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ロッキードAC-130H「スペクター」ガンシップに搭載された、ボフォース40mm機関砲に弾薬を装填するR・リー・アーメイ。(2006年)



ハートマン軍曹、ありがとう。

 スタンリー・キューブリック監督の映画『フルメタル・ジャケット』に「ハートマン軍曹」役で出演した俳優のロナルド・リー・アーメイさんが、肺炎による合併症のため死去した。74歳だった。アーメイさんのマネージャーが4月16日、公式Twitterで発表した。

〈以下略〉

(全文はリンク先へ:ハフポスト日本版/2018年04月16日



 R・リー・アーメイの逝去の報に関連して、いくつか事実誤認がみられますので、ここで事実関係を整理します。

 アーメイが『フルメタル…』に参加した経緯は、脚本で参加したマイケル・ハーの紹介によるものです。ハーは『地獄の黙示録』でヘリパイロット役兼テクニカル・アドバイザーだったアーメイを知っていて、ベトナム戦争の専門家を欲しがっていたキューブリックに紹介しました。当初は単なるアドバイザーでしたが、罵倒のセリフのあまりの迫真さ(アーメイは実際に海兵隊の訓練教官だった)にキューブリックに気に入られ、ハートマン役に決定していたティム・コルチェリ(ヘリで民間人を撃ちまくるドアガンナー役で復活)から急遽変更、抜擢されました。アーメイは「役が欲しかったので奪い取った」と発言しています。

 アーメイはしばしば「『フルメタル…』でアドリブを許された数少ない役者のひとり」と紹介されますが、そんなことはなく他の役者にもアドリブを試しています。キューブリックはむしろ撮影現場でのアドリブを重視した監督で、その意図はこの記事で解説しています。

 アーメイは『フルメタル…』の撮影中に片側(おそらく左側)の肋骨すべてを折る事故を起こして、撮影は5ヶ月間中断してしまいました。中断後の演技が格段に上達していたので、キューブリックはいくつかのシーンを撮り直しました。オープニングに続く新兵罵倒シーンは、その撮り直したシーンではないかと思います。常に左手を腰の後ろに当てているのがその理由です。ジョーカーが腹パンチを食らうシーンでは、殴る瞬間は左手ですが、実際に殴ったのは右手です。このことからも、左手をかばっていたことが伺えます。

 アーメイはその後もキューブリックと親交を続けましたが、キューブリック自身が『アイズ ワイド シャット』は駄作と告白したと証言したことが話題になりました(その記事はこちら)。ただ、これはプライベートな場での発言だったこと。キューブリックが本気で駄作だと考えるなら、公開を差止めることさえできたこと。キューブリックが『アイズ…』製作に並々ならぬこだわりと時間を費やしていたことなどを考えると、キューブリックが冗談を言った可能性が高いと考えます。キューブリックのジョークは周りの人をドン引きさせるほど「ブラックで」「キツくて」「容赦なかった」そうです。それほど「クルーズ夫妻につきあって批評家とランチをするのにうんざり」していたんでしょうね。

 そんなアーメイも故人となってしまいました。ご冥福をお祈りいたします。