バリー・リンドン

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 キューブリックが『バリー・リンドン』を制作するとき、18世紀の再現に異常なまでの執念を燃やした話はよく語られますが、その資料となった画家たちの絵画と、『バリー…』でのシーンを比較した動画がありましたのでご紹介。

 ここに紹介されている画家たちとその絵は、「そのシーンに似た絵を集めた」というものであって、必ずしもキューブリックが「このシーンにはこの絵を参考にした」と断定できるものではありません(それが可能なのはキューブリック本人だけでしょう)。ただ、ウィリアム・ホガースやトマス・ゲインズバラ、ジョン・コンスタブル、ジョシュア・レノルズなどはよく名前の挙がる画家なので、これら18世紀の画家たちの多くの絵画を参考にしたのは間違いないでしょう。

 キューブリックが18世紀の再現に固執したのは、『2001年宇宙の旅』で21世紀の再現(・・・というより、可能な限りの未来予測)に固執したのと同様、作品の陳腐化を怖れたためではないかと考えています。キューブリックは自分の死後も作品は永遠に遺るのだから、自作になるべく長い期間、説得力と生命力を持たせたかったのではないでしょうか。それが成功を収めているのは、昨今のキューブリック作品の再上映や、『スタンリー・キューブリック展』の盛り上がりを見ても明らかです。

 同様の趣旨の動画ですが、こちらも参考にどうぞ。



上記動画で紹介されている絵画とその作者
"La mattina" William Hogarth
“Molly Longlegs” George Stubbs
“Il Campo di Grano” John Constable
“Assembly at Wanstead House” William Hogarth
"Blue Boy" Thomas Gainsborough
“Robert Orme” Joshua Reynolds
“La taverna” William Hogarth
“Mr and Mrs Andrews” Thomas Gainsborough
“Sarah Campbell portrait” Joshua Reynolds
“Penelope Unravelling Her Web” Joseph Wright of Derby.
“Il contratto" William Hogarth
“Morse's Gallery of the Louvre” Johann Joseph Zoffany,
“La passeggiata del mattino” Thomas Gainsborough
“L'incubo” di Johann Heinrich Fussli
“Malvern Hall Warwickshire” John Constable


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 鬼才S・キューブリック監督が18世紀のヨーロッパを舞台に、一人の青年が貴族にまで成り上がり、やがて国を追放されるまでの流転の半生を描いた華麗なる歴史大作。徹底的なリサーチに基づいた美術や衣装、新たに機材を開発し、ろうそくを光源に撮影された繊細で重厚な映像は、究極の映像美の一つとして高く評価されている。ヘンデルやアイルランド民謡を使った音楽も深く印象に刻まれる。アカデミー撮影賞など4部門を受賞。

【製作・監督・脚本】
スタンリー・キューブリック

【原作】
ウィリアム・メイクピース・サッカレー

【撮影】
ジョン・オルコット

【音楽】
レナード・ローゼンマン

【出演】
ライアン・オニール、マリサ・ベレンソン、パトリック・マギー ほか

製作国:ドイツ/イギリス
製作年:1975
原題:BARRY LYNDON
備考:英語/字幕スーパー/カラー/レターボックス・サイズ

(引用元:NHK BSシネマ




 2019年3月7日のキューブリック没後20年に向けて、キューブリック作品のオンエアが続いていますが、今度は『バリー・リンドン』です。録画希望の方は予約とハードディスクの空き容量のチェックを忘れずに。

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2016年にイギリスで再上映された際のオフィシャルトレイラー。



 スタンリー・キューブリック(Stanley Kubrick)監督が18世紀のヨーロッパを舞台に、一人の青年が貴族にまで成り上がり、やがて国を追放されるまでの流転の半生を描いた華麗なる歴史大作。映画『バリー・リンドン』がNHK BSプレミアムで4月26日(木)午後1時00分〜4時07分放送。

〈以下略〉

全文はリンク先へ:amass/2018年3月1日




 『バリー・リンドン』のNHK BSでのオンエアはけっこう珍しいのではないでしょうか。さて問題はアスペクト比がキューブリックの指定した1.66であるか否かですが、両側にピラーボックスが表示されればクライテリオン版の1.66、フルサイズで表示されればワーナーのBDと同じ16:9ということになります。注目しましょう。


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※アスペクト比1.66のクライテリオン版。リージョンA・日本語字幕なし


バリーリンドン [Blu-ray](amazon)

※アスペクト比16:9のワーナー版。

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カール・レヒリング作『ロイテンの戦い』(上)と『モルヴィッツの戦い』(下)(引用元:ART.com



 『バリー・リンドン』でバリーが参加したのは七年戦争の「ミンデンの戦い(1759年8月1日)」で、イギリス軍対フランス軍の戦闘でしたが、キューブリックはその映像化にカール・レヒリングが描いた『ロイテンの戦い(1757年12月5日)』『モルヴィッツの戦い(1741年4月10日に)』の絵を参考にしたそうです。「ロイテンの戦い」も「モルヴィッツの戦い」も対戦したのはプロイセン軍対オーストリア軍ですので、英仏が戦ったものではありませんが、同じ時期の戦闘ですので参考にしたのでしょう。

 特に『ロイテンの戦い』の絵は、打ち鳴らす太鼓も銃弾を浴びてもんどり打って倒れる兵士も映画と全く同じですね。キューブリックはこのように18世紀をそのままフィルムに映し取ることに固執し、膨大な絵画資料を漁ったようです。リサーチマニアのキューブリックらしいエピソードですね。

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Barry Lyndon Special Edition, Criterion Collection Blu-ray(amazon US)

キューブリックの遺志通り、ヨーロッパビスタ(1.66)で収録されたクライテリオン版BD。見本映像にはしっかりとピラーボックスが見える。


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キューブリックの遺志に反し、ピラーボックスなしのワイドサイズで収録されたワーナー版BD

 一体これこれの混乱は何だったの? と言いたくなりますが、やっと正しいアスペクト比1.66のヨーロッパビスタでリリースされました。

 キューブリックは『現金…』から『バリー…』まで、ヨーロッパビスタの1.66で視聴されることを念頭に映画製作をしてきました(例外は『スパルタカス』とシネラマの『2001年…』)。しかし状況はキューブリックの希望とは異なり、アメリカンビスタ(1.85)がヨーロッパビスタを押しやって業界標準の地位を築いてしまいました。仕方なくキューブリックは『シャイニング』から、TV放映やビデオ化を睨んで撮影はスタンダード、上映はその上下をトリミングしてヨーロッパビスタとアメリカンビスタ両方に対応できるフォーマットで映画製作を行いました。なぜならビスタサイズでフィルム制作してしまうと、テレビのスタンダードサイズ(1.33)に収まりきらず、勝手に左右をバッサリカットしてオンエアされてしまう可能性があったからです(あの時代の映画のTV放映ではそれが当たり前で、切れると読めなくなるタイトルやスタッフロールなどは無理やり長体変形をかけてオンエアしていました)。

 キューブリック逝去後、テレビはワイド(1.78)が標準になったため、「ビスタサイズのフィルムの左右をバッサリカットしてオンエア」という問題はなくなり、上映サイズ(ヨーロッパビスタ・アメリカンビスタ)≒ワイドテレビサイズでの視聴が当たり前になりました。それに対応して『シャイニング』以降のワイドTV対応のDVD/BDはピラーボックス(左右の黒い帯)はありません。しかしヨーロッパビスタでの上映のみを想定していた『現金…』(BDは日本未発売)『突撃』(BDは日本未発売)『ロリータ』『博士…』『時計…』『バリー…』のDVD/BDには1.78と1.66のサイズ差を埋めるピラーボックスがなければなりません。それが守られていなかったのは『バリー…』のBDだけでしたが、今回のクライテリオン版の登場で、やっとそれが果たされたというわけです。

 一時期行方不明と言われていたマスターが見つかったなど、事の詳細はプレスリリースがないので不明ですが、マスターから4Kスキャンされたという画質も見本映像を観る限り期待できそうです。キューブリックの遺志が尊重されたこのバージョンのワーナー版のリリースを是非ともお願いしたいですね。

 クライテリオン版BD『バリー・リンドン』の詳細情報はこちら、本家クライテリオンの紹介ページはこちらへどうぞ。

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