キューブリックの愛機たち

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 私、管理人個人としても、キューブリックが使用したカメラやレンズの特定は、遺された写真や資料を元に作業を進めてきました。その成果は「キューブリックの愛機たち」というカテゴリーでご紹介してきたのですが、この動画ではスチールカメラからムービーカメラ、そしてレンズまで広範囲にフォローしていますので、かなり資料性が高い動画となっています。英語なのが残念ですが、字幕を表示すれば機種名くらいは理解できますので、時間のある時にじっくり見ることをおすすめいたします。同じ試みをしていた者にとっては先を越されて残念でもあり、まとまった資料が提供されて嬉しくもありという複雑な心境ですが、今後もこの動画を資料の一つとして利用しつつ、「キューブリックの愛機たち」のカテゴリーの充実を図っていきたいと思います、

 
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lens_8mm_f8_89388

 『2001年…』に登場したコンピュータ、HAL9000ののPOV(主観ショット)に使われたレンズ。英語版wikiには「HALの主観ショットはフェアチャイルド・カーティス社の160度ウルトラワイドレンズ」となっていますが、どうやらこれは間違いで、ダグラス・トランブルやアンソニー・フリューインによると、ニコンの1:8 f=8mm 魚眼レンズが使用された(詳細はこちら)というのが正しいようです。

2001_sketch_sm
※HALのPOVショット

 確かにHALの主観ショットは円形にトリミングされた完全な「魚眼」(円周魚眼というそう)ですので、フェアチャイルド・カーティスの超広角レンズのように「広角」ではありません。ではこのフェアチャイルドのレンズはどのシーンで使われたのかというと、遠心機でのプールのランニングのシーンやポッドベイでの相談シーンに使われたようです。

fc160
※遠心機のドリーショット用のカメラにマウントされたフェアチャイルドのレンズ

2001-Pod-Bay
※ポッドベイのショット。天井が歪んでいるのがわかる。

 ニコンの魚眼レンズの解説はこちらにあります。作例の写真はまさに「HALの見た目」です。キューブリックは同じレンズをHALのプロップに仕込んでいます(その記事はこちら)が、当然ですがそれはカメラにはマウントされていませんので撮影はできません。それでもキューブリックは同じレンズにこだわった・・・(笑。まあ、HALの目がアップになるシーンが何度も登場するので、レンズマニアが見れば種類がわかってしまうのかもしれませんが、細かいところまで徹底的にこだわるキューブリックの「こだわり主義者」っぷりがよくわかるエピソードですね。
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Kubrick_lens_Zeiss
※現在世界を巡回中の『スタンリー・キューブリック展』でも展示されている。

 NASAの人工衛星搭載用にツァイス社が開発したレンズ10本の内3本をキューブリックが入手、『バリー・リンドン』の蝋燭のシーンで使用した。ただ、そのままBNCミッチェルカメラに装着するのは不可能だったので、レンズマウントを自作、シャッターの羽根を一つ外したり、アパーチャプレートも外すなどの改造を施した。またキューブリックはインタビューで

 あれ(F0.7レンズ)はNASAの開発したレンズだが、私のミッチェルにしか付けられない。あのレンズを付けるためにはカメラを改造し、幾つか部品を取り外さなければならなかった。なにしろレンズとフィルムの膜面との距離は2、3ミリしかなく、シャッターの羽根がやっと入ったのだから。いろいろと制約の多いレンズだった。ピントを送るのも大変だった。私のカメラマンは、閉回路テレビを使ってピント合わせをした。撮影カメラが狙っている俳優の真横にテレビカメラがあって、その映像がカメラマンの手元にあるモニターに映し出される。彼はモニターのブラウン管に縦の平行線を何本かグリースペイントでかきこんだ。俳優が何インチ動いたか、その線から読み取ろうというわけだ。こうして緻密なピント送りであの映像が写された。

イメージフォーラム1988年6月号/スタンリー・キューブリック・ロングインタビューより)


と、ビデオカメラとセットで運用した事を明かしている。

▼この記事の執筆に当たり、以下の記事を参考にいたしました。
Amaging Graph/世界最高のレンズはどれだ!?8本の途方もないレンズたち!
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lm-0994-1
ここによるとかなり入手の難しいレンズらしい。(写真はキューブリック所有のものではありません)

 フランスのキノプティック社の超広角レンズ「テゲア」は歪み(歪曲収差)がないのが特徴で、下記の撮影映像を見れば、映像の端でも像が歪んでいないのが良くわかります。周囲から中心に向かって極端なパースがかかるため、臨場感とインパクトある画が撮影でき、キューブリック作品では『時計…』の作家宅での暴力シーンや、キャットレディとの格闘シーンが有名ですね。

 ハリウッドの極端な歪みやパースをタブーとする風潮にあえて逆らい、キューブリックが広角・超広角の映像を好んで作品内で使用したことは、その後の映像の世界に大きなインパクトを与えています。現在では当たり前になっている超広角レンズを使いローポジションからローアングルで撮影し、手足の長さを強調するダンス音楽系のPVは、ルーツを辿ればキューブリックだと言えるかも知れません。


※作例の動画。画面の淵でも建物の線がまっすぐなのがわかる。


※有名な『時計…』でのテゲア使用シークエンス。

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※アリフレックス 35 IIc(写真はキューブリック所有のものではありません)

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※我が子のように大切にIIcを抱えるキューブリック。

 キューブリックが生涯で最も愛用したアーノルド&リヒター社の35mmムービーカメラ「アリフレックス」。その中でもこのIIc(2c)はキューブリックが個人で所有したカメラで、『時計…』から『アイズ…』までの全作品で使用されました。小型で機動性が高く、頑丈で信頼性の高いアリフレックスはカメラを動かしたがるキューブリックにとってまさにうってつけで、キューブリック作品の「動」と「極端なアングル」の部分を担ったまさに「良き相棒」でした。

 『2001年…』でかなりの報酬を手にしたのか、まずはマイカメラとしてキューブリックがこのアリフレックスを選択したのは当然の成り行きでしょう。現在世界を巡回中のスタンリー・キューブリック展でも目玉の一つとして展示されていますので、機会がありましたらしかとこの愛機を目に焼き付けておきたいものです。


※フィルム装填の手順を紹介したビデオ。

 
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