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一見合成を使ったように見えますが・・・。

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セットの設計図によると、両者の間には45度に傾けた鏡が設置されています。

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垂直に据え付けられたディスカバリー号のコクピットのセットに座るゲイリー・ロックウッド。

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セットは水平にも置けるように設計されていた。

 以前も記事にしたように、キューブリックはなるべく合成のプロセスを減らそうと、ありとあらゆるアイデアを駆使して「合成なしの一発撮影」をしていますが、このシーンはその好例です。

 セットの図面にあるように、カメラは左上から真下を向けてセットされています。その真下にいるのはプールで、カメラを見上げています。一方のボーマンは通路を普通に歩いていますが、両者の間には45度に傾けた鏡が設置されているのです。ただ、このままだとボーマンの服が左右逆さまになるので、あらかじめ左右逆さまの服を用意したのではないかと思っています。

 この方法だとセットは大掛かりになりますが、合成のプロセスは不要になります。それも大切ですが、そのシーンの撮影に入ってから、その場でアイデアを出し合って俳優の動きやセリフを決めるキューブリックのやり方は、このように合成などの後処理がないことで自由度が広がります。現在のCG前提による映画撮影では、あらかじめシーンの要素の全ての動きを決めておかなければならないので、どうしてもアクションや、セリフまでもが紋切り型になりがちです。つまり「表現」が「プロセス」によって固定されているのです。キューブリックは「表現」のためには「プロセス」を厭いませんでした(その代わりそれに振り回されたスタッフは疲労困憊でしたが・・・)。このことが現在の監督の作家性を摩滅させているのだとしたら、なんとも寂しい時代です。