キューブリックは『2001年…』制作の参考にするために、古今東西ありとあらゆるSF映画・宇宙映画・ドキュメンタリーを観まくっていましたので、最も影響を与えた作品をどれか一本に特定するのは非常に困難なのですが、その中でもこの1955年公開の『宇宙征服(Conquest of Space)』は、「与えた影響が大きい作品のひとつ」に挙げても良いのではないかと思います。

【ストーリー】地球軌道上の宇宙ステーションでは、月面探検に備えて指揮官メリット以下6名の宇宙飛行士たちが準備に励んでいた。危険な宇宙空間での作業を乗り越え、間もなく出発という頃、目的地が火星に変更される。やがて、地球の家族に別れを告げて飛び立つ宇宙船。だが彼らの行く手には、宇宙船の故障や流星の飛来など、様々な困難が待ち受けていた。さらに、果てしない旅に恐怖を感じたメリットが心を病んでしまうのだが…。

(引用元:スターチャンネル/宇宙征服


 チープな特撮、強引な展開、唐突なお色気などツッコミどころはありますが、全体的にはシリアスなトーンが覆っています。車輪型の宇宙ステーション、月から火星への目的地変更、地球に残した家族との交信、アンテナの故障や船外活動での修理、クルーの事故死と宇宙葬、精神を病む指揮官、ハシゴのある宇宙船の立体構造、回転するセット、ブルーのつなぎの制服、キャプテンのクールなキャラクター造形、そして「神」への言及など、『2001年…』映画版・小説版との共通項はいくつも見つかります。それに、このプロットはクラークが当初考えていた『2001年…』の草案「地球外の人工物との出会いを、発端にではなくクライマックスに置くものだった。その手前では、いろいろな事件や冒険をとおして、月や惑星の探検が描かれるという趣向だ」にそっくりです。こういった点を勘案すると、『2001年…』にかなりの影響を与えたことが推察されますが、当のキューブリックも『月世界征服』『宇宙戦争』などのジョージ・パル作品の影響を認めていたそうです。ただし、この時期に観た多くのSF映画に対して「絶対的なリアリズムに欠けている」と批判していたことも忘れてはなりません。

 Dailymotionには全編がアップロードされていますが、削除になるかもしれません。字幕はありませんが、簡単な物語なので概要を掴むには問題ないでしょう。キューブリックとクラークが目指した「語り草になるいいSF映画」の出発点として、ファンなら観ておいて損はない作品だと思います。