恐怖と欲望

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 キューブリックの劇映画処女作『恐怖と欲望』は、ニューヨークのギルド劇場で1ヶ月間の上映の後、全米のあちこちの映画館やドライブインシアターに回されることになったのですが、その上映館の中には二番館、三番館、果てはポルノを上映する劇場までありました(詳細はこちら)。キューブリックにしてみれば、それは屈辱以外の何ものでもないわけですが、配給権をジョゼフ・バースティンが握っている以上、そのバースティンは利益を確保するためには手段を選ばなかったであろうことは容易に想像できます。

 その上映の中で、ロキシー・シアターで上映された際のポスターが残っていて、そこには『The Male Brute(野生の男)』なる映画と同時上映されたことがわかっています。『恐怖と欲望』と同様、『野生の男』もまるでポルノであるかのような売り出し方ですが、実はこれはフランスの名匠、ジャン・ドラノアの佳作『海をみた少年』であることはここで記事にしました。この映画もジョゼフ・バースティンが配給権を持っていたので、売れない映画どうしを抱き合わせ、ポルノまがいに宣伝し、少しでも資金を回収しようとした意図が読み取れます。その、ポルノにされてしまった『海をみた少年(原題:Le Garcon sauvage)』の予告編の映像がYouTubeにありました。これを観ただけでもポルノでないのは明らかです。

 キューブリックが映画制作を始めた初期は、このように制作費の支払いや、次作の制作資金捻出のために権利を譲りわたすことを余儀なくされていました。そのことは後に「自作の権利を全て自分が保有する」「そのためなら自作に関係する事柄全てに干渉する」という考えに至り、それを実行します。このように、小説や絵画や音楽などの世界では当たり前だと思われている「作者が自作の権利を保有する」という「常識」が、映画では「異例」と思われている現実をキューブリックは変えたがっていました(少なくとも自身だけでもそうすべきと考えていた)。しかしそれは現在に至るまで「異例」であり続け、キューブリックが当たり前と考えて行った自作への執着ぶりを揶揄する風潮は今も変わりません。

 キューブリックが劇映画処女作『恐怖と欲望』で得た経験と屈辱は、その後の映画制作に関するスタンスを決定づけました。その傍証として、同時上映されたこの『海をみた少年』が受けた同様の屈辱的な扱いが、それを証明していると言えるでしょう。


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next33
在庫限りにはなりますが、現在全品在庫があるそうです。購入はこちらからどうぞ。



 2013年に劇場公開、その後DVD/BDがリリースされたキューブリック幻の劇映画処女作『恐怖と欲望』ですが、その時に制作会社CUEとnext33の共同企画されたTシャツなどのグッズの在庫が全品あり、現在も購入可能だそうです。next33の販売サイトはこちらになります。

 最近、キューブリック作品の公式Tシャツが流通大手のイオンから格安で販売になり、キューブリックファンをざわつかせましたが、それはキューブリックの死後宙ぶらりんになっていた版権管理を、ワーナーが代表して行うようになったからです。キューブリック作品の日本国内の配給権は以下のようになっていますが、現状ではワーナー配給作のみが公式グッズをリリースできる状態にあると考えられます。ただ、契約期間等もあるでしょうから、将来はわかりませんし、これからどうなっていくのかも不明ですので、欲しい方は入手できるうちに入手しておいた方が無難かと思います。

ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント

『アイズ ワイド  シャット』
『フルメタル・ジャケット』
『シャイニング』
『バリー・リンドン』
『時計じかけのオレンジ』
『2001年宇宙の旅』
『ロリータ』

ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

『博士の異常な愛情』

NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン

『スパルタカス』

20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント

『突撃』
『現金に体を張れ』
『非情の罠』

IVC

『恐怖と欲望』※作品自体はパブリック・ドメイン

 なお、ヤフオクやamazon、楽天などでは非公式(海賊版)のTシャツなどが手に入りますが、商品の性質上、当ブログではご紹介を控えさせていただいております。また、海外販売の公式グッズは過去にいくつかご紹介してきましたが、購入するにしても個人輸入になってしまうので、コスト高やトラブルのリスクが高くなってしまいます(amazonや楽天の業者が輸入して販売している場合もあるようです)。もし「どうしても欲しい」という方がいらっしゃいましたら、くれぐれも自己責任でご購入ください。

情報提供:ナコ様

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戦争映画 パーフェクトコレクション 恐怖と欲望 DVD10枚組 ACC-094(amazon)


 『恐怖と欲望』のDVDやBDの販売は、国内ではIVCという会社が手がけていますが、『恐怖…』自体はパブリック・ドメイン(著作権消滅)ですので、こういった販売も問題ないということになります。販売元の株式会社コスミック出版は、その名の通り出版社ですので、このDVDシリーズは通常の映像メディアの販売ルートとは異なり、書店売りのDVDになります。どうやらパブリック・ドメインの映画を大量に集めてシリーズにして商品化、書店に卸しているようです。

 映像専門の会社ではないので映像がどの程度のクオリティか不明ですし、パッケージングもお世辞にもいいものだとは言えません。キューブリックファンならすでにBDやDVDで所有していると思いますので、特に食指は動かないと思いますが、セットにされた戦争映画に興味があるなら買ってもいいかもしれません。それに安いですしね。

 その他のDVDシリーズはこちら。自社サイトでは4月14日発売になっていますので、少しでも早く入手したい方はこちらをご利用ください。

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8217400
Joseph Burstyn(IMDb)
Joseph Burstyn(wikipedia)

 アメリカの小規模映画配給会社、ジョゼフ・バースティン社社長。キューブリックの劇映画処女作『恐怖と欲望』の配給を手がけた。

 このジョゼフ・バースティン社はヨーロッパの良質な映画を輸入・配給していて、イタリアン・ネオリアリズムをアメリカに紹介したことで知られている。『恐怖…』と同時上映された『海を見た少年(The Male Brute)』もフランスの名匠、ジャン・ドラノワ監督の作品だった。

 バースティンは1950年、1948年に制作されたイタリアの映画監督、ロベルト・ロッセリーニによる『人間の声』『奇跡』からなるオムニバス映画『アモーレ』を『ウェイ・オブ・ラヴ』と改題し、米国で配給した。12月には『ウェイ・オブ・ラヴ』がニューヨーク映画批評家協会によって本年のベスト・外国語映画に選ばれた。

 アメリカでの公開後、ニューヨーク州理事会は「放浪者(フェデリコ・フェリーニ)を聖人だと信じた女が妊娠し、村人のそしりを受けつつも女は一人で教会で子供を産む」という内容の『奇跡』について「神への冒涜」だとした抗議を受け、理事会は聴聞会に調査する様よう命じた。聴聞会はこの作品が「神への冒涜」と判断、1951年2月16日に教育委員は映画の配給のライセンスを取り消すように命じた。

 それに対し、この判断を不服としたバースティンは訴訟を起こし、「ジョゼフ・バースティン社対ウィルソン裁判」として有名になる。アメリカ最高裁判所は、ニューヨーク州教育法の特定の条項が映画の上映を禁止したり、「神への冒涜」としてライセンスを停止することを認めていることは、言論の自由に対する拘束となると判断した。

 1921年にアメリカに渡ったポーランド移民。1953年11月、大西洋横断飛行中に機内で冠動脈血栓症を発症し、死去。生年月日不詳。
 

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FAD_toba
左がトーバ、中央がリース、右は不詳。

 キューブリックの最初の妻、トーバ・メッツはカリフォルニア州のサン・ガブリエル山脈でのロケに帯同し、台本監督としてクレジットされているのは知られていましたが、ワンピースのまま川の中に入り魚を獲るという謎のシーンにカメオ出演しているとは気づきませんでした(ソースはこちら)。確かによく見るとそのようですね。

 因みに中央はバージニア・リースですが、その右側の女性は誰だかわかっていません。IDMbにはトーバとリース以外に女性名はなさそうなので、おそらくスタッフの誰かの関係者でしょう。

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『恐怖と欲望』のスタッフと出演者。キューブリックの右側がトーバ。ここにはリースと謎の女性は写っていない。

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