キューブリックブログ記事

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写真中央のNFAJニューズレター第3号(310円・郵送可)には、「“大きな映画”の場所」と題された岡島尚志氏による大スクリーン映画の記事と、「シネラマ『2001年宇宙の旅』」と題された冨田美香氏によるシネラマ版、アンレストア70mm版についての記事が掲載されています。詳細は国立映画アーカイブ/刊行物まで。



 まず、何をさておいてもこの特別上映を実現していただきました、ワーナー・ブラザース・ジャパンと国立映画アーカイブ関係者様に深く御礼を申し上げたいと思います。大変貴重な機会を設けていただき、誠に有難うございました。今回の上映の経緯と詳細は、上映前に配布された下記の「NFAJハンドアウト第002号」にある通りで、デジタル全盛の現在、ロスト・テクノロジーの復元には大変なご苦労があったことは容易に推察できます。これでもまだ100%再現とは言えないのですが、現在できることを全て注ぎ込んだ、と言い切っていいと思います。

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当日鑑賞者向けに配られた「NFAJハンドアウト第002号」(国立映画アーカイブ様より掲載許可取得済み)

 さて、管理人としてどういう点に注目して鑑賞したかについてですが、まずはアスペクト比です。『2001年』の撮影アスペクト比は2.2:1、70mmは2:1であったというデータが残っていますが、今回の70mmは、ほぼ現行BDと同じのフルサイズの2.2:1であったように感じました。HALのモニタもしっかり8つ見えていたので、おそらく16日からのIMAX上映も2.2:1ではないかと思います。

 次に、画質ですが、画面に走るフィルムの傷やピントが甘い箇所など、観づらさも多少あったかと思います。しかし、アナログならではの豊かな描写力、奥行き感は素晴らしいものがありました。特に星空の再現度は高く、思わず「信じられない 星がいっぱいだ!」と心の中で叫んでしまいました(笑。この70mm版をデジタルで再現した4K UHD BDや、IMAX上映には大いに期待できると感じました。

 色調ですが、宇宙ステーションの椅子がマゼンタだったことが判明していたこともあり、その点に注目していたのですが、最初のフロイド博士がラウンジを歩くシーンでは赤にしか見えませんでした。ソビエトの科学者と会話するシーンではマゼンタに見えましたので、この辺りの調整はどうなっていたのか謎が残りました。全体的に色温度が高めに補正されていて、現行BDで見る場合に比べてレトロ・フューチャー感があったように思います。

 音響に関してですが、やはり現在の低音重視のシネコンには及ばない部分はあったと思います。しかし、当時の再生環境の再現という意味では、たとえ音源がデジタルであったとしても意義のある挑戦だと感じました。音量も音割れしないギリギリまで攻めいたとは思いますが、TMA-1の「ビーッ」(「キーン」よりノイズ成分が多かった印象)という咆哮には参りました(笑。

 字幕は要返却の貴重な70mmフィルムに字幕を焼き付けることができなかったため(おそらく)、スクリーン下に小さな字幕用スクリーンが準備されていました。特に見づらくはなかったですが、IMAXでは当然字幕入りのデータが用意されていると思います。

 以上になりますが、今回の70mm特別上映は1978年のリバイバル公開時まで時を遡り、追体験する、いわば『1978年宇宙の旅』でした。そしていよいよ、そのノウハウをつぎ込んで、この70mmアンレストア版をデジタルで現代に蘇らせた『2018年宇宙の旅』が、10月16日から全国一部のIMAXで上映が始まります。特に円盤やCS・BS、ネット配信などで「観た気になっている方々」に、「『2001年…』は映画館で観ないと観たうちに入んねーよ!」と、「他の観た気になっている方々」に対してイキっていただくためにも(笑、一人でも多くの『2001年…』劇場未体験組(もちろん『2001年…』自体未体験組も)に今回のIMAX上映を「体感」していただきたいと思っています。
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 2018年10月24日〜2019年3月31日の日程でスペイン・バルセロナで開催される『スタンリー・キューブリック展』の次の開催地は、ロンドンのデザインミュージアムにて、2019年4月26日〜9月17日の日程での開催が決定したそうです。

 今までキューブリックの第二の故郷とも言えるロンドンでの開催がなかったのは不思議だったのですが、満を持しての開催決定ですね。関連イベントもいくつか開催される可能性が高いですし、久しぶりの大規模開催の予感がします。

 残すはキューブリックの故郷、ニューヨークでの開催と・・・もう何年も(忘れるぐらい昔から。笑)言い続けていますが、我が「日本」。今回の『2001年宇宙の旅』アンレストア70mm版公開の盛り上がりを見ると、開催が決定されれば大騒ぎになるのは必至でしょう。ロンドンの次、期待しましょう。

 今までの開催地リストはこちら
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ダニー・ロイド(一番右)と3人の少年。ダニーの横の走り書き「19.4kg」は体重でしょうか?



 興味深い資料です。4人の少年が写っていますが、手書き文字を判読すると左からジャスティン・キルティ(Justin Kielty)、ダニエル・ストック(Daniel Stocke)、 マーカス(Marcus)、ダニー・ロイド(Danny Lloyd)です。

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 別の資料によると、写真の欄外に走り書きされたジャスティン・リー・ストロング(Justin Lee Strong)がダニー・ロイドの代役、別の代役がダニエル・ストック、三番目としてジャスティン・キルティの名前が記載されています。マーカスはこの時点で外されてしまったんでしょう。他の2人に比べるとダニーと少し印象が異なるからでしょうか。ここにダニーが代役と写っている写真がありますが、この少年がジャスティン・リー・ストロングかもしれません。

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 書類の日付は1979年4月12日。すでに撮影はほぼ終わっていますので、この資料は最終決定だったのでしょう。キューブリックは「撮影」という不確定要素の多いプロセスでも、なるべくコントロールをしたがる(気象条件に左右されるロケを嫌がり、セットを好むのはそのため。ただし「旅行(飛行機)嫌い」という側面も)ので、プリ・プロダクションには時間をかけ、ありとあらゆる事態を想定して準備をするのが通例でしたが、ダニーの代役を3人もリストアップするなど、この『シャイニング』でもそれは徹底していますね。

 確かにホラー映画の主役が少年(ダニーは当時5〜6歳)だと、事故や病気、それに精神的な負荷によるストレスや拒否行動などは十分に考えられる事態です。キューブリックはダニーにはホラー映画を撮影しているとは悟られないよう、ホラーシーンの撮影にダニーを近づけさせないなど最新の注意を払っていたそうですが、それに加えての3人の代役です。キューブリックの映画制作に対する「こだわり」もしくは「慎重さ」が伺える、貴重な資料と言えるでしょう。
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David-Hicks-British-Interior-Designer1970年代に活躍したイギリスのインテリアデザイナー、デービッド・ヒックス。公式サイトはこちら

デービッド・ヒックスを紹介した動画。いきなり「シャイニング・カーペット(ヒックス・ヘキサゴン)」が登場します。

「シャイニング・カーペット」が印象的に登場したダニーのミニカー遊びのシーン。

 『シャイニング』に登場した六角形柄のカーペット、ファンの間では「シャイニング・カーペット」と呼ばれるものですが、これは1960年代にインテリア・デザイナーであるデービッド・ヒックスがデザインした「ヒックス・ヘキサゴン」で、キューブリックが「勝手に」コピーしたものでそうです。以下がそのソースです。

 しかし、ヒックスは『シャイニング』の撮影に協力していませんでした。「ヒックス・ヘキサゴン」 カーペットは、1980年に『シャイニング』がリリースされる前の1960年代に作られたもので、オーバールック・ホテルに登場するカーペットは、映画のためのものでも、撮影用にデザインされたものでもありません。 アシュレイ・ヒックス(インテリア、テキスタイル、カーペットのデザイナーとしても非常に成功したデービッドの息子 )は、グラフィックデザインの伝説的な存在で、映画愛好家でもあるMike Dempseyのブログに、父親の仕事について興味深いコメントを残しています。

「私の父はキューブリックのために働いたことはありません。私はキューブリックがヒックスのカーペットを『シャイニング』のためにコピーしたことを、父が自慢のひとつに思ってくれていたらいいのに、と思っています。」

(全文はリンク先へ:Checkmate! The story behind Kubrick’s carpet in The Shining revealed/2017年11月)




 キューブリックは映画で使用するプロップやインテリア、衣装などはよく既存のものを使いますが、それは手早く、そして手広く選択肢を用意したいという理由からだと思われます(例えば『時計…』でアレックスの部屋のベッドカバーは当時売られていた既製品)。その上で、どうしても気にいるものがなければ、オリジナルでデザインさせるという手法を採っていたようです。実際はどうだったかはわかりませんが、例えばキューブリックがカーペーットや壁紙のカタログからこの「ヒックス・ヘキサゴン」のデザインを知り、それを気に入ってオーバールック・ホテルのカーペットデザインに採用した、という経緯が想像できます。著作権意識の薄かった1970年代ならではの、軽い気持ちでコピーしたんでしょうね。

 現在の著作権管理は、その時代とは比べものにならないほど厳密になっているので、どちらにしてもこの「ヒックス・ヘキサゴン」は『シャイニング』オリジナルデザインではない以上、著作権はヒックスにあります。ですので、商品化にはヒックスの許可が必要、ということになります。そうなると、東京・日本橋にあるTOHOシネマズ日本橋のカーペットが「シャイニング・カーペット」である理由は、内装担当者が単にカーペット柄としてこの「ヒックス・ヘキサゴン」を選んだに過ぎない、という可能性が浮上します。まあ、映画館に「シャイニング・カーペット」が偶然敷かれた、というのもちょっとでき過ぎた話なので、この辺りはぜひ当事者に証言して欲しいものです。

 ちなみに、キューブリックがこの「ヒックス・ヘキサゴン」をオーバールック・ホテルのカーペットに採用した理由ですが、前述の引用サイトには

・色彩が幻想的で鮮やかな印象のため、何かの前兆の印象を与えるから

・このグラフィックパターンは、キューブリックが用いる「シンメトリーな一点透視」に効果的で、ドラマチックな視覚感覚と廊下の延長効果をもたらすから

・ヘックス(六角形)の意味は「呪いまたは悪意のある願い」であり、したがってホテル内の邪悪を象徴するから

・カーペットの六角形をキューブリックが好むチェスと戦争ボードゲームのマス目に結びつけることができるから

・六角形の「六」が「シャイン(輝き)」という第六感を象徴するため


という5つの理由を挙げていますが、管理人がこれに加えるとするならば

・原作に登場する邪悪な霊の象徴「蜂の巣」にインスパイアされたため

・永遠に続く迷路のような模様を、他の迷路の要素(ホテルの館内、生け垣迷路)と呼応させるため


の2点を加えたいと思います。

 この「Film And Furniture」というサイトですが、映画に登場したアイテムをベースに商品販売をしていて、『シャイニング』関連ではカーペットや壁紙、マグカップ、ハロランの部屋に飾ってあった黒人モデルのポスターまで取り揃えています。さらに『2001年宇宙の旅』では宇宙ステーションに置いてあったオリビエ・ムルグのジンチェアや、ボーマンらが食事に使ったアルネ・ヤコブセンのカトラリーも扱っています。商品は版権元に許諾を取ったオフィシャルになりますので値段は高めですし、送料もかかってしまいますが、もしどうしても欲しいアイテムがありましたら問い合わせてみてはいかがでしょうか。
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0:28から。歌うような通る声は確かにディズニー声優向きかも。

19:45から。所作も声も子供向けアニメとは思えないほど色っぽい。このクオリティで公開が1942年(昭和17年)というから、アメリカという国は恐ろしい。



 『2001年宇宙の旅』で、プールが両親から誕生日のビデオメッセージを受け取るシーンがありますが、そのビデオの中の母親を演じたのがアン・ギルズという女優で、彼女はディズニーアニメ映画『バンビ』のヒロイン鹿「ファリーン(大人)」の声優だそうです。2010年のインタビューで当時を振り返り、

 私たちは21テイクも撮りました。 キューブリックはそれを全部プリントしました。昔、監督はすべてのテイクをプリントすることはありませんでした。キューブリックはわずか数秒間続くだけのこの小さなシーンのために、21のテイクのすべてをプリントしたのです。まだ続けようとする彼に私は言いました。「もう十分でしょ、私はやめます」。私は帰りました。21テイクなんてばかばかしい。

(引用元:Hollywood Reporter/2018年2月2日


と、やっぱりここでも「いかにもキューブリックでした!」という感じのエピソードを語ってくれています(笑。

 ところでその『バンビ』についてですが、キューブリックはずいぶんとご立腹だったようで、

 「子供向け映画はディズニーに任せられない領域だ。私は彼らが素晴らしい子供向け映画を製作するとは思えない。私は彼らが子供に動揺を与える、衝撃的で残忍な要素を持っていると考えている。彼らの漫画映画の特徴についての話だ。 私は彼らがなぜそれが妥当であると考えるのか、全く理解できない。『バンビ』の母親が死ぬシーンは、5歳の子供に与える心的外傷体験の一つであるように思える」

(引用元:【関連記事】スタンリー・キューブリックが好んだ映画のマスター・リスト(2016年7月25日改訂版)


と、語っています。

 ではプールのパパは? と思うかも知れませんが、パパについては以前こちらで記事にしました。

 そのアン・ギルズ。2018年1月31日に90歳で逝去しました。最近までご存命だったんですね。故人のご冥福をお祈りいたします。

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Ann Gillis(IMDb)
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