キューブリックブログ記事

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dr_strangelove_tパブロ・フェロを一躍有名にした、いい加減な手書き感がインパクトを残す『博士の異常な愛情』のタイトルバック。

 キューブリック作品では『博士の異常な愛情』『時計じかけのオレンジ』の予告編の編集やタイトルバック制作を担当したグラフィック・デザイナーのパブロ・フェロ。そのパブロ・フェロがどのようにキューブリック作品に関与したか、それを語ったインタビューがありますので、そのインタビューのキューブリック作品の部分だけ抜粋してみました。



●博士の異常な愛情について

パブロ:そうです。私は(ニューヨークで)コマーシャルを作っていました。新しい編集のスタイルを作ったのが私が人気を得た理由です。それがスタンリーの目にとまりました。彼は私のCMを見て、気に入ったようです。(注:キューブリックはパブロ・フェロの前にアーサー・リプセットに予告編制作の依頼をして断られている)彼は「私はあなたのコマーシャルを気に入ってる。『博士』の予告編を作って欲しい」と言いました。彼は映画を製品のように販売できるからと言いました。私は素晴らしいと言いました。

ーだから予告編が最初だったんですね。どのように依頼が来たのですか?

パブロ:私たちは全てのキャンペーンを担当していましたが、スタンリーは私を説得して6〜7ヵ月間イギリスにとどまらせました。私は彼に「私には会社があるし、コマーシャルの仕事をしなければなりません」と言いました。彼は「あなたはここでもコマーシャルの仕事をすることができます」言いました。 彼はとても楽しいです。私はロンドンに家を持っていて、車が必要なら電話してくれと電話番号を教えてくれました。いつ電話してもすぐ来ます! スタンリーは常に私を必要とはしなかったので、私はロンドンにいる間、いくつかのコマーシャルを作りました。



 『博士…』のタイトル・シークエンスは土壇場でした。それを作る時間はあまりなかった。私がすべての作業を終えた2週間後、彼と私は話し合いました。それはスタンリーと私との会話だった。スタンリーは「人類についてどう思うか?」と私に尋ねました。私は「人類について一つ言えることは、人類が発明した機械のすべてが非常に性的であるということだ」と応えました。私たちは顔を突き合わせて、この「空中給油するB-52のタイトル・シークエンス」が実現しました。もちろんもっと性的に見えるようにできないだろうか?とも。スタンリーはこのアイデアが気に入っていました。スタンリーは自分たちが制作したモデルを使って撮影したいと考えていましたが、ストック映像を当たってみることにしました。飛行機メーカーは自分たちの仕事ぶりを非常に誇らしく思っているだろうと、私は確信しています。彼らは実にあらゆる角度から飛行機を撮影していたからです。

 飛行機同士がくっついて、上下に揺れていた特定のアングルがありました。私はそのようなものを撮影することができるかどうかスタンリーに尋ね、スタンリーはできないと応えました。ストック映像を使用してくださいと。私はストック映像を手に入れ、それをまとめ始めました。そしてその作業を終え、より細かく編集をしようとしていたとき、スタンリーはひとつの曲を持って来ました。『トライ・リトル・ア・テンダネス(ちょっとだけ優しくして)』。私は同意ましたが、驚いたのは音楽は私たちと同じことをやっていたのです! それ(メロディ)は上下に揺れていました。『ちょっとだけ優しくして』 ・・・私は編集で何も調整する必要はありませんでした。

ーどのようにレタリングを制作しましたか?

 私は通常の映画のようにレタリングをしようとしましたが、スタンリーは「パブロ、レタリングを見るのか映像を見るのか分からなくなる。両方同時に見えなければ」と言いました。私は思った。ああ、どうすればいい? 私は落書きのようなレタリングを横長や縦長で書いていたのを思い出し、それを試そうと思いました。私たちはテストをし、それは完璧でした! スタンリーは私のレタリングで画面を埋めました。これで飛行機の映像を見ることができるし、同時に文字を見ることができます。



 やらなければならないのは、すべてのレイアウトを作るということでした。最後のレイアウトを作ったとき、スタンリーは私に「あなたの名前はどこですか?」と尋ねました。唯一空いたスペースは2つの文字の隙間にあったので、私はそこに名前を入れました。それを探してみてください。その時以来、スタンリーと働くことはとても素晴らしかった。私は、自分のレタリングが特別なものであるとは決して思いません。 それを気に入っていたたったひとりの人は、スタンリーその人です。


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右下のJohn Crewdsonの下にPablo Ferroの名前がある。

●『時計じかけのオレンジ』について

ー『時計じかけのオレンジ』について少しお話しましょう。 当時はスタンリーと仕事をするために英国に戻りました。

パブロ:ええ、ちょうどいいタイミングでの電話でした。 もちろん。

ーこの予告編を含めた別のマーケティングキャンペーンですか?

パブロ:そうです。 私はスタンリーに「予告編に使ってほしいショットがあるかい?」と尋ねました。彼は私を見て「なぜ私に尋ねるんだい?パブロ、 あなたならできるよ」と。私はわかったと言いました。 スタンリーは私がその仕事を終えるまで連れて行きました。そして、私はそれをスタンリーに観せると、彼は「あなたはすごい人だ」と言いました。「予告編は映画より優れている」と。 いえ、これはちょっと言い過ぎですね。 映画は素晴らしいです。

アレン(パブロの息子):私が最近知って驚いたことの一つは、パブロはデイリー(編集用下見フィルム)だけを使いました。なぜなら、スタンリーはネガを触ることを許さなかったのです。

パブロ:ええ、スタンリーはたくさんのテイクを撮るので、たくさんの選択肢がありました。 私はスタンリーが採用したテイクに非常によく似ている最高のアウトテイクを使いました。 『時計…』の予告編は、すべてアウトテイクです。

ーどうやってコンセプトを思いついたのですか?タイポグラフィーと音楽から?

パブロ:私は音楽に影響を受けました。私はすべての音楽が大好きです。レイプシーンの音楽は美しかった、『ウィリアムテル序曲』。スタンリーはそれをスピードアップしたので、そのバージョンを使いました。

アレン:『ウィリアムテル序曲』。乱交シーンに使われました。マルコムは、この2人の女の子をショッピングモールのお店でナンパし、ドラッグをして・・・。

パブロ:私はそれは忘れてしまったが、もう少しスピードアップしました。音楽は私が何をすべきか教えてくれました。私はレタリング(ロゴ)とポスターの女性が好きだった。それらを撮り、ライブショットでグラフィックの動きを作った。通常、私は音楽では編集しません。後から音楽を入れますが、今回それははできません。だから、私がやったことはグリースの鉛筆を取り、ムヴィオラで音楽を再生し、すべてのビートにマークすることでした。

アレン:パブロはシンクロナイザーを使いました。ええ、それは素晴らしいです。私はパブロがしばしばそれを使うのを見ました。

パブロ:私はこのようにしましたーここには 4つのフレームがあるだけです、ここでは8つのフレームを使うことができました。 しかし、それを素早く編集するのは難しかった。カットは次のカットと一致する必要がありました。それはジャンプすることはできません。ゆっくりと移動しなければならないので、映像は左側と右側に移動させます。私は俳優がすべての台詞を学ぶように、映画全体を学んだに違いありません。

アレン:それ以来、私はそのような予告編を見たことがありません。

パブロ:私はそれを止める方法を知らなかった。全く止まらないからどかーん!私は観客とそれを見て、観客はすべてのカットに反応していました。

アレン:(笑)音楽と全部、そこでカット!大喜び!それは予想できなかった。

パブロ:私はムヴィオラでリップしたので見直しました!それはとても難しいことです。

アレン:とにかくフィルムでは難しい。

パブロ:誰もが私のやったことを真似しますが、私はまだこの模倣を見たことがありません。



ー映画のオープニングの、さまざまな色のメインタイトルもやったのですか?

パブロ:いいえ、それはしたのはスタンリーです。



(引用元:Art of the TITLE : Pablo Ferro: A Career Retrospective




 パブロ・フェロが『博士…』と『時計…』で素晴らしい仕事をしていたのは知っていましたが、正確にはどの部分を担当したのかはよくわかっていませんでした。このインタビューを読む限り、『博士…』『時計…』とも予告編は全てをパブロ・フェロが担当、タイトルバックはキューブリックとの共同作業だったということがわかります。あと、パブロ・フェロが担当したとわかっているのはコロバ・ミルクバーの壁面のフォントです。『時計…』のポスターなどに使用されているタイトルロゴはフィリップ・キャッスルがデザインしたものですので混同しないようにしたいですね。

 こうして判明してみると、キューブリックはパブロ・フェロの映像センス、特に編集のセンスを高く買っていたことがわかります。あとはオリジナルフォントのデザインですね。手書きでフニャフニャな『博士…』のフォントは、そのままレタリング(清書デザイン)してしまうと背景映像が見えなくなってしまうことを考慮したために出てきたアイデアだったとは。そのレタリングしたフォントとは、映画のエンドクレジットだと想像しています。これについてはTwitterでも同様の指摘がありました。

Strangelove-The-Endこのようにレタリングしてしまえば背景映像が見えなくなってしまうので、一筆書きのフニャフニャなフォントが採用された。

 『時計…』のタイトルバックのフォントもパブロ・フェロの仕事です。以前この記事でキューブリック作品に使われているフォントの特定を試みましたが、この『時計…』のフォントは特定できませんでした。それもそのはず、既製のフォントではなくパブロ・フェロのオリジナルだったのですね。このレタリングのバックに原色の色ベタを使ったのがキューブリックということらしいです。

pablo-ferro

 すでに報じられている通り、パブロ・フェロは2018年11月16日、肺炎の合併症により83歳で逝去いたしました。故人のご冥福をお祈りいたします。
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 「watch mojo」という映画ファンにはおなじみの映画チャンネルがYouTubeにあるのですが、その日本語版が開設されたらしく、2014年5月20日の記事「【関連動画】映画に於ける偉大なアドリブシーン25」でご紹介した動画「Top 10 Improvised Movie Moments」の日本語版がアップされていたのでご紹介。

 キューブリックに関する多くの誤解の中で、一位二位を争う誤解っぷりでファンを困惑させるものに「キューブリックはアドリブを許さない」というものがあります。実際は全くの真逆で、キューブリック作品はアドリブだらけです。それも映画史に名を残す名アドリブばかりなのですが、それはこの動画で『博士の異常な愛情』『時計じかけのオレンジ』『フルメタルジャケット』『シャイニング』と4作品もキューブリック作品が採り上げられていることでも明らかです(多分に動画制作者の好みが反映されているにしても)。

 キューブリック本人もインタビューで

 (脚本は)リハーサルでも状況に応じて変える。撮影現場で重点の置き方が変わることもあるから、シナリオ(脚本)の最終決定稿が完成するのは、撮影現場で最後のショットが終わった時だ。

 監督にとって、どう撮るかは、むしろ簡単な決定で、楽な仕事だ。重要なのはシュート(撮影)する前の段階で、それは撮影するに足る何事かを起こしえるかへの挑戦なのだ、撮る内容をいかに充実したものにするかだ。

(引用元:イメージフォーラム1988年6月号/スタンリー・キューブリック・ロングインタビュー


と、アドリブの重要性(完成した脚本で撮影するのではなく、脚本を足がかりに撮影現場で台本をアドリブで発展させる)を説明していますが、なぜか映画評論家やキューブリックファンを自称する有名人やコメンテーターはこの一次情報を無視し、キューブリック作品から受ける精緻で計算され尽くしている印象から、「アドリブを許さない」という誤解を信じきっています。「印象」を「事実」として「得意げに語る」人が後をたたないため、いち素人がこんなブログでそれを訂正しなければならないハメになっていますが、もうそろそろ「(初期以外の)キューブリック作品のほとんどはアドリブ」という事実を事実として一般に広く定着してほしいものですね。

追記:動画中の『ダークナイト』のアドリブはデマだそうです。まあ、注意深く見れば爆発のタイミングとカメラの動きが計算され尽くしているのがわかりますので、デマだとわかりそうなものです。
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 2018年10月19日から全国一部のIMAXで上映されました『2001年宇宙の旅』IMAX版の上映が終了いたしましたのでレポートしたいと思います。

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 私は諸事情からT・ジョイPRINCE品川で鑑賞いたしました。まず、アスペクト比ですが、例のHALの初出シーンでモニター8つの表示を確認しております。ただ、ギリギリ画面に納めた感じで、70mmに比べて左右に余裕がありませんでした。

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70mmフィルム上映ではもう少し余裕があった。(参考画像)

 オリジナルネガをフィルムに焼くか、デジタルでスキャンするかでは、根本的な制作方法が違うと思いますので、映像データの縁をシャープに出さなければならないデジタルデータの場合、当然オリジナルネガから影響ない範囲で少し内側にカットしなければなりません。おそらくその範疇の問題ではないかと判断しました。IMAXのDCPデータのアスペクト比が4K UHDと同じであれば、オリジナルネガの1:2.2を同比率で若干内側にトリミングしたのだと思います。以下は4K UHDのサンプルです。比率は1:2.2になっています。

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リンク先の元画像は、レターボックスを含んだ画面サイズが2160×3840ピクセル、映像サイズは1745×3840ピクセルの1:2.2。(引用元:blu-ray.com/2001: A Space Odyssey 4K Blu-ray

 また、字幕のフォントが大きすぎ、フォントのエッジにジャギーが出ていた点が気になりました。家庭用TVで見ているバランスで大きさを決めているのだと思いますが、IMAXだと大きすぎます。まあ、観ているうちに気にならなくはなりましたので、4K UHD版のデータを流用しているのなら仕方がないと割り切るしかないでしょう。

 次に色調ですが、ベースは70mにしつつも、70mmにあったシーンによって色調が異なるという問題点を微調整し、なるべくフラットにしたという印象を受けました。それを是とするか非とするかは個々の判断ですが、私個人としては観やすかったので是としたいと思います。それもこれもそれを決めるご本人が不在なのが悪いのですが、今更どうすることもできないので、こればかりは現実的な判断を優先するしかないでしょう。また、デジタルならではのシャープネスが70mmにあった奥行き感を弱めていた印象は残りました。しかし、左側から巨大なディスカバリー号がどどーんと現れた時には度肝を抜かれ、そのディテールの作り込みにも改めて関心してしまいました。キューブリックがモデルの仕上がりに徹底的にこだわった結果なのですが、50年も経っているのにリアリティを失わないそのクオリティにはただただ驚くばかりです。

 一部で報告があった「人工衛星がカクカク動く問題」ですが、気になった上映館もあったそうです。ということはこの「カクカク」はソースの問題ではなく、上映設備の問題だと判断できるので、4K UHD版では問題ないでしょう。

 今後改善していただきたいのが音源です。70mm版の時も気になりましたが、やはり音源の音圧が足りていない印象です。音圧がない音源の音量を上げればたちまちノイズ感が増してしまいます。IMAXの音響設備は優れているのですが、上映館によっては圧が足りていなかった、ノイズが気になったという報告もあるようです。それはどの上映館でも共通して高い品質の音響をアウトプットできるだけの音源ではないからです。それが困難なのは百も承知ですが、なんとか音源の回復・復元をお願いしたいと思います。

 最後に上映フォーマットですが、70mmフィルム上映のフォーマットに各上映館ができる範囲で対応した、という点を高く評価したいと思います。IMAXにはカーテンがありませんので、それは仕方ないにしても、なるべく当時の上映環境に近づけようとする各館の努力に、『2010年』との併映で、前奏も休憩もエンドロール後のドナウもカットした「ぶった切り」上映を観ている管理人としては(笑、惜しみない拍手を贈りたいと思います。尚、ドナウ後にはメタリックなワーナーロゴとIMAXロゴを確認済みです。

 以上ですが、今回のIMAX上映を存分に楽しませていただいた嬉しさの反面、今後『2001年…』を鑑賞するのにシネコンのDCPでは満足できない体になってしまった、とも言えます(笑。池袋や川崎、札幌や名古屋など、4KレーザーIMAXが開館予定になっていますし、今後8Kにスペックアップする可能性も高いです。また、特設会場設営によるシネラマ完全再現上映(デジタルでないと難しいとは思いますが・・・)という夢も抱かざるを得ません。これらは将来の夢として楽しみにとっておきたいと思いますが、できましたらまた50年後とは言わず、近い未来で実現していただけたら嬉しいですね。
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ufo

 キューブリックがスターゲート・シークエンスになんとか「説得力のある」宇宙人を登場させようと四苦八苦していたことは、本人の口からも語られていますが、アーサー・C・クラークの小説版に登場した異星人の「紡錘形宇宙船」も映像化が試みられていたようです。以下はその該当部分。

 だが残骸のことはことはすぐに忘れた。何かが地平線の向こうから現れたのだ。
 はじめ、それは平たいディスクに見えた。だがそう錯覚したのは、物体がほとんど正面からこちらに向かってきたからである。近づき、真下を通過したところで、それが全長二百メートルほどの紡錘形であることがわかった。胴体を取り巻く帯がところどころにうっすらと見えるが、見定めるのは難しい。見たところ物体はたいへんな高速で、振動というか回転しているようなのだ。
 前部と後部はともに先細りで、推進装置らしきものは見えない。唯一、人間の目に異質さを感じさせないのは、その色だった。もしそれが確固とした人工物であり、幻覚ではないのなら、その建造者にも人間と共通する感情がいくらかはあるに違いない。だが能力や技術の限界が、人間と重なり合っていないのはたしかだった。紡錘型宇宙船は、どうやら黄金製らしいのだ。
 ボーマンは後部観測装置のほうに首をめぐらし、遠のく船を眺めた。船は彼をまったく無視したうえ、いまは高度を下げ、地表にたくさんあいた巨大なトンネルのひとつに入るところだった。数秒のち、船は一瞬金色のきらめきを残し、惑星の内奥に消えた。不気味な空の下でふたたびひとりぼっちになると、孤独と絶望感がいっそう身にこたえてきた。

(引用元:決定版『2001年宇宙の旅』第41章 グランド・セントラルより)


 このように、紡錘型の形状から胴体を取り巻く帯、金色に至るまで上記画像と酷似しています。ただ、決定打になるような情報はありませんので、これはあくまで推測の域を出ませんが、ここまで特徴が共通しているのなら確定と判断しても良いかと思います。

 キューブリックは小説版の通りなら、この金色で縞模様の紡錘型宇宙船をスターゲートの地平線からこちらに向かって漂わせようとしたのだと思いますが、想像しただけでも「カッコ悪い」としか言いようがありません(笑。ですので、不採用の判断は全くもって正しかったと言えますね。
(考察協力:Shin様)
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写真中央のNFAJニューズレター第3号(310円・郵送可)には、「“大きな映画”の場所」と題された岡島尚志氏による大スクリーン映画の記事と、「シネラマ『2001年宇宙の旅』」と題された冨田美香氏によるシネラマ版、アンレストア70mm版についての記事が掲載されています。詳細は国立映画アーカイブ/刊行物まで。



 まず、何をさておいてもこの特別上映を実現していただきました、ワーナー・ブラザース・ジャパンと国立映画アーカイブ関係者様に深く御礼を申し上げたいと思います。大変貴重な機会を設けていただき、誠に有難うございました。今回の上映の経緯と詳細は、上映前に配布された下記の「NFAJハンドアウト第002号」にある通りで、デジタル全盛の現在、ロスト・テクノロジーの復元には大変なご苦労があったことは容易に推察できます。これでもまだ100%再現とは言えないのですが、現在できることを全て注ぎ込んだ、と言い切っていいと思います。

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当日鑑賞者向けに配られた「NFAJハンドアウト第002号」(国立映画アーカイブ様より掲載許可取得済み)

 さて、管理人としてどういう点に注目して鑑賞したかについてですが、まずはアスペクト比です。『2001年』の撮影アスペクト比は1:2.2で、70mmは1:2であったというデータが残っていますが、今回の70mmは、ほぼ現行BDと同じのフルサイズの1:2.2でであったように感じました。HALのモニタもしっかり8つ見えていたので、おそらく16日からのIMAX上映も1:2.2ではないかと思います。

 次に、画質ですが、画面に走るフィルムの傷やピントが甘い箇所など、観づらさも多少あったかと思います。しかし、アナログならではの豊かな描写力、奥行き感は素晴らしいものがありました。特に星空の再現度は高く、思わず「信じられない 星がいっぱいだ!」と心の中で叫んでしまいました(笑。この70mm版をデジタルで再現した4K UHD BDや、IMAX上映には大いに期待できると感じました。

 色調ですが、宇宙ステーションの椅子がマゼンタだったことが判明していたこともあり、その点に注目していたのですが、最初のフロイド博士がラウンジを歩くシーンでは赤にしか見えませんでした。ソビエトの科学者と会話するシーンではマゼンタに見えましたので、この辺りの調整はどうなっていたのか謎が残りました。全体的に色温度が高めに補正されていて、現行BDで見る場合に比べてレトロ・フューチャー感があったように思います。

 音響に関してですが、やはり現在の低音重視のシネコンには及ばない部分はあったと思います。しかし、当時の再生環境の再現という意味では、たとえ音源がデジタルであったとしても意義のある挑戦だと感じました。音量も音割れしないギリギリまで攻めいたとは思いますが、TMA-1の「ビーッ」(「キーン」よりノイズ成分が多かった印象)という咆哮には参りました(笑。

 字幕は要返却の貴重な70mmフィルムに字幕を焼き付けることができなかったため(おそらく)、スクリーン下に小さな字幕用スクリーンが準備されていました。特に見づらくはなかったですが、IMAXでは当然字幕入りのデータが用意されていると思います。

 以上になりますが、今回の70mm特別上映は1978年のリバイバル公開時まで時を遡り、追体験する、いわば『1978年宇宙の旅』でした。そしていよいよ、そのノウハウをつぎ込んで、この70mmアンレストア版をデジタルで現代に蘇らせた『2018年宇宙の旅』が、10月16日から全国一部のIMAXで上映が始まります。特に円盤やCS・BS、ネット配信などで「観た気になっている方々」に、「『2001年…』は映画館で観ないと観たうちに入んねーよ!」と、「他の観た気になっている方々」に対してイキっていただくためにも(笑、一人でも多くの『2001年…』劇場未体験組(もちろん『2001年…』自体未体験組も)に今回のIMAX上映を「体感」していただきたいと思っています。
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