スウェード/アニマル・ナイトレイト(Suede - Animal Nitrate)

 イギリスのロックバンド、スウェードが1993年に発表したデビューアルバム『スウェード』からのシングル曲『アニマル・ナイトレイト』のMVに、シャイニング・カーペットが登場しています。スウェードはそのビジュアルや歌詞から「耽美」とか「官能」とか「背徳」などの形容詞で呼ばれ、同時期の日本のバンドにも多大な影響を与えていましたが、今ではブリットポップのさきがけとして評価されているそうです。

 当時、このMVを観た記憶があるのですが、このカーペットには気づきませんでした。どうしてだろう? と思ったら、この頃『シャイニング』はあまり評価されていなかった(公開当時はラジー賞にノミネートされていた)んですね。『シャイニング』の再評価はスティーブン・キングが「満を持して」制作したTVドラマ版『シャイニング』が1997年にオンエアされ、「これで溜飲が下がる」と期待した原作ファンでさえ、キューブリック版の完成度にははるか及ばないと気付かされたことにより、反比例的に評価が高まってゆき現在に至った、という経緯があります。当時の日本の映画評論家の評を見ても微妙なものや勘違いしているものも多く、現在のような「名作・傑作」としてではなく「キューブリック作品にしては微妙」という扱いでした。それもあって『シャイニング』に登場した暗喩にはあまり注意が払われていなかったのです。今では信じられないですね。


 

メイビー・トゥモロー/ステレロフォニックス (Stereophonics - Maybe Tomorrow)

 次もイギリス・・・ではなく正確にはウェールズ出身のロックバンド、ステレオフォニックスの2003年に発表された4枚目のアルバム『ユー・ガッタ・ゴー・ゼア・トゥ・カム・バック』からのシングル曲。映画『ホワイト・ライズ』の使用曲でもあります。ホテル、廊下、タイプライター、唐突に現れる少女、ロックグラス、ケリー・ジョーンズのルックスなど、全編に『シャイニング』の要素が散りばめられています。歌詞を読むと創作するにあたっての「産みの苦しみ」を歌っているようで、それが『シャイニング』におけるジャックの苦悩と合致したんでしょう。

 こうしてキューブリックをオマージュしているミュージシャンやバンドを採り上げてみると、イギリス系か、アメリカでもイギリスっぽい音を出しているアーティストが多いのに気付かされます。いかにもアメ〜リカンで大陸的な「ドッダン、ドドダン、ギュイーン(以下ギターソロ)」みたいなバンドってあまりありません。キューブリックはアメリカ人ですが、ヨーロッパ移民の玄関口であるニューヨークの出身ですし、好んだ映画もヨーロッパの監督の作品が多く、自作でチョイスする音楽もヨーロッパが中心のクラシックばかりです。ピーカン天気と広大な大地と砂漠が広がる西海岸が性に合わず、イギリスを終の住処と決めたキューブリックの「嗜好(志向)」が、イギリス系アーティストとの親和性が高い理由かも知れませんね。

情報提供:鬼太郎さま