば「野生児」となり、英題の『野生の男』は間違いじゃありませんが、「男」とはポールを指すのではなくシモン少年を指しているのであれば、『恐怖…』と同様、完全にプロモータ側のポルノへのミスリード戦略である事がわかります。

 この作品も『恐怖…』と同様、ジョゼフ・バースティン社が配給しています。つまり、当時キューブリックの後見人的役割を果たしていたジョゼフ・バースティンが、思うように稼がなかった『恐怖…』と『海を見た…』を抱き合わせ、ライフの記事にヴァージニア・リースが取り上げられた(1953年4月26日号のP122P125)のを利用し、(バースティンがライフ誌に記事にするよう持ちかけた可能性もある)映画には登場しないリースの半裸をビジュアルにした広告を制作、両作品をほとんどポルノとして上映し、なんとか出資金を回収しようとしたという経緯が想像できます。

 当時25歳のキューブリックは自作のこの末路をどう感じたんでしょう。このような屈辱的な経験をしたキューブリックが、自作の権利を頑なに守ったり、自作の広告の出稿状態を常にチェックしたりする姿を我々は異常だ、偏執狂だと笑えるでしょうか?そういう無知や無理解に一切反論しなかったキューブリック。せめてファンを名乗る我々くらいその心中を察し、理解してあげたいものです。
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