2013年02月

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 ・・・正直言って、この動画を紹介するのはものすごく気が引けるのですが、キューブリックファンを自認する管理人も大爆笑だったので、懐の広いファンなら許していただけると思い、紹介します。

 この動画を作ったのは日本の方だと思いますが、こういったパロディのセンスは日本人ってすごいな、と思います。キューブリックのパロディってけっこうあるのですが海外のはどれもストレート過ぎて面白くないんですよね。その点これは・・・クオリティが高すぎます。まさにこの発想はなかった、ですね。脱帽です。
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 『博士…』で、タージドソン将軍とデ・サデスキー大使の間で始まったケンカを戒めるマフリー大統領の台詞。一般的に『博士…』の名台詞としてよく取り上げられるものの一つなのですが、字幕だと面白さがイマイチ伝わりません。

 それは原文を当たれば分かります。つまりけんかは「Fight」最高作戦室は「War Room」なので、意訳すれば「諸君、戦争してはいけない!ここは戦争部屋だ!!」と矛盾した言葉で争いを戒めようとする大真面目な大統領が可笑しいという意味なのです。

 キューブリックは『博士…』について「字幕スーパーだと面白さが削がれる映画」と評しています。この台詞はその最たるものかもしれませんね。
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 キューブリックの妻、クリスティアーヌ・スザンヌ・ハーランの叔父であるファイト・ハーランがナチ政権下で最後に監督した映画が、このフルカラー超大作『コルベルク』だ。あまりにも当時の生産力の無駄遣いなこの映画、当時のドイツの技術水準の高さはご覧頂ければ分かる通りだが、それよりもゲッペルスの暴走ぶりが興味深かったのでキューブリックとは直接関係ないが取り上げてみたい。

 すでにドイツの敗色が濃くなっていた1943年冬、ナチの宣伝相ゲッペルスは超大作の製作を指示する。強大なナポレオン軍に対し、戦力に劣るプロセイン軍がコルベルクにおいて勇猛果敢に戦い抜いた史実を映画化する『コルベルク』だ。この映画にエキストラとして参加させるため、ゲッペルスは実際各地で激戦を戦っていたドイツ兵18万3千人を呼び戻し、5000頭もの馬を動員したそうだ。その際に兵士に「兵士達は前線で戦うよりもこの映画に出る方がずっと重要なのだ」「我々が死んでもこの映画は生き続けるのだ」と説いた。だがその当地、コルベルク要塞はソ連軍によってすでに陥落したも同然だった。

 1945年4月17日映画は完成し、試写の日を向かえた。試写が終わるとそこにいた部下達の方に向き直り「これから100年後に君たち自身の功績を描いた同じような映画がつくられるだろう。諸君、その映画に登場したくはないか。100年後に映画の中に蘇るのだ。素晴らしい作品になることだろう。その為には、今堂々と振る舞え。さあ、最後まで立派にやりとげるのだ。100年後、諸君がスクリーンに現れた時、観客にヤジを飛ばさせないためにも」と演説。だがこの二週間後、ゲッペルスは妻と幼い子供達とともに総統の地下壕で自殺する。

 結局ナチズムという教義にすがるしかなかったゲッペルスらしい話ではある。本人にとってはこの映画を完成させることこそが、ナチズムという教義を未来へ繋ぐ最良の手段だと考えたのだろう。だからこそ兵力を削減してまでこの映画の完成にこだわった。ゲッペルスの願いはこの映画と共に未来へと託されたのだ。

 だが残念ながらその夢は叶わなかった。ゲッペルスの最大の誤算は映画というメディアの変質だろう。TVやインターネットが登場し、情報は映画やラジオによって一元的かつ一方通行に送りつけるものではなくなり、あるとあらゆるルートで一般市民に届けられるようになった。そのため特定の思想や情報の伝達手段としての映画の役割は限りなく小さくなり、今では単なる大衆娯楽の一つとなってしまった。現在この映画を観ても、今の観客にはゲッペルスの望んだようにナチの教義に共鳴するどころか、単に古い映画としか映らないだろう。

 さて、当然ナチスドイツの崩壊を予見していたであろうファイト・ハーランは、この当時何を思ってこの映画を撮っていたのだろうか。終戦後の身の振り方だろうか。それともゲッペルスの言葉を頑に信じていたのだろうか。そして、長年に渡ってナポレオンの映画を構想していたキューブリックは、ナポレオン戦争を扱ったこの義理の叔父の映画を観たのだろうか。もし観たのだとすれば、その感想を是非知りたいものだ。

▼この記事の作成に当たり、以下の動画をを参考にさせていただきました。
映画「コルベルク」ゲッペルス伝説
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6-cm

 邦題の『時計じかけのオレンジ』では重要でないので軽視されているが、実はちゃんと意味のある『A Clockwork Orange』の『A』について検証してみたい。

 もちろん不定冠詞の『A』なのだが、アレックスの『A』という意味も含んでる。原作には良い子のふりをするアレックスが『A』というイニシャルの入ったセーターを来て昼間の街に出かける、というシーンがある事からそれが伺える。またこのタイトル名自体「『A』が『Clockwork Orange』になってしまう」という暗喩にもなっている。

 その事はポスターなどで一番ポピュラーなデザイン、すなわちアレックスが三角形の中からノズを突き出して笑っている構図のものでも確認できる。この三角形自体が『A』を表していて、それはアレックスの『A』であり、また『A Clockwork Orange』の『A』としての役割も果たしている。そうなると必然的に『Clockwork Orange』のロゴは『A』の下部に配置するのが正しいという事になる。

 ポスターや広告など、この意図が厳密に反映されていない場合も多々あるので、このアイデアに気付いていない人も多い。広告や広報にもこだわる事で有名なキューブリックがどこまでコントロールできていたか不明だが、この三角形の『A』の意匠を省いて『Clockwork Orange』のロゴだけ配置したり、『Clockwork Orange』と『A』を抜いて表記するのは明らかに間違い(海外のネット上ではACOと略すのが一般的なようだ)なので、そこだけは注意したい。
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The Oscar Travesties Final Results: One Shining Moment


 Grantland.comが実施した「もっとも酷いオスカーのための戦い」で、最優秀茶番劇賞を獲得したのは1871ポイントで『キューブリックが最優秀監督賞を獲得できなかった』に決定しました。

Grantland/2013年2月21日




 キューブリックがいかにアカデミー賞と縁がなかったかはここで記事にしましたが、1968年のアカデミー作品賞に『2001年…』をノミネートさえしなかったアカデミーですからね。この「アカデミー茶番劇賞」の結果は順当かと。しかも「マーティン・スコセッシが『ディパーテッド』まで最優秀監督賞を受賞しなかった」にダブルスコア以上離してのぶっちぎりで獲得。まあこの遅きに失したスコセッシ受賞の件に限らず、本当に映画好きな人にとっては茶番でしかないです、アカデミー賞は。


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