ルック社カメラマン時代

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スタンリー・キューブリック写真展『Through a Different Lens: Stanley Kubrick Photographs』のエントランス。

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会場になったロサンゼルスの「スカーボール文化センター」

 以前この記事でお知らせしたキューブリックのルック社時代の写真展『Through a Different Lens: Stanley Kubrick Photographs』が2019年10月17日から2020年3月8日まで、ロサンゼルスのスカーボール文化センターで開催中です。そのレポートがロサンゼルス在住のShinさまより届きましたのでご紹介いたします。

 キューブリックの写真展『Through a Different Lens: Stanley Kubrick Photographs』に行って参りました。実際のキューブリックの写真の数々、ルック誌の実際の写真の掲載号を見ることができ、大感動でした。キューブリック監督の写真展といっても、白黒写真なのであまり人は来ないであろうと思っていましたが、そんなことはなく、老若男女数多くの人が来場していました。土曜日ということもあるかもしれません。規模は数年前のキューブリック展と比べると小さいですが、多くの写真と雑誌、詳細な解説が充実していて、私が今まで見たことなかった写真も多数ありました。さすがキューブリック、全ての写真が構図が完璧で、計算し尽くされ、美しかったです。

 特に感動したのは、ルックに初めて掲載されたニューススタンドでルーズベルト大統領死去の報を見る従業員の写真の、実際の雑誌掲載ページです。印象深かったのは「靴売りの少年」、「車を修理する男とその側に立つ女」などなど。また、ルック誌の巻頭ページに掲載された19才のキューブリックの天才ぶりを讃える記事は必見です。彼の才能を写真入りで褒め称え、最後に「空き時間には映画撮影の実験をし、ドキュメンタリー映画を作る日を夢見ている」と書かれています。なんという先見の明でしょうか、素晴らしいです。なんと言っても、キューブリックの写真が生で見れたこと、雑誌にちゃんと「キューブリック撮影」と写真の下にクレジットされているのを見ることができて感動しました。一時間ほどたっぷりキューブリックを堪能出来ました。ぜひこれを日本でも開催し、多くの日本人に見て頂きたいと思いました。


 以下はShinさまが撮影した写真です。キャプションは管理人が追記いたしました。

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会場の雰囲気。やはり写真は写真集ではなくプリントで観てみたいもの。

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右下に一回り大きく掲載された、キューブリック初のルック雑誌掲載作品。キューブリックはこのときまだ16歳。

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後のドキュメンタリー『拳闘試合の日』の元になったカルティエ兄弟の試合記事。

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指揮者レナード・バーンスタインの若き日の取材写真もキューブリック。

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ドアに口紅で書いた「I HATE LOVE」。これはのちの『シャイニング』の「REDRUM」?

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19歳の「ベテラン」カメラマンと紹介されている。当時キューブリックは社内で天才少年と呼ばれていた。

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「How a Monkey Looks to People・・・」ときて、

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「・・・and How People Looks to a Monkey」となる。猿に檻はなく、人間を檻に入れたキューブリックの皮肉な視点はすでに顕著だ。

 キューブリックのルック社時代の写真は、一括してニューヨーク市立博物館が収蔵しています。過去に写真展はイタリアのジェノバオーストリアのウイーンでの開催実績がありますが、昨年ニューヨークで開催された際『Through a Different Lens: Stanley Kubrick Photographs』というタイトルになり、今後はこのフォーマットで開催されるようです。またこれは写真集のタイトル(全ページを動画でご紹介しております)でもあります。展示はこの写真集に掲載された写真が中心ですが、それ以外もあるようですし、実際の掲載誌を見る機会はこの展覧会以外にありえません。

 そうなると俄然期待してしまうのは日本での開催ですが、レポートにもある様に比較的小規模の会場でも開催可能なので、関係者のみなさまには実現をぜひお願いしたいですね。

レポート・写真提供:Shinさま(Skirball Cultural Centerより掲載許可済み)


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 キューブリックのルック社時代の写真を集めた写真展『Through a Different Lens: Stanley Kubrick Photographs』が、ロサンゼルスのスカーボール文化センターで2019年10月17日〜2020年3月8日の期間で開催されるそうです。昨年ニューヨークで開催されたものと同じような展示になると思いますが、写真を収蔵するニューヨーク市立博物館は作品の貸し出しに応じている様なので、日本でもぜひ開催して欲しいですね。

 公式サイトはこちら。写真を収蔵しているニューヨーク市立博物館の公式サイトはこちら、同名の写真集を紹介した記事はこちらです。

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左側の女性が当時のキューブリックの妻、トーバ・メッツ。(引用元:ニューヨーク市立博物館『Life and Love on the New York City Subway [Woman in a subway car.]』

 キューブリックは自作品に自分の身内をよく登場させていますが、それはルック社でカメラマンとして在籍していた頃からだったようです。

 キューブリックが1946年に撮影した、ニューヨーク地下鉄での人々の様子を写した写真シリーズ、いわゆる『地下鉄シリーズ(Life and Love on the New York City Subway)』に、キューブリックの最初の妻、トーバ・メッツが写った写真がありました。おそらくキューブリックはトーバを何らかの役割(仕込み)をしてもらうために地下鉄に呼んだのだと思いますが、『地下鉄シリーズ』でトーバが写った現存する写真はこれ一枚のみのようです。

 ちなみに、トーバはキューブリック劇映画処女作『恐怖と欲望』に台本監督として参加していますが、映画にもカメオ出演しています。しかし、この後二人は離婚。キューブリックは1955年にルース・ソボトカと再婚しました。しかしこれも長続きせず、やがて別居、最終的にクリスティアーヌ・スザンヌ・ハーラン(クリスティアーヌも再婚で、子連れ再婚となった)と結婚し、生涯を共にすることになります。三回も結婚を繰り返したキューブリックの家族・親族関係はややこしいので、家系図を作っています。参考までににどうぞ。

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店内の写真や陳列の写真はさすがにNGだと思ったので、フロアガイドを入手してきました。「VINTAGE BOOK」のコーナーに置いてあります。

[FORESIGHT]TASCHEN STANLEY KUBRICK

映画界の金字塔スタンリー・キューブリックの出発点は実は写真だった。NY市立博物館で10月28日(日)まで開催の展覧会に合わせて刊行される同名写真集には『ルック』誌に起用された1946〜50年のフォトグラファーとしての軌跡を収録。

蔦屋書店 銀座店 tel_03-3575-7755

(引用元:EYESCREAM FASHION/2018年6月20日




 キューブリックのルック社時代の写真集『Through a Different Lens:Stanley Kubrick Photographs』が銀座SIX6階にある蔦屋書店 銀座店で取り扱いがあることをこの「EYESCREAM」というサイトで知ったので、確認しに行ってきました。場所は「VINTAGE BOOK」のコーナーで、数冊平積みされた上に見本誌が置いてありました。価格は消費税込みで9,158円。amazonは6,341円ですので割高になりますが、中身を確認してから購入したい方は訪れてみてはいかがでしょうか。

 ちなみに管理人が全ページをダイジェストで紹介した動画はこちら


Stanley Kubrick Photographs: Through a Different Lens(amazon)

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動画は全ページ紹介していますので、ネタバレを回避したい方は視聴をご遠慮ください。



 かなりのボリュームと重さなので、届いた時は驚きました。内容は、キューブリックのルック社時代の取材写真と、その掲載ページが時系列で紹介されていて、キューブリックの「ポートフォリオ」を見ているような、そんな一冊になっています。

 ここに採り上げられているのは主なものだけで、キューブリックはルック社在籍時に残っているだけで15,000枚もの写真を撮影しています。その全てはニューヨーク市立博物館の検索ページで「Stanley Kubrick」と検索すれば見ることができるのですが、あまりにも多いのでダイジェストとはいえ、写真集として見ることができるのはありがたいですね。

 2005年に刊行された『スタンリー・キューブリック ドラマ&影:写真1945‐1950』はかなりアート寄りな切り口でしたが、今回は「報道カメラマン」としてのスタンスでまとめられています。当時のキューブリックの実像としてはこちらの方が正しいので、個人的には本書の方をおすすめしたいです。『ドラマ&影』も悪くはないのですが、ちょっと大上段に構えすぎのような気がしますので。

 ひとつ気がかりなのはネット全盛の現代で、「ルック」という報道写真誌がどこまで理解されているか、という点です。日本では「グラフ誌」と呼ばれ、アサヒグラフや毎日グラフといった雑誌が出版されていましたが、今世紀に入ってすでに廃刊になっています。当然雑誌なので、売らんがためのセンセーショナリズムやヤラセ、仕込み、恣意的な編集などの「演出」はあって当然ですし、「報道」と言いながら戦前・戦中にはプロパガンダに利用されていました。そういうメディアであったことをよく理解した上で、キューブリックが撮った(撮らされた)これら写真の数々を鑑賞すべきでしょう。

 キューブリック本人もこれらの写真を「アート」だとは1ミリも考えていなかったはずです。そんな「制限」の中でもキューブリックらしい視点や切り口、構図やライティングは散見されます。日本で言えば高校在学中(16歳)から高校卒業時(17歳)、そして大学卒業(22歳)までの年齢でキューブリックが成し遂げた、しかし最終的には「くだらない」と捨て去った「仕事」のすべてを、ぜひ本書でご堪能ください。


Through a Different Lens: Stanley Kubrick Photographs(amazon)

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