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 シド・ミードといえば『ブレードランナー』のプロダクトデザインを担当し、一躍有名になった工業デザイナーですが、のちに「ビジュアル・フューチャリスト」を名乗り、プロダクトデザインのみならず、その作品の世界観までデザインするアーティストとして一斉を風靡しました。日本では『YAMATO2520』や『∀ガンダム』で有名ですが、そちらはその方面の専門家にお任せするとして、キューブリックファンの見地からすると興味があるのはやはり『2001年宇宙の旅』の続編、『2010年』の主役宇宙船「アレクセイ・レオノフ号」を始めとするプロダクトデザインを担当した点です。

 当時、シド・ミードが『2010年』のプロダクトデザインを担当すると聞いて、ソ連といえば曲線的なデザインと刷り込まれていた管理人は「シド・ミードの直線的なデザインだとソ連の宇宙船に見えないのでは?」と危惧していました。デザイン画を見てもその印象は拭えず、「これじゃアメリカ製にしか見えない」と思ったものです。しかし、実際に映画でそのデザインを観るとそんなに違和感はなく、特撮班が頑張ったのか、ディスカバリー号とは対照的な無骨な重量感が存分に「ソ連製」を感じさせてくれました。アーサー・C・クラークが原作『2010年宇宙の旅』で書いた「レオノフ号がディスカバリー号をレ●プしている」というシーン(ドッキングシーン)も原作の印象と大きく違うものではなく、胸をなでおろしたものです。『2010年』という作品に関しては、キューブリックの『2001年…』と比較すること自体間違っていると思うし、それとは全く違う別物として、今現在観ても違和感なく楽しめる「ハードSF映画」として仕上がっていたと思います。それに工学的な知識に裏打ちされたデザインを心がけていた、シド・ミードが果たした役割は少なくないなと、今回の展覧会を観て改めて感じました。

 なお、会場では『ブレードランナー』のメイキング・ドキュメンタリー『デンジャラス・デイズ/メイキング・オブ・ブレードランナー』でシド・ミードが登場する部分が繰り返し再生されていました。ちなみにこのドキュメンタリーに共同制作者として登場するアイヴァー・パウエルは、『2001年…』で冷凍冬眠中にHALに殺されるカミンスキー博士を演じて(ただ寝ていただけですが。笑)います。(詳細はこちら)その他会場ではカーデザイナーとして活躍していた1960年代から、ハリウッドに進出してプロダクトデザインを担当した『スタートレック』『トロン』『エイリアン2』『ショート・サーキット』、そして前述した『YAMATO2520』『∀ガンダム』までと、来場者が3万人を突破し、会期が延長されたのも頷ける充実の展示内容でした。ただ、鑑賞の順路や音声ガイダンスの順番など、導線のレイアウトが良くなかったのが気になりました。あと入場料が2,000円、音声ガイダンスが500円というのも割高感(会場は旧小学校の校舎)がありました。それに地方巡回もしないそうなので、その点も残念です。

 会期は2019年6月2日まで。公式ホームページはこちら