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※かなり素早いドリー・ショットなので一時停止しないとわからない。

 はっきりとスタッフか、もしくはエキストラの姿が映り込んでいますね。カメラの動きを考えるとこれは長いレールを敷いたドリーショットです。レールは地面の上に敷かれていたはずで、このスタッフはそのレールかカメラの影に寝そべって映らないようにしなければならなかったのに、カメラが通り過ぎたと勘違いして身を起こしたか、それとも想像以上にカメラが早くて隠れるタイミングを誤ったかのどちらかだと思われます。

 映画はカット(シーン)をつないで一本のフィルムにするのはどの監督も同じですが、そのカットを撮影する「回数」や「撮影期間」はその監督によってまちまちです。その回数や撮影期間が短かければ短いほどミスは起こりにくいのですが、キューブリックはそのどちらにもじっくりと取り組むのでミスが起こりやすい撮り方だと言えると思います。もちろん、念密な撮影計画を練り、撮影現場のセットやプロップの位置の変更を記録するためにポラロイドカメラを使ったりと、ミスをしない努力は怠らないのですが、いくら「完全主義者」と言われるキューブリックとは言え、「完全にミスをなくす」ことは現実的には不可能です。

 一つのショットに徹底的にこだわり、平気で一週間以上かけるキューブリックは、そのショットが自らの厳しい基準を満たす、充実したものだと感じれば迷わず採用します。その際、カットとカットをつなぎ合わせた際に生じる矛盾(セットや小物の配置が違うとか、ポーズが微妙にちがうとか)はよほど明確ではない限り無視します。ですので世間一般で言われる「キューブリックは完全主義者」とは「ミスを許さない完全主義者」ではなく、「細部までこだわり、自分が気に入るまで妥協を許さない完全主義者」であるというのが正しい理解です。その誤解を生まないよう、当ブログでは「こだわり主義者」(ちょっと苦しい言い方ですが)という表現を使っています。

 そのキューブリックですが、『ロリータ』ではモロに自分自身が映り込んでしまうという大ポカをやらかしています(その記事はこちら)。『フルメタル…』でのこのミスも、もし気づいていたとしても、このカットが気に入っていれば「しょうがないなあ! でもこれだけ早いとバレないか。それに以前俺もやらかしたし。」と思ってしぶしぶ採用したのかも知れませんね。

情報提供:okayu様