キューブリック作品に登場したセット・プロップ・衣装

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 『時計…』で、アレックスの部屋にあった近未来的ターンテーブル(レコードプレーヤー)です。ラストの病室のシーンで、キャスターに乗っていたのもこれになります。『時計…』は予算が厳しかったせいか、極力ロケや既存の商品に頼って撮影されていますが、このターンテーブルも実際に商品として販売されていたものです。メーカーはデヴィッド・ギャモンが設立したトランススクリプト社で、この「トランススクリプト・ハイドロリック・リファレンス・ターンテーブル」は1964年に発売されたものです。

 メーカーのHPによると、1969年にボアハムウッドにあった工場にキューブリックがやってきて、最新のプロジェクトの為にこのターンテーブルを購入できないか訊ねたそうです。そしてデイヴィッドはキューブリックにこの「ハイドロリック・リファレンス・ターンテーブル」を譲ったのだそう。

 「ハイドロリック・リファレンス・ターンテーブル」は劇中では使用させず、代わりに使われたのがミニカセット(マイクロカセットではない。ミニカセットはフィリップ社の規格、マイクロカセットはオリンパスの規格)でした。キューブリックはアナログレコードの後はカセット、しかもミニカセットが普及すると考えていたんですね。しかしこのサイズのテープスピードではオーディオ用としてははあまりにも音質が悪く、普及したのは主にメモ録音用や留守番電話のメッセージ録音用などでした。劇中のようにオーディオ用ミニカセットが発売された事実はなく、第九やリゲティのカセットテープや、セットされたカセットデッキは全て小道具として創作されたものです。しかし世界にはマニアはいるもので、完全再現したレプリカを製作した方がいらっしゃいます。因みに音源はCD化されているので入手は容易です。

 ところでこのターンテーブル、eBayなどでは20〜30万円で入手できます。オーディオマニアなら手が出せない金額ではなさそう。音質云々は日本語での情報がないのでわかりませんが、日本のオーディオマニアにはあまり評価されていないんでしょうか? プロダクトデザインとしての評価がこの値段なら、ちょっと手を出しにくいかも知れないですね。
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※ハロランが「シャイニング」でダニーと会話するシーン。背景に「カルメット」の缶。

 上記のシーンやジャックが食料倉庫に閉じ込められたシーンにはしっかりとこの「カルメット」というメーカーのふくらし粉の缶が映っています。wikiによると

 カルメットファームは、1924年にカルメット・ベーキングパウダー社の創業者であったウィリアム・モンロー・ライト (William Monroe Wright) によって創設された牧場である。創設当初はイリノイ州リバティヴィルにあり、のちにレキシントンへと移設された。開設当初の牧場の規模は407エーカーであった。ライトはもともとベーキングパウダーのセールスマンであったが、1889年に独立して「カルメット・ベーキングパウダー社」を創業した。牧場名の由来ともなったこの社名は、インディアンの使うパイプの一種カルメットにちなんでおり、製品の缶にはインディアンの酋長の絵が描かれていた。1929年、ライトは同社をゼネラルフーズに4000万ドルで売却し、以後カルメット・ベーキングパウダーは同社のブランドとして販売されていった。のちに同社も1985年にフィリップモリスに買収され、1988年以降は当時傘下企業であったクラフトフーズより販売されている。

wikipedia/カルメット・ファームより抜粋)


 つまり「カルメット」とはインディアン(ネイティヴ・アメリカン)の使うパイプの名称だったものを社名・ブランド名にしたということらしいですね。キューブリックがわざわざこの缶を、しかもわざわざインディアンの横顔のイラストが見えるように背景に置いているのは、このホテルに巣食う霊の正体がネイティヴ・アメリカンの悪霊である事を示唆するためです。『シャイニング』にはこういったネイティヴ・アメリカンへの暗喩が数多く存在しますが、これもそのひとつですね。
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 『シャイニング』の劇中、ダニーが237号室に入ってしまった時に着ていたセーター。このセーターの柄が人類初の月面着陸を果たしたアポロ11号だからと言って、アポロ計画隠謀論に於いてキューブリックが「偽の月面着陸の映像を撮った」根拠とするには無理がありすぎますね。

 現在このセーターは、ピクサーの監督でシャイニングマニアのリー・アンクリッチ所有しています。そしてなんと、ファッションブランドのコーチが2014年の秋コレクションでこのデザインを採用しました。値段が高くて買えない!という方はTシャツやスウェットでしたらこちらで購入可能です。
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 17世紀から18世紀の間、ヨーロッパの上流階級で流行したファッション。白い肌を引き立たせるために使用されたというのが一般的な説ですが、実際にはアバタやエクボなどを隠すためという側面もあったそう。天然痘が流行し、入浴の習慣のなかった当時は肌が荒れやすく、アバタやエクボが出来やすかったという事情もあるそうです。

 それにしても、シェバリエの付け黒子姿は・・・キモ過ぎます(笑。

▼この記事の執筆に当たり、以下のブログを参考にいたしました。
秘密の花園 - つけぼくろの流行、その後
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 『時計…』のルドビコ療法で、映画を強制的に見せるためにまぶたを閉じさせないように固定する器具。専門的には開瞼器 (かいけんき)という。

 このシーンの撮影時、マルコム・マクダウェルはこのリドロックで角膜を傷つけてしまうという災難に遭っている。マルコムはその他に肋骨を折ったり窒息しかけたりと、撮影は災難続きだったようだ。

 
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