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酸素供給を絶たれ、もがき苦しむプールを演じるスタントマンのビル・ウェストン。これら危険な撮影でウェストンは実際に酸素欠乏で死にかけた。



Stanley Kubrick 'risked stuntman's life' making 2001: A Space Oydssey

Director refused to stop filming as stuntman Bill Weston lost consciousness, new book claims

〈前略〉

 ビル・ウェストンはプール死亡シーンのスタントを担当しましたが、それはあやうく命を失いかける大変過酷なものでした。

 天井に貼られた黒いカーテンから垂直に垂らされたワイヤーに吊るされ、それを真下からカメラが狙っていました。高さは10mあり、セーフティーネットもなく、しかも宇宙服を着たままです。その宇宙服には酸素供給装置がありましたが10分しかもたず、撮影準備と撮影をするには短すぎました。しかも吐いた二酸化炭素の出口がありません。それでも構わずキューブリックは撮影を続け、ウェストンは次第に酸素欠乏に陥り、意識を失ってしまいました。

 幸いウェストンは意識を回復しましたが、怒り狂ってキューブリックと対決することを決心します。キューブリックは数日逃げ回った後、ギャラの大幅アップ、ビールでいっぱいの冷蔵庫がある控え室を条件に事態は沈静化しました。そのウェストン曰く「スタンリーは信じられないほど偉大な芸術家で完全主義者だが、少し道徳的な部分が欠けているのが弱点だ」

〈以下略〉

(全文はリンク先へ:The Guardian/2018年4月5日




 なんだか似たエピソードが『時計…』にもありましたね。マルコム・マクダウェルは水桶で窒息死しかかっていますし、『バリー…』の将校のホモシーンは、凍えるような冷たい川に浸かって撮影されました。『シャイニング』では老体に鞭打つスキャットマン・クローザースに対して、テイクを執拗に繰り返すキューブリックにジャック・ニコルソンが止めに入るという一幕も。キューブリックは撮影に夢中になると、つい俳優の安全をおろそかにしがちだったようですが、一度も死亡事故がなかったのは幸運としか言いようがありません。そのくせ自身の身の安全には神経質(飛行機に乗らない、車にスピードを出させない、ヘルメットを必要のない場所でもかぶるなど)だったというのですから、ちゃっかりしてます(笑。

 このエピソードはこの記事でご紹介した『Space Odyssey: Stanley Kubrick, Arthur C. Clarke, and the Making of a Masterpiece』に収録されているそうです。ぜひ邦訳を読んでみたいですね。