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 聖なる夜に感動とサプライズは付きもの。心動かす贈り物から、驚きを隠せないクレイジーなものまで。私たちの涙と笑いを誘うクリスマスギフト名シーンをD姐がお届けします。

〈中略〉

綻びかけた夫婦に不可欠だったのは……。『アイズ・ワイド・シャット』

 巨匠スタンリー・キューブリックの遺作にして、トム・クルーズ&ニコール・キッドマン夫妻の最後の共演でもある問題作。冒頭からニコールの全裸&トイレシーン(トムが真横にいるのに!)という衝撃のシーンで始まり、濃厚で過激な官能的な作品でありながら、実は全編が聖なるクリスマスシーズン。夫婦という枠組みに囚われた、現代社会での葛藤と欲望、煩悩を現実として目の当たりにしてしまった後、最後に二人が子供を連れてクリスマス・プレゼントを買いに行く。ショッピング中のぎこちない夫婦の会話で、ニコール演じる妻が欲したものとは? 綻びかけた夫婦に不可欠なクリスマス・プレゼントをズバリ答えてくれています(多分)。そう考えると、この作品後ほどなくして二人が離婚してしまったのはちょっと意味深……。

〈以下略〉

(全文はリンク先へ:VOGUE JAPAN/2018年12月20日




 WEB版とは言え、VOGUEのようなメジャーな雑誌がキューブリック作品を採り上げるのは珍しいと思ったのでご紹介。

 ラストのセリフの「ファック」の意味ですが、管理人はさんざん(それこそ公開当時から)ダブルミーニングだと言っているのですが、あまり一般的な解釈ではないようで、鑑賞者のほとんどがその意味を肯定的(つまり愛の行為)な意味のみ解釈しているようです。個人的にはダブルミーニング大好き、捻くれ者で皮肉大好きなキューブリックがそんな甘い結末を用意するはずがないと思っているのですが。

 それに、物語構造が『時計じかけのオレンジ』と同じ(夜の冒険→いい気になってよからぬことに首をつっこむ→転換点のイベント→夜の冒険を全く違う立場でトレース→自分より大きな存在によって弄ばれていたことを知る→意味深な一言で終わる)であることを考えると、『時計…』の「完ぺきに治ったね」と同様、原作にはないこの「ファック」という言葉の意味を、もっと多くの鑑賞者が考えるべきだと思っています。

 「キューブリックは女性を描けない」とはよく耳にする批評ですが、この『アイズ…』に関してはキッドマンはクルーズより上の立ち位置で、常に冷静に物語を(眼鏡越しに)見つめています。キューブリックは愛妻家(というより、生涯クリスティアーヌにベタ惚れだった)であり、子供も三人とも娘という常に女性に囲まれた家庭環境であったことを考えると、「女性の正体」については熟知していたはず。『ロリータ』では様々な制約があって描けなかった「女性の正体」を、この『アイズ…』ではキッドマンに纏わせているし、『アーリアン・ペーパーズ』では主人公ターニャが、ナチス占領下のポーランドをずる賢くも逞しく生き抜く姿を、甥っ子のマチェックの目を通して語っていたはず。そう考えると、キューブリックの女性観を知るには『アーリアン・ペーパーズ』が最適だったと思わずにはいられず、中止になってしまったのは返す返すも残念です。