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(初回限定生産)2001年宇宙の旅 The Film Vault collection(4K ULTRA HD&ブルーレイセット)スチールブック仕様(3枚組/豪華封入特典付)[4K ULTRA HD + Blu-ray]

内容紹介
スタンリック(注:原文ママ)・キューブリック没後25周年―。
代表作『2001年宇宙の旅』が新デザイン・キーアートで、待望の4K ULTRA HDスチールブック化!

・イギリス発のアートスタジオ「VICE PRESS」のマット・ファーガソン&フローリーによる新デザイン・キーアートにより、『2001年宇宙の旅 』がよみがえる!

・1999年3月7日、70歳でこの世を去ったキューブリックの没後25周年を追悼し、代表作『2001年宇宙の旅』が4K ULTRA HDスチールブックとして初リリース。

・日本語吹替版を収録した4K ULTRA HD&HDデジタル・リマスター ブルーレイに、特典ディスクを加えた豪華3枚組。

※ディスクは「2001年宇宙の旅 日本語吹替音声追加収録版〈4K ULTRA HD&HDデジタル・リマスター ブルーレイセット〉(3枚組)と同じです。

・新デザイン・キーアートによるスチールブックに加え、特典として、アートカード(7枚組/両面仕様)、ポスター(2枚/片面&両面)をオリジナル封筒に収め封入。

【ストーリー】
人間 vs. コンピュータの戦いを、陶酔の映像と音楽で描き出し、アカデミー賞(R)を受賞した『2001年宇宙の旅』。キューブリック(アーサー・C・クラークと脚本を共同執筆)は、有史前の類人猿から植民地化が進む宇宙へ、数千年もの時間を超越(映画史上最高のジャンプ・カット・シーンのひとつ)する離れ業をやってのけた。人類がまだ見ぬ宇宙の領域に足を踏み入れた宇宙飛行士ボーマン(キア・デュリア)は、不滅の存在へと昇華していくのだろうか。「HAL、進入口を開けろ! 」という悲痛な願いと共に、無限の可能性に満ちた未知への旅を始めよう。

【キャスト】
デイビッド・ボウマン:キア・デュリア、フランク・プール:ゲイリー・ロックウッド

【スタッフ】
監督:スタンリー・キューブリック、製作:スタンリー・キューブリック

【特典】
“2001年”という神話
キューブリックが残した遺物
キューブリックの見た未来
2001年という“未来”
“2001年宇宙の旅”の哲学コンセプチュアルアート
キューブリックの初期作品
キューブリックのインタビュー

■製作:1968 アメリカ

(C) 2008 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

※映像特典、商品仕様、ジャケット写真などは予告無く変更となる場合がございます。

【Ultra HD ブルーレイ】
●ご視聴にはUltra HD ブルーレイ再生対応機器が必要となります。
●[4K ULTRA HDを高品質でお楽しみいただくために]
4K ULTRA HDは4K解像度・HDR(ハイダイナミックレンジ)・広色域での再生に対応しています。
ご視聴には、Ultra HD ブルーレイ再生対応機器に加え、4K/HDR対応テレビでのご視聴をおすすめいたします。

(引用:Amazon「(初回限定生産)2001年宇宙の旅 The Film Vault collection(4K ULTRA HD&ブルーレイセット)スチールブック仕様(3枚組/豪華封入特典付)[4K ULTRA HD + Blu-ray]




 ディスクは以前のセット(詳細はこちら)と同じでポスターやアートカード、おそらく当時のロビーカード(映画館のロビーにペタペタ貼られた装飾用カード)の復刻版が封入されています。クリスマス向け商材だと思いますが、同シリーズで『ブレードランナー』『ショーシャンクの空に』も同時に発売されるそうです(詳細はこちら)。紙モノ追加だけでこの価格は・・・という話もありますが、スチールブック仕様は一定の需要がありますので、欲しい人もいるのではないでしょうか。限定生産品なので、お早めにどうぞ。
【ご注意】当ブログの記事は報告不要でご自由にご活用頂けますが、引用元の明記、もしくは該当記事へのリンク(URL表記でも可)を貼ることを条件にさせていただいております。それが不可の場合はメールや掲示板にてご一報ください。なお、アクセス稼ぎだけが目的のキュレーションサイトやまとめサイトの作成、デマや陰謀論をSNSで拡散する等を意図する方の当ブログの閲覧、ならびに利用は禁止させていただきます。※当ブログはネタバレありです。





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He wanted to take us places we could never have imagined, and so he imagined them for us.He is Stanley Kubrick.

He died before he could witness the century he had already made famous with 2001: A Space Odyssey.Stanley wanted us to see his movies absolutely as he envisioned them. He never gave an inch on that.He dared us to have the courage of his convictions, and when we take that dare we’re transported directly to his world and we’re inside his vision.

And, in the whole history of movies there’s been nothing like that vision… ever. It was a vision of hope and wonder, of grace and of mystery.It was a gift to us, and now it’s a legacy.

We will be challenged and nourished by that as long as we keep the courage to take his dare, and I hope that will be long after we’ve said our thanks and our goodbyes.

 彼は想像もできなかった場所に私たちを連れて行きたかったので、私たちのためにそれらを創り上げました。彼の名はスタンリー・キューブリックです。

 彼は『2001年宇宙の旅』ですでに有名になった世紀を目撃する前に亡くなりました。スタンリーは私たちに自身の映画を自分が思い描いたとおりに観てもらいたいと考えていました。彼はそれについては一歩も譲りませんでした。彼は私たちに自分の信念を貫く勇気を与えてくれました。私たちがその勇気を持てば、私たちは直接彼の世界に連れて行かれ、彼のビジョンの中に入り込むことができるのです。

 そして、映画の歴史を通じ、かつてそのようなビジョンはありませんでした。それは希望と驚異、優美で神秘のビジョンでした。それは私たちへの贈り物であり、今では遺産となっています。

 私たちが彼の勇気を受け入れ続ける限り、私たちはそれによって挑戦し続け、育まれるでしょう。それが私たちが感謝と別れを告げた後もずっと続くことを願っています。

スティーブン・スピルバーグ




 1999年3月7日にキューブリックが逝去し、その2週間後の3月21日に開催された71回アカデミー賞のオープニングで、スピルバーグがスピーチしたキューブリックへの賛辞の全文です。この時からすでに25年の月日が流れていますが、映画界においてキューブリックの存在感(と喪失感)はますますその大きさを増しているような気がします。アカデミーもそろそろキューブリックに何かの賞を贈るべきだと思うのですが、いかがでしょうか?『2001年宇宙の旅』の視覚効果賞だけなんて、その功績に比してあまりにも塩対応すぎると思うんですけどね(キューブリック作品をアカデミー映画博物館の広報に使うなら尚更)。

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おそらく生涯最後の出演になる、インディーズホラー映画『フォレストヒルズ』(公開未定)に出演したシェリー・デュバル

 『シャイニング』でジャック・トランス(ジャック・ニコルソン)の妻、ウェンディ・トランスを演じたシェリー・デュバルさんが2024年7月11日、糖尿病の合併症で亡くなりました。享年75歳でした。

 シェリーが精神疾患と糖尿病を患っていたのは当ブログでも何度かご紹介した通りですが、当人が精神疾患の治療を拒否していたのは事実のようで、そうであれば糖尿病の治療も拒否していた可能性があります(投薬程度の治療はしていたかもしれません)。晩年は歩行も困難になり、車で移動していたという記事も目にしていました。ならば、糖尿病の合併症で死去いうのはある程度予想がつく結末であり、本人が望んだ穏やかな生活での結果だとしたら、遅かれ早かれ死は彼女のすぐ近くにあったのだろうと思います。

 重度の糖尿病は精神の不調をきたすことが知られています。もしシェリーの精神疾患の原因が糖尿病によるものであれば、かなり筋の通った推察になりますが、これはあくまでも「推察」の域を出ません。過去には「『シャイニング』におけるキューブリックによるイジメのせい」などとデマが流布されたこともありますが、それは様々な事実や本人の証言から完全に否定されています。

 実際のシェリーは『シャイニング』で演じたウェンディのような「ひ弱で怖がりでオドオドしたいじめられやすい女性」とは正反対で、自立した自我を持った強い女性でした。それは女優という与えられる仕事だけではなく、自らプロデュース業に乗り出し成功を収めたことからもわかります。ですが2002年にそれらを全て放棄し、突然テキサスに引きこもってしまいました。その原因はノースリッジ地震(1994年)と兄弟の重病(ガン)と説明しましたが、これがそのまま精神疾患の原因とは考えにくいです。なぜなら時期が合わないからです。

 パートナーのダン・ギルロイ氏によれば、精神疾患は2000年代のある日突然に始まったそうで、その日以降、シェリーは目に見えない敵に怯える、指をパチパチと鳴らす、突然視界から消えるなど挙動不審を繰り返すようになったといいます。個人的には、その精神疾患による突然の精神の不調により、突発的に自死を選んでしまうことを危惧していて、それによってキューブリックに対して謂れのない批判が(「キューブリックのパワハラがシェリーを死に至らしめたんだ!!)巻き起こることを懸念しておりました。ですが、それは杞憂に終わったようです(こちらの記事を参照)。それはそれとして、人生100年時代が叫ばれる現代において75歳はあまりにも早い退場であり、非常に残念でなりません。

 謹んで故人のご冥福をお祈りいたします。R.I.P.

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画像引用:IMDb - Dr Strangelove

爆弾話はでっち上げ?

 1994年後半、映画『博士の異常な愛情』が 30周年を記念して再公開されたとき、メディアは監督のスタンリー キューブリック(元ルック誌のカメラマン)がニコンのカメラを使用して、白黒フィルムをフレームごとに個人的に修復したと伝えました。

 ニューヨーク・タイムズ紙と他の2つのニューヨークの日刊紙は、ニコンのこの修復物語を疑問視することなく報道しました。ただ 1 つ問題があります。90分の映画をスチルカメラで新品同様の状態に修復することは理論的には可能ですが、大量のフィルムとさらに多くの時間が必要になります。映画の10秒をコピーするだけで 250枚の写真撮影が必要になります。134,000フレームには536回の大量取り込みが必要です。

 しかし、それは本当でしょうか。『博士の異常な愛情』の物語はニコンにとって未知の情報であり、同社には相談されていませんでした。

 また、修復された『博士の異常な愛情』をリリースしたコロンビア・ピクチャー・レパートリーは、修復についての詳細を明かしませんでした。修復プロジェクトに近い、イギリスのハートフォードシャー州セント・オールバンズ(キューブリックの拠点)の情報筋によると、ニコンの話は完全に作り話だというのです。

 「マーティン・スコセッシがニコンの話の拡散に何らかの関与があったのではないかと考えています。ある時点で、私たちは『博士の異常な愛情』の修復にスチールカメラを使うことを考えましたが、どの程度真剣に検討したかはわかりません」と匿名を条件に情報筋は語った。「スコセッシはこのことを聞いて、インタビューで言及したのだと思います」

 オリジナルの『博士の異常な愛情』のネガは火事で失われてしまいました。しかし状態の良いインターポジは見つかりました。標準的な映画用複製機材を使用して再撮影され、新しいネガが作られ、そこから新しい劇場公開用プリントが作られました。

 キューブリックは確かにじっくりと細心の注意を要する修復プロジェクトに個人的に関わっていましたが、「長編映画をスチルカメラで修復するのは悪夢です」と情報筋は語っています。

ーエリック・ルドルフ




 『博士の異常な愛情』のオリジナルネガが紛失(焼失)したために、状態の良いプリントをカメラで一コマづつ撮影しネガを撮影。それが現在もネガとして4K化などあらゆる映像のソースになっていると信じていたのですが、どうやらそれは間違いであるようです。

 私もこの話を疑っていなかったのですが、フィルムの複製にスチルカメラが用いられる話は聞いたことがあったし、あのキューブリックだったら膨大な作業量も品質保持のためなら厭わないだろうと思っていました。ところが実際は状態の良いインターポジ(オリジナルネガから直接プリントしたポジフィルム)が見つかり、それを元にネガが作られたとのことです。

 可能性として考えられるのは、状態の悪いフィルムしか残っていないと知ったキューブリックがスチルカメラでの修復を決意し、その準備していたがインターポジが見つかったのでその作業はしなくて済んだ。だが最初の決定の話だけが一人歩きしてしまった、というものです。これは現実にもよくある話ですし、もし記事の内容が事実ならこの可能性が一番高いのではないでしょうか。

 ちなみに記事中に登場する「セント・オールバンズの情報筋」とは、キューブリックのアシスタントだったアンソニー・フリューインだと思います。彼がそう言うならそうなんだろうな、としか言えませんが、やたらと伝説化しやすいキューブリックのエピソードをこのように「現実化」してくれる彼の存在は大きいですね。

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Xで流れてきた記事の画像。出どころは不明ですが、内容から確度は高いのでは?という気がします。
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キューブリックのドキュメンタリー『ライフ・イン・ピクチャーズ』(2001年)で元気にインタビューに応えるシェリー・デュバル。

『シャイニング』や『ナッシュビル』など時代を象徴する映画での役柄で知られる女優が、20年を経て女優業に復帰した。しかし、彼女に何が起こったのだろうか?

〈中略〉

 20年以上もの間、デュバルさんのキャリアは停滞していた。 2002年の『マンナ・フロム・ヘヴン』が 最後の 映画出演で、その後、女優としてもプロデューサーとしても多彩で、大方の見方では成功したキャリアだったが、その理由は謎のまま引退した。最近彼女の名前を検索すると、最もよく出てくる質問は、「 シェリー・デュバルに何が起こったのか?」と「シェリー・デュバルはなぜ姿を消したのか?」だ。

 この根強い好奇心は 驚くようなものではない。自発的であろうと強制的であろうと、人目につかなくなるという行為そのものが、「ハリウッドの隠遁者」という比喩の核心であり、『サンセット大通り』や『何がジェーンに起こったか』などの古典映画で悲劇的な効果を出すために使われ、興味をそそり続けるからだ。

シェリー・デュヴァルも興味をそそられている。

「私はスターで、主役もやっていました」と彼女は厳粛に首を振りながら言った。 彼女は町の広場に車を停めて、チキンサラダ、キッシュ、甘いアイスコーヒーのランチをテイクアウトし、最後にパーラメントを一口吸った。彼女は声をひそめた。「みんなはただの老化だと思っているけれど、そうじゃない。これは暴力なの」

「暴力」について説明するよう促されると、デュバル氏は質問で答えた。

「本当に親切な人たちが、突然、」彼女は指を鳴らしながら言った。「あなたに背を向けたら、どう感じるでしょう? 自分に起こらない限り、あなたはそんなことは信じないでしょう。それが本当だと信じられないから、あなたは傷つくのです。」

「みんな、いつも没落の話に興味があるんだ」と、デュバルさんの30年以上のパートナーで、車の乗り降りを手伝ったり、時には家に戻ってくるよう懇願したりしているギルロイさん(76歳)は言う。デュバルさんを取り巻く憶測や噂、そして彼女の精神状態だけでなく体型についても語る彼の声には、疲れた調子がにじみ出ていた。

「インターネットでは『今の彼女を見て』『今の彼女の姿は信じられないよ』という声があふれています。有名人はみんなそういう扱いを受けます。」

 もちろん、彼が疲れを感じるのには理由がある。2016年、デュバルさんは昼間のトーク番組「ドクター・フィル」にゲスト出演したが、この珍しいテレビ出演は個人的に悲惨な結果となった。8年経った今でも物議を醸しているこのエピソードは、ギルロイ氏に知らせずに地元のベスト・ウェスタンで撮影されたもので、「数日後に町の人からそれが起こったことを知った」とギルロイ氏は語った。そのエピソードでは、デュバルさんが苦悩している様子が映し出されていた。

「私はとても具合が悪いんです。助けが必要です」と、ある動画の中でデュバルさんはフィル博士に話した 。フィル博士は「まあ、だからここにいるんです」と答えた。

 このエピソードのタイトルは「ハリウッドスターの精神病への転落:『シャイニング』のシェリー・デュバルを救う」だった。 デュバルさんは目を見開いて、2年前に亡くなった「変身する」ロビン・ウィリアムズからメッセージを受け取ったと主張したり、彼女に危害を加えようとする悪意のある力について話したりするなど、一連の奇妙な発言を続けた。この番組が公にされた目的は、精神病の人々をエンパワーし、偏見をなくすことだったが、スタンリー・キューブリックの娘ヴィヴィアンを含む多くの人が、この番組は搾取的で扇情的であると公に批判した。

 このエピソードは最後まで放送されなかったが、被害はあった。彼女の精神状態に関する疑問が浮上し、彼女はさらに内向的になった。

「彼女にとっては何の影響もなかった」とギルロイ氏は番組について語った。「ただ、彼女は変人として有名になっただけだ」

〈中略〉

 彼女の失踪は、噂されていたように、何年も前に『シャイニング』の撮影現場で受けた扱いが原因で長引いた精神崩壊が原因ではなかった。実際、彼女はロンドンでの1年間に及ぶ緊張した撮影やキューブリック氏への尊敬について、今でも良いことしか語らない。むしろ、彼女の失踪は、2つの出来事の感情的な影響によるものだと、より正確には言えるかもしれない。1つは、ロサンゼルスの自宅が被害を受けた1994年のノースリッジ地震、もう1つは、30年前に故郷のテキサスに戻るきっかけとなった、兄弟の1人が病気になったことによるストレスだ。

 これは名声の呪いによるものとも言えるだろう。有名になるだけでは十分ではなく、絶えず火を燃やし続けなければなりません。あまり長く放置すると、特に業界で女性として「年齢制限」に達し始めた場合、キャリアは衰退する。

 1982年、『シャイニング』で有名になってから2年後、 デュバルさんは自身の制作会社プラティパス(後にシンク・エンターテインメントという別の会社も設立)を設立し、子供向けテレビ番組、特に『フェアリー・テイル・シアター』を制作しました。各エピソードには、ロビン・ウィリアムズ、クリストファー・リーブ、キャロル・ケイン、バド・コート、バーナデット・ピーターズ、ミック・ジャガーなど、豪華キャストが出演しました。全体的な印象はバロック調の楽しさで、タイム誌 が「古典物語におしゃれでウィットに富んだひねりを加えた」と評した通りでした。

 「それは船長のようなものです。正しい方向に舵を取らなければなりません」と彼女はプロデュースについて語った。その豊かな創造の時間や、各プロジェクトのために行った綿密なリサーチについて語るとき、彼女の目は輝いていた。

 「素晴らしい人たちと一緒に仕事をしました。もちろん、ロバート・アルトマンにエピソードを監督してもらいました」と彼女は言う。「彼はいつも私のためにいてくれました」

〈中略〉

 しかし、『シャイニング』は、このジャンルで最も象徴的な作品の一つとなった。キューブリック氏は、アルトマン氏の『三人の女』で彼女を見て、彼女を自分の映画に起用することを思いついた。

「彼はこう言ったんです。『君の泣き方が好きだよ』」

 撮影は過酷なものだったが(キューブリック氏は俳優たちに各シーンで何百回もテイクをこなすことを要求したことで知られている)、彼女はその経験を懐かしく思い出している。 キューブリック氏とデュバルさんは休憩時間にチェスをし、撮影クルーはタバコを吸いながらビッグマックを食べながら座っていた。

 彼女は最終版を見たときにどれほどショックを受けたかを思い出した。「撮影を見ていなかったシーンもありました。廊下の端に二人の女の子がいて、二人が離れていくシーンを覚えていますか? 二人の後ろに何がいるかわかりますか? あれは怖かった、とても怖かった」

 当時の批評家たちは彼女の演技を酷評し、彼女は最低女優賞のラジー賞にノミネートされた。しかし、彼女の反応の真実味、彼女のこの世のものとは思えない雰囲気が観客の共感を呼んだ。

〈中略〉

 この弱さとオープンさ、そしておそらく純真さが、彼女に不当な扱いを受けやすくした。80年代に入るとデュバルさんの役柄は変化していった。もはや若くてほっそりとした純真な女性ではなく、より成熟した役柄に配役された。ある意味で、彼女はテレビ番組をプロデュースし、その中に演技の機会を組み込むことで、前進したのだ。

 彼女はショー『フェアリーテイル・シアター』と『シェリー・デュヴァルのベッドタイム・ストーリー』の成功に続き、1990年にディズニーのテレビミュージカル『マザーグース・ロックンライム』をプロデュースしました。そこで彼女はミュージシャンであり、サウンドトラックの一部を作曲し演奏したグループ「ブレックファスト・クラブ」のメンバーであるギルロイ氏と出会い、恋に落ちた。

 夫婦は畑に囲まれた素朴な平屋に10年以上住んでいる。 「私たちにとっては小さなオアシスです」とギルロイさんは言う。

 確かに隔離された静かな環境だ。ギルロイ氏の制作途中の絵画がリビングルームのイーゼルに立てられ、ギルロイ氏とデュバルさんが愛情深く微笑み合う古い写真が石造りの 暖炉の上のマントルピースに飾られている。周囲にはファンからの手紙が山積みになっている。

「ロサンゼルスで過ごした数年間は本当に素晴らしかった」とギルロイ氏は言う。「地震の後、テキサスに引っ越したときは最高だった。でも、娘がいろいろなことを怖がり始め、働きたくなくなったときから状況は悪化した。原因をひとつに絞るのは本当に難しい」

 かつては想像力の豊かさを称賛されていたデュバルさんは、今やその想像力に悩まされている。「彼女は被害妄想に陥り、自分が襲われていると思い込んでいました」とギルロイ氏は言う。「彼女はFBIに電話をかけようとしたり、隣人に私たちを守るよう頼んだりしていました」

「突然、いつもの調子から、このように悪化したのは、ただショックでした」と彼は付け加えた。

〈中略〉

 彼女はキャリアのハイライトについて語るのを喜んでいるが、過去のより困難な側面について話すように促されると、詳しくは語らない。

「すごいわね、見て」と彼女はベビーカーに乗せられて歩道を歩いている小さな犬を指差しながら言った。「笑っててよかったわね。私がロサンゼルスから連れてきた9匹の犬が、あそこの通りで全部死んだって知ってる?」

 ペットはデュバルさんの生活の中で常に大きな部分を占めており、現在はオウム3羽、猫数匹、そしてパピーという名の老犬を飼っている。帰宅途中に痩せたロバの群れのいる畑を通りかかると、デュバルさんはよく立ち止まって金網越しにサンドイッチ用のパンを数切れロバに与える。デュバルさんの自然界との生来のつながりが、不思議さを感じさせてくれる。

 デュバルさんは車で家に帰る途中、 時折、くすぶっているタバコを握った手を窓から出して、ロードキルに向かって身振りをしたり、くちばしのように滑稽にパチパチと鳴らしたりしていた。

時々彼女は完全に視界から消えてしまうこともあった。

(全文は引用元で:The New York Times/Shelley Duvall Vanished From Hollywood. She’s Been Here the Whole Time.




 「シェリー・デュバルに何が起こったか?」答えはこの記事にある通りです。

 記事にあるフィル博士のTVショーがネットで話題になった時、私は直感的に「これはキューブリックのせいにされるな」と思い、実際その通りになりました。『シャイニング』の公開は1980年、シェリーの精神疾患の発病は2000年代に入ってから。その間の約20年間、シェリーは女優やプロデューサーとして活躍し、2001年にはキューブリックのドキュメンタリー『ライフ・イン・ピクチャーズ』に出演して元気な姿を見せていたのはファンならよく知るところです。そんな経緯を知りもしなければ、知ろうとも(調べようともしない)しないTwitter(現X)で流れてくる情報がこの世の全てだと考える幼稚で哀れな大衆が、小学生並みの安直な思考力で「キューブリックが悪い!」「キューブリックのせいだ!」と騒ぎ散らかし、現在もなおその程度の知能を披露して恥をかき続けているのに全く気づいていないという状況が続いています。中には「時間が経過してから発症する場合もあるのでは?」などと専門家顔負けの知識をご丁寧に披露していただいた方もいるのですが、「それはどういう症例ですが?」と尋ねれば「そんなの知りません!」と逆ギレするでしょう。まあその程度、なのです。

 それに加えキューブリックを話題に出し、その内容がより刺激的であればあるほどアクセス(インプレッション)が稼げる可能性が高いというのもあり、知っていながらわざとデマを撒き散らすゾンビ達も暗躍し、いったん流布された「それっぽい嘘」は訂正するのにかなりの時間と労力を必要としてしまいます(「それっぽい嘘」の有用性に気づいたのがチョビ髭政権ですね)。ですので、こういった根も葉もない嘘(噂話ですらない)で被害者が出てしまう前に、やはり打つべき手は打っておかなければなりません。もちろん被害者とはシェリーであり、キューブリック(の名誉)です。

 繰り返しますが、記事にある通りキューブリックによるシェリーの態度は決して友好的ばかりであったわけではありませんし、時には激しくぶつかり合ったのは事実です。でもそれは「より良い作品を作る」というクリエイティブの現場ではよくある話だし、キューブリック特有の厳しさはあるにせよ、この作品が制作されたのが「昭和」であることを考えれば、特筆すべき出来事でもなかったことはこの時代を知っている人ならすぐに理解できるでしょう。

 ですが、この記事を一読し不安に感じたのも事実です。それはシェリーの「挙動不審」。もしシェリーの身に何かが起これば・・・そうなれば「キューブリックがシェリーを●した」という言説がSNS上を覆うであろうことは日の目を見るより明らかです(ここで予言しておきます)。もちろんそれは前述したように小学生並みの安直な思考力しか持たない哀れな大衆と、それを扇動しインプを稼ごうとするゾンビ達によってもたらされます。そうなった時、この記事がソースとして有用に機能することを願ってやみません。
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