ニューヨークで開かれたコミック・コンベンションで、映画『時計じかけのオレンジ』で知られるマルコム・マクダウェルに話を聞くことができた。近年はテレビを活動のベースにしているような印象も受けるが、マルコムがキャリアを保ってきた秘訣(ひけつ)は何だろうか。
「わたしが演技を始めたころは、ある程度の競争はあった。しかし今日ほど厳しくはなかったよ。秘訣(ひけつ)といえるかわからないが、時の経過とともに自分の年齢を受け止めて、進化していくことが必要ってことさ」と同じ俳優仲間からも尊敬される存在のマルコムらしい答えだった。
これまで演じてきた役柄のどれもが個性的でアクの強いキャラクターであったことに対して「どんなに変わったキャラクターでも、わたしがこれまで演じてきたものは、自分にとっては3次元の人間なんだ。どのキャラクターも善か悪かとは判断せずに、欠点のある人物として演じてきた。いつも人間性とユーモアを持つ役柄を選択してきたつもりだからね」と深い考察とともに語ってくれた。
出世作『時計じかけのオレンジ』に話が及ぶと、意外な答えが返ってきた。「アレックスを演じた後の10年間、実はあの役を嫌っていたんだ。あの作品を観ようとも思わなかったし、人前であの映画を語ることさえも嫌だった。それは、人にいつもあの映画の話をされ、与えられた新しい映画でわたしが演じるキャラクターは、すべてアレックスをイメージして作られたものばかりだったからね。だが、今となっては自分もそれを受け入れて感謝しなければならないと思えるようになってきたよ。あの作品は誰がどう観たって傑作だからね」
最後に、スタンリー・キューブリック監督について「キューブリック監督に関しては、わたしがあの映画に出演しなくても大成功していた人だよ。わたしと仕事をしたときには、すでに映画『2001年宇宙の旅』を製作していたからね。若くて野望を持っていたあのころのわたしは、彼が与えてくれた役柄をしっかり受け止めることができたと思っているよ」と感慨深げに語ってくれた。
主役、脇役、ゲスト出演と多忙な俳優人生を送るマルコム。今後も彼の活躍をスクリーンで観たいものだ。(取材・文:細木信宏)
(シネマトゥデイ映画ニュース/2008年6月17日)
ある役が大ヒットしてしまうと、自分がその役のイメージで固定化されるのをしばらくは嫌うが、ある程度時が過ぎればそれを受け入れられるようになる・・・何度も何度も繰り返し語られる話ですね。こうなるのは分かりきっているんだから、最初っからそれを楽しむくらいの余裕って持てないものなんでしょうかね?ヒットがなければ大変な苦労する訳ですし、代表作があるだけマシだと思っている売れない役者は多いですからね。