2001年宇宙の旅

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 以前この記事で、1969年に刊行された『キネマ旬報 臨時増刊 世界SF映画大鑑』に『2001年宇宙の旅』のシナリオ採録があり、そこにはボーマンがピアノ(キーボード)を弾くシーンが掲載されているとの情報がありましたが、そのムックを入手いたしましたので、シナリオ採録の該当部分を抜粋いたします。



〈前略〉

プール、コンピューターのハルを相手に将棋を指している。テーブルの上に電気で将棋盤が映っている。

プール「とにかく・・・クィーンを取って・・・歩だ・・・」
ハル「角が歩をとる」
プール「飛車と王と」
ハル「悪いが、フランク、君はミスを犯した。角がクィーンを取る。歩が角を取る。王手だ」
プール「君の言う通りだ、負けた」
ハル「楽しいゲームをありがとう」
プール「ありがとう」

眠っていたデイヴィッド・ボウマンが目を覚ます。
コンピュータが声をかける。

ハル「お早う、デイブ」
ボウマン「お早う、ハル」
ハル「よく眠れたかい?」
ボウマン「とってもね。万事順調か?」
ハル「すべて順調だ」
ボウマン「それはいい」

ベッドで眠っているプール。

ピアノを弾くボウマン。


ボウマン、棺桶の中で冬眠中の三人の乗組員の顔をスケッチしている。
コンピュータがまた、その彼に声をかける。

ハル「今晩は、デイヴ」
ボウマン「調子はどうだい、ハル?」
ハル「すべてスムーズに行っているよ。君は?」
ボウマン「ああ、悪くないね」
ハル「何をしていたんだね?」
ボウマン「スケッチさ」

〈以下略〉

採録:田山力哉




 以上のように、ボーマンがキーボードを弾くシーンは「プールとHALのチェスのシーンとボーマンがスケッチしているシーンの間」だということがわかります。このシナリオの採録は試写のフィルムがソースだったと思われますが、採録を読む限り最終版に追加された「人類の夜明け」「木星計画」のスーパー、月を見るものが一瞬モノリスを思い出すインサートカットの記述がありません。となると、元の試写用フィルムからキューブリックの指示通りカット(月面での生活など)したものの、このボーマンのキーボードシーンだけはカットし忘れたのではないかと推察します。であれば、カンザス州の保管庫で見つかりワーナーが保管しているという、キューブリックがニューヨークの試写後にカットしたフィルムに、このシーンが含まれている可能性は高いと言えるでしょう。

 ところでこの採録、内山氏が語るようにかなり酷い和訳や、シーンを理解していないト書きが散見されます。もはや伝説となったフロイドの娘が欲しがったブッシュベビー(小型のサル)の「乱れ髪の赤ちゃん」の誤訳もここが原因のようです。また、このページに続く『2001年撮影秘話』も当時の情報不足からくる間違い、勘違いが多く、とても一次資料にはなり得ません。ただ、情報の少ない「当時の空気感」を感じることはできますので、入手は古本屋かヤフオクなどに限られますが、興味のある方は探してみてはいかがでしょうか。

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【ご注意】当ブログの記事は「KUBRICK.Blog.jp」の明記と該当記事へのリンク(URL表記「http://kubrick.blog.jp/」でも可)貼ることを条件に、報告不要でご自由にご活用頂けます。ただし、アポロ計画やフリーメイソンなどの陰謀論、スキャンダラスな嘘記事、ソース不明の偽情報を掲載して衆目を集め、アクセスを呼び込むことを第一の目的とするデマサイトやデマ動画チャンネルの関係者は当ブログの閲覧、ならびに利用は全面禁止とさせていただきます。






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 この「映画論叢(えいがろんそう)」という雑誌、一般書店ではなかなか入手が難しく、書店での注文かamazonなどのネット通販、もしくは版元である国書刊行会のサイトに頼るしかありません。判型はA5サイズ、ページ数は128ページ、広告も一切ないので1,000円(税別)という価格は仕方ないでしょう。内容もオールド映画ファン向きで、かなり専門的。一般の映画ファンが気軽に手を出すには、なかなか敷居の高い雑誌です。

 その「映画論叢」の第50号に、スタンリー・キューブリック関連の著作で有名な内山一樹氏の最強レポート「『2001年宇宙の旅』を見続けて半世紀」が16ページに渡って掲載されています。その内容はさすがリアムタイムで鑑賞されてきた方の迫真のドキュメントとして、また貴重な資料として非常に読み応えがあります。シネラマでの初公開から凱旋興行と35mm版上映、10年後のリバイバル70mm版上映と35mm版上映、その後1980年代半ばまで続くリバイバル上映、2001年に公開された新世紀版、『午前10時の映画祭』での35mm上映とDCP上映、2015年の『ライブ・シネマ・コンサート』(管理人は内山氏と同日を鑑賞)、そして昨年のアンレストア版70mmからIMAX上映まで、日本での『2001年…』興行について全て言及されています。特に1978年リバイバル時のプリントの品質の不安定さや「バレ(本来見えてはいけない映像が見えてしまっている状態)」への言及は興味深いものがありました。

 内山氏といえば、キューブリックファンにとっては「バイブル」と言えるムック本『イメージフォーラム増刊号 キューブリック』で有名ですが、実はこのムック、その7割は内山氏の執筆(執筆者の石田タク、中畑薫は実は内山氏)だったそう。また、この記事には1969年に刊行された『キネマ旬報 臨時増刊 世界SF映画大鑑』に『2001年宇宙の旅』のシナリオ採録があり、そこにはボーマンがピアノ(キーボード)を弾くシーンが掲載されているとの情報がありました。そのムックも入手しましたので、後日レポートしたいと思います。

情報提供:元・空想科学少年様


映画論叢 50(amazon)
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 以前この記事でお知らせした、イギリス・マン島郵便局が発行した『2001年宇宙の旅』50周年記念切手の開封動画がありましたのでご紹介。

 その記事の通り、マン島の郵便システムは独自なもので、マン島で発行された切手はマン島でしか使えません。ですので、こういった記念切手の発行がマン島郵便局の収入源になっているそうです。動画を見る限り、とてもしっかりとした作りで、なかなかコレクター心をくすぐりますね。紹介されているのは

・額入り記念切手シート
・初版カバー
・アルバムパック
・切手バラ(未使用)
・切手バラ(消印入)

です。現在もまだ発売中なので、興味のある方は購入してみてはいかがでしょうか。マン島郵便局公式サイトの『2001年宇宙の旅』50周年記念切手販売ページはこちら
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 スターエーストイズからラインナップされている、デフォルメ&リアルがコンセプトのシリーズ「デフォリアル」から『2001年宇宙の旅』に登場した宇宙飛行士のフィギュア4色がリリースされるそうです。赤はHALのブレインルーム、青はHALのモノアイ、黄色はスペースポッド、シルバーは月面活動シーンがそれぞれのバイザーにデザインされています。ディテールもなかなか作り込んでいるようで期待できますね。

 全高約150mm、PVC製の塗装済み完成品フィギュアです。価格は6,362円。発売予定日は2019年9月30日。現在予約受付中です。


スターエーストイズ デフォリアル ディスカバリー アストロノーツ レッドVer. (amazon)



スターエーストイズ デフォリアル ディスカバリー アストロノーツ ブルーVer.(amazon)



スターエーストイズ デフォリアル ディスカバリー アストロノーツ イエローVer.(amazon)



スターエーストイズ デフォリアル ディスカバリー アストロノーツ シルバーVer.(amazon)
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『2001年宇宙の旅』で仕事をするジョイ・カフ。

〈前略〉

 MGMスタジオでの私の契約は1966年2月に始まりました。実写(俳優)撮影はシェパートン・スタジオで完成していました。『2001年宇宙の旅』は65(70)mmフィルムで撮影されていました。私が映画制作に加わったとき、モノリスを調べるために「穴」に降りる宇宙飛行士のフィルムは缶に保管されていましたが、合成されていませんでした。

 MGMでは月面の模型を「マットショット」として制作することになっていました。石膏で作られた「穴」の中央フレームには、シェパートンで撮影されたライブアクションの映像を使うことになっていました。そしてそれはカメラで撮影され、合成されました。この手法は映画制作の初期の頃には完成していましたが、複製されたフィルムの品質が向上するにつれて、静止画像に実写を挿入する方法はあまり使われなくなりました。キューブリックは細心の注意を払い、主に高品質で再生することによってこの方法を使うことにしました。カメラマンのジョン・マッキーとマット・アーティストのボブ・カフは、月面セットの制作と撮影の両方の開発に携わった重要な技術者でした。

 私はミックスメディアのアーティスト兼彫刻家として働いていた時と同じく、月の模型を制作する際に石膏を使用し、順調に作業していましたが、私は映画制作のSFX分野、特にマットショット (個々のショットを合成して1つの完全なショットを作ること)については経験がありませんでした。私はこの分野のエキスパートであるボブ・カフと一緒に仕事をし、マットアーティストの技を学びました。『2001年宇宙の旅』の最も象徴的なショットの1つを制作する一方で、私はこの芸術形式を学ぶことに恵まれたのです。

 このショットとそれに続く月面バスのフィルム上のショット、そして宇宙船の窓からの風景は、実際には3フィート×6フィートの大きさで、約25フィートのトラッキング・ショットのために、10フィート四方のエリア内で相互動作する長いセットでした。私はスタンリー・キューブリック・アーカイブにあるサムネイルのスケッチから作業しました。私が作成したのは、スタンリーが描いたいくつかの簡単な図面(表面の平野とクレーターの縁を示す単なる図)で、全てのセット上で非常に慎重に構成されていました。ボブ・カフとジョン・マッキーがアバカス社を結成し、映画制作を始めた後(私は後にボブと仕事をするために彼らに加わることになりました)、私は一人で月面模型を制作し、後の段階でモデルメーカーのロジャー・ディキンが加わりました。

〈以下略〉

(全文はリンク先へ:HISTORY PROJECT/Blogs/Anonymous's blog/The Stanley Kubrick Archives/2016年2月11日




 『2001年宇宙の旅』月面の模型を制作したジョイ・カフの書き込みがありましたのでご紹介。キューブリックが『2001年…』で行った特撮の方法は「原始的だがおそろしく手間がかかるもの」だということは知られていましたが、具体的な証言があるとイメージしやすいですね。いわゆる「マットペイント」と呼ばれる方法ですが、『2001年…』の場合、背景は絵(通常はリアルな背景絵を描く)ではなく石膏などで制作した模型を撮影し、それを背景素材として使ったようです。ムーンバス飛行中の窓の外を流れる風景は、模型をトラッキング・ショットで撮影したものが使用されたそうです。

 それにしても「人類の夜明け」の猿人たちが住む岩場だけでなく、月面のデザインまでキューブリックが指示していたとは。キューブリックが『2001年…』でアカデミー視覚効果賞を独占したことに異論を唱える向きもありますが、ここまで事細かに関わっていたとなると、それを単純に批判はできないでしょう。

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ムーンバスが月面を飛行するシーンの背景。

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モノリス発掘現場の背景と思われるが、映画とは月面の形状が違うのでボツになったか、修正を加える前のものかもしれない。

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ムーンバス着陸シークエンスのポラロイド。

 以下はIMDbのジョイ・カフのバイオグラフィ。「サンダーバード組」だったんですね。

 アートスクールを卒業した彼女の最初の仕事は、デレク・メディングスの彫刻家として『サンダーバード』(1965)に取り組んでいました。 彼女はAPフィルムの彫刻班で人形のための頭部を制作していました。 ジョイがAPフィルムに参加したときには、すでに作られていた主役ではなく、さまざまなエピソードに登場する悪役などの仕事をしました。

 1967年(1966年の間違い?)、ジョイはスタンリー・キューブリックの『2001年…』のために月の模型を作りました。 彼女はその時はまだミス・ジョイ・セドンでした。 ジョイは1964年にブライアン・ジョンソン(当時、デレク・メディングスと共に『サンダーバード』に取り組んでいたブライアン・ジョンコック)によってボブ・カフに紹介されました。ジョイは1969年にボブ・カフの息子(ポール・カフ)と結婚しました。


 こちらはジョイの最近のインタビュー動画です。

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