2013年07月

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 LACMAで開催されていたキューブリック展を紹介していた動画がアップされていますのでご紹介。Part1から3まであります。ここでも触れましたが、キューブリック展の日本開催はまず不可能でしょうから、アップして頂いた方に感謝しつつ、堪能いたしましょう。
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kubrick-exhibit
※2012年11月からロサンゼルスのLACMAで開催された『スタンリー・キューブリック展』

Stanley Kubrick at LACMA was popular, but not like Tim Burton
(Los Angels Times/2013年7月10日)




 LACMAで開催されたキューブリック展ですが、242日間の開催期間中の来場者は24万3792人だったそうです。ティム・バートン展はそれより短い135日間で約36万人を集めたそうですから、ちょっと物足りない数字ですね。原因は展示物の一部が若年層に向いていなかった点を挙げていますが、これはしょうがないですね。キューブリック作品にエロはつきものですから。

 こういったシビアな数字を突きつけられると日本での開催はかなり難しいでしょう。しょうがないので当分はコレで我慢するしかなさそうです。
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バリーリンドン [Blu-ray](amazon)


 未だにネットの各所で議論が絶えないBDのアスペクト比問題ですが、今回は『バリー・リンドン』について検証してみたいと思います。

 『バリー…』の撮影時(オリジナル)アスペクト比ですが、様々な資料から撮影サイズが1:1.77で決定されたようです。それによってキューブリックの元アシスタントであるレオン・ヴィタリがこのサイズでBD化するようワーナーに指示したという事です。レオンはワイドTV【16:9】(1:1.78)≒1:1.77なのでピラーボックスなしで問題ないと判断したようですが、この決定は様々な波紋を呼んでいて「映画館で確かに1:1.66で観た」という証言が後を絶ちません。するとキューブリックが映画館に「原則1:1.66で上映せよ」という指示書が発見されてしまいした。この事から現行のBDの【16:9】(1:1.78)は映画公開時をワイド化の判断の基準とするなら、NGという事になります。

 この事実をどう受け止めるか、それは個人の判断によるでしょう。撮影サイズのフルサイズが1.77というなら【16:9】の1.78でも大して違いはないので構わない、という人もいれば、原則1.66なら1.66以外あり得ないという人、様々だと思います。ただ、この事実は別の問題を浮かび上がらせています。

 それは「撮影時が1:1.77なら、DVDのアスペクト比はどこから来たのか?」という問題です。DVDはヨーロッパビスタよりも更に幅の狭い1:1.58くらいで、しかも天地がかなり高いです。(DVDとBDの比較画像はこちら)しかもこの記事によると『バリー…』はワーナーにはアンサープリント(現像所からの1番プリント)しか残っていない事が判明しています。

 ここからは仮定で論を進めてみますのでご了承を。その現存するアンサープリントが1:1.77だとします。ネガの紛失がどの時点なのかわかりませんが、DVD化の時点ではネガが存在し、それは1:1.58であったとします。そのネガを用いてDVD化し、その後に紛失したのだとしたら・・・。つまりDVDの、あの天地の高い映像はDVDの中にしか存在しない事になります。DVDの解像度からフルハイビジョンであるBDの解像度に高精細にアップするのは事実上不可能です。仕方ないのでBDは1:1.77のアンサープリントから起こしたのだとするなら、今後DVDに収録されたあの天地の高い1:1.58映像がBD化されるのはオリジナルネガが見つからない限り絶望的、という事になります。これがこの記事の「ファンならDVDも所持すべき」(保険の意味で)という言葉の真意です。

 ただ、これらは全て仮定の話であり憶測ですので、根拠は全くないです。しかし可能性はゼロではないと思います。何故ならこう考えると『バリー…』以外は全て上映サイズ=BDサイズとなっているのに、どうしてワーナーやレオンはキューブリックの遺志に反して1.77をBDに適用しようとするのかの説明がつくからです。つまりBD化できるフィルムは1.77しかないからどうしようもない。天地がこれ以上あるフィルムは存在しない、という事です。そして傍証がもうひとつ。キューブリック作品のBD化で一番遅かったのは『バリー…』なのです(『ロリータ』もですが)。つまりギリギリまでオリジナルネガを探したが見つからず、仕方ないので1.77のアンサープリントでBD化した、という経緯が推測できます。

 さらにこれはあくまで参考ですが『バリー…』を編集作業中のキューブリックの写真が残っています。これを見て1:1.77で編集しているように見えるでしょうか?そもそも1:1.77で撮影されたという話を信じていいものなんでしょうか?

 しかし繰り返しますがこれは「仮定」です。妄想レベルと言っても差し支えありません。でももし、もしもこの仮定が事実だとして、この事が公にされたら・・・多分世界中のファンからワーナーに大批判が集中するでしょうね。それをワーナーは恐れているのかもしれません。

 今後何か分かりましたら追記するか、また新たに記事として起こします。(2013年9月8日に追加記事を投稿しました)
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「How did they ever make a movie of "LOLITA"」のキャッチコピーが登場する『ロリータ』の予告編



 キューブリックは「お金にうるさい監督」だった事は数々の証言から明らかになっています。自宅で株取引をしていたという証言や、『バリー』ではロウソクの数さえ気にしてノートに付けさせたり、キューブリックの側近だったレオン・ヴィタリは「彼は芸術家だったがビジネスマンでもあった」と答えています。

 キューブリックは何故お金にこだわったか?もちろん贅沢な暮らしがしたかった訳ではありません。キューブリックは自主制作で映画を始めました。なので映画製作の資金集めの苦労は痛い程よく分かっていました。キューブリックは身なりに構わず、高級車や装飾品には目もくれず、自宅にはプールさえありませんでした。要するに持てるお金の全てを映画製作につぎ込んでいたのです。

 それは『突撃』のラストをハッピーエンドにし、映画を当てようと試みたり、自分の名前が宣伝されればそれで構わないと『スパルタカス』では脚本のクレジットに載せるよう進言してみたり、芸術家らしからぬその言動からも伺えます。そんなキューブリックが『ロリータ』に目をつけたのは、誰もがその題材ゆえに尻込みするこの映画化を成功させ「自分は稼げる監督だ」という事を示したかったのではないでしょうか。メジャー4作目の本作は、大ヒットした前作『スパルタカス』(1960)の記憶も新しい1962年に公開になっています。小説『ロリータ』はその内容から全世界で物議を醸していました。その『ロリータ』を映画化し公開できれば多大な興行収入が見込めたのです。(『ロリータ』のキャッチコピーは「我々は如何にして『ロリータ』の映画化を成し得たか?」でした)キューブリックは処女作『恐怖…』で自分の芸術性に拘るあまり興行的に大失敗し、あげくには場末のポルノ映画館に二束三文で売られるという苦い経験をしています。つまりキューブリックにとって興行成績は映画製作の自由度に直結するのです。だからキューブリックはこの『ロリータ』までは自分の芸術性を抑え、数々の妥協をしてでも興行成績に拘ったのです。

 何故そう言えるのか、その理由はキューブリックの思惑通り大ヒットした『ロリータ』の後、ハリウッドの出資者の信頼を確実な物した、と判断したキューブリックが次作の題材に選んだのが幼い頃から興味を持っていた核戦争(『博士…』)とUFO(『2001年…』)だからです。キューブリックは生まれてから20代半ばまで住んでいたニューヨークから引っ越ししたがっていました。それは本気で核攻撃の可能性を心配していたからです。また『2001年…』に多大な貢献をしたアーサー・C・クラークはキューブリックが本気でUFOや異星人を畏れていたことに驚いた、という旨の発言をしています。また1950年代には日本のSF映画を取り寄せてまで観ていたそうです。

 撮りたい映画を撮ってその二作ともヒットさせたキューブリック。この頃のキューブリックは撮りたい映画をいくらでも撮れる状況にありました。当然その野心は次作『ナポレオン』へと向かって行きます。でも結局この企画は様々な事情から実現しませんでした。諦めきれないキューブリックは『バリー…』を映画化します。しかし興行的に大失敗。『恐怖…』や『非情…』でお金に苦労した頃のトラウマが蘇ったとしても何の不思議でもありません。そのキューブリックがヒットを狙ったのが『シャイニング』で、その考察はこちらにまとめています。

 多少の浮き沈みはあったものの、キューブリックは高い芸術性と安定した興行成績(『バリー…』も後に再評価され、それなりの収益をスタジオにもたらしている)そして何よりも映画製作の絶対的自由をメジャー持ち続けた希有な監督です。これはキューブリック以外誰も成し遂げていません。日本ではあまり興行面や製作環境面でのキューブリックの評価は聞かれませんが、ハリウッドの名だたる監督がキューブリックをリスペクトするのはこういった理由もあるのではないでしょうか。
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Stephen Coit(IMDb)

スティーヴ・コイト(MOVIE-FAN)

 『恐怖…』でフレッチャー二等兵と敵の大佐の2役を演じた。他の出演作は『宇宙大征服』(1968)、『大統領のスキャンダル 』(1971)、『ロング・グッドバイ』(1973)、『デス・チェイス5000キロ/爆走!大陸横断大追跡』(1977)など。『ボナンザ』、『コンバット』、『ベン・ケーシー』、『逃亡者』、『FBI』などTVドラマでも活躍した。

 1921年9月27日アメリカ・ウエストバージニア州出身、2005年1月21日死去。享年83歳。
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