キューブリックの愛機たち

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※現在世界を巡回中の『スタンリー・キューブリック展』でも展示されている。

 NASAの人工衛星搭載用にツァイス社が開発したレンズ10本の内3本をキューブリックが入手、『バリー・リンドン』の蝋燭のシーンで使用した。ただ、そのままBNCミッチェルカメラに装着するのは不可能だったので、レンズマウントを自作、シャッターの羽根を一つ外したり、アパーチャプレートも外すなどの改造を施した。またキューブリックはインタビューで

 あれ(F0.7レンズ)はNASAの開発したレンズだが、私のミッチェルにしか付けられない。あのレンズを付けるためにはカメラを改造し、幾つか部品を取り外さなければならなかった。なにしろレンズとフィルムの膜面との距離は2、3ミリしかなく、シャッターの羽根がやっと入ったのだから。いろいろと制約の多いレンズだった。ピントを送るのも大変だった。私のカメラマンは、閉回路テレビを使ってピント合わせをした。撮影カメラが狙っている俳優の真横にテレビカメラがあって、その映像がカメラマンの手元にあるモニターに映し出される。彼はモニターのブラウン管に縦の平行線を何本かグリースペイントでかきこんだ。俳優が何インチ動いたか、その線から読み取ろうというわけだ。こうして緻密なピント送りであの映像が写された。

イメージフォーラム1988年6月号/スタンリー・キューブリック・ロングインタビューより)


と、ビデオカメラとセットで運用した事を明かしている。

▼この記事の執筆に当たり、以下の記事を参考にいたしました。
Amaging Graph/世界最高のレンズはどれだ!?8本の途方もないレンズたち!
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ここによるとかなり入手の難しいレンズらしい。(写真はキューブリック所有のものではありません)

 フランスのキノプティック社の超広角レンズ「テゲア」は歪み(歪曲収差)がないのが特徴で、下記の撮影映像を見れば、映像の端でも像が歪んでいないのが良くわかります。周囲から中心に向かって極端なパースがかかるため、臨場感とインパクトある画が撮影でき、キューブリック作品では『時計…』の作家宅での暴力シーンや、キャットレディとの格闘シーンが有名ですね。

 ハリウッドの極端な歪みやパースをタブーとする風潮にあえて逆らい、キューブリックが広角・超広角の映像を好んで作品内で使用したことは、その後の映像の世界に大きなインパクトを与えています。現在では当たり前になっている超広角レンズを使いローポジションからローアングルで撮影し、手足の長さを強調するダンス音楽系のPVは、ルーツを辿ればキューブリックだと言えるかも知れません。


※作例の動画。画面の淵でも建物の線がまっすぐなのがわかる。


※有名な『時計…』でのテゲア使用シークエンス。

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※アリフレックス 35 IIc(写真はキューブリック所有のものではありません)

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※我が子のように大切にIIcを抱えるキューブリック。

 キューブリックが生涯で最も愛用したアーノルド&リヒター社の35mmムービーカメラ「アリフレックス」。その中でもこのIIc(2c)はキューブリックが個人で所有したカメラで、『時計…』から『アイズ…』までの全作品で使用されました。小型で機動性が高く、頑丈で信頼性の高いアリフレックスはカメラを動かしたがるキューブリックにとってまさにうってつけで、キューブリック作品の「動」と「極端なアングル」の部分を担ったまさに「良き相棒」でした。

 『2001年…』でかなりの報酬を手にしたのか、まずはマイカメラとしてキューブリックがこのアリフレックスを選択したのは当然の成り行きでしょう。現在世界を巡回中のスタンリー・キューブリック展でも目玉の一つとして展示されていますので、機会がありましたらしかとこの愛機を目に焼き付けておきたいものです。


※フィルム装填の手順を紹介したビデオ。

 
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 『アイズ…』にカメラのテクニカル・アドバイザーとして参加したジョー・ダントンの解説による、キューブリックが使用したカメラレンズの解説動画です。有名な『バリー…』の蝋燭シーンで使用したF値0.7レンズも登場しています。字幕で英語が選択できますので、ヒアリングが苦手なかたはそちらをご利用ください。

 カメラやレンズマニアには堪らない動画ですね。でも一番重要なのはキューブリックは撮影前の準備は最少限度にして(おおまかな方向性は決めていたとは思いますが)俳優に自由に何度も演技をさせ、その結果によってカメラの位置やレンズを決めていたという事実です。つまりレンズのチョイスも「アドリブ」なんですね。しかもあらゆるアングルからあらゆるレンズで撮影するものだから、テイク数が多くなるのも道理です。キューブリックは「映画製作で一番安いのはフィルム代だからいっぱい撮らないと」と言っていたそうですが(しかもそれを全部現像していた)、それにつき合わされた俳優やスタッフはさぞかし大変だったと思います。マルコム・マクダウェルによるとシーンが決まらずに、何も撮影しない日もあったそう。例の「雨に唄えば」のシーンも苦心したらしく、一週間くらいリハを続けたそうです。

 これらレンズは現在世界を巡回中の『スタンリー・キューブリック展』でも展示されています。早く日本で実物を見たいものです。
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※ライフ誌の取材で『2001年…』のセットでポラロイドカメラを使ってみせるキューブリック

 キューブリックが『2001年…』の撮影時、ピントの確認などで愛用したポラロイドカメラ、パスファインダー110A。フィルムはロール仕様なので、現在入手してもパックフィルム仕様に改造しない限りそのままでは使えないそうです。ググってみるとわかりますが、かなり味のある写りをしていて、ファッションブランドのtheoryではこんなイベントを開催していたようです。ローライもそうですが、こういったアナログ機器はその内リバイバルが来そうな感じですね。
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