※キューブリックがこの『ハロー・ベトナム』をオープニングに使ったのは主戦派のプロパガンダの象徴として皮肉に感じたからだろう。歌詞の内容はまさしくドミノ理論そのままだ。

 ドミノ理論(ドミノりろん)とは、「ある一国が共産主義化すれば動きはドミノのように隣接国に及ぶ」という、冷戦時代のアメリカ合衆国における外交政策上の理論である。実際に起こった現象についてはドミノ現象と呼ぶ。

 「ドミノ理論」は、1954年に、ドワイト・D・アイゼンハワー大統領とジョン・フォスター・ダレス国務長官によって主張された考え方に端を発する(その語自体を当時の彼らが用いたのではない)。ドミノ理論は、冷戦時代のアメリカ合衆国の外交政策決定に関わる人々の間で、支配的な考え方であった。アメリカ軍によるベトナム戦争への介入にも、この理論が用いられた。

(引用先:wikipedia/ドミノ理論




 『フルメタル…』の舞台になったベトナム戦争時のアメリカでは、この「ドミノ理論」の考え方が支配的でした。それは作品内でも言及されていて、オープニングに使用された曲『ハロー・ベトナム』やハートマン軍曹の罵倒の台詞「アカの手先のおフェラ豚」などに反映されています。

 ただ、それについては作品の時代背景を感じさせる一要素に過ぎないという点は気をつけておくべきでしょう。キューブリックは『フルメタル…』で「戦争そのものを描く」事を目標にしていて、「ベトナム戦争のみを総括・定義する」という意図はなかったのですから。この点がアカデミー賞を受賞した『プラトーン』との一番大きな差異でしょう。

 「アラブの春」に代表される最近のイスラム革命や、1990年代のソ連の崩壊と東ヨーロッパの民主化もこの「ドミノ理論」による現象だと説明できるので現在でも有効な理論ですが、第二次世界大戦後の東アジアの共産化については、幾分ヒステリックにアメリカが煽ったという面はあるかと思います。でも今思えば、ベトナムの共産化よりも何百倍も酷い共産化がお隣の国カンボジアであったのですから、ヒステリーの一言で済ます訳にもいかないですね。なんでもかんでも首を突っ込みたがるアメリカにも困ったものですが、一旦首を突っ込んだらそれを完遂してもらわないと、干渉された国の内情は干渉前より酷くなるんだ、という現実をよく理解してから行動を起こして欲しいものです。