※ステディカムを使用した映画は『シャイニング』が初めてではないが、本作でキューブリックが見せたステディカムの有用性はその後の映画界に大きな影響を与えている。そのスティディカムの存在をキューブリックに知らしめたのがこの映像だ。

Steadicam Inventor Reveals the 'Impossible Shots' That Changed Filmmaking Forever (Exclusive)

映画製作を永遠に(しかも独占的に)を変えたステディカムの発明者が『不可能な映像』と題されたデモ映像を公開


(以下リンク先へ:The Hollywood Reporter/2014年8月14日




 ステディカムの発明者、ギャレット・ブラウンが製作したデモ映像の30ショットの内、10ショットのデジタル化に成功、ロカルノ国際映画祭の夏のアカデミーに参加中の学生向けに上映されました。それが上記の映像になります。記事はキューブリックにも言及していて、このデモ映像を見たキューブリックは「安定装置の影が見えているカットがあるので、もしまだ特許を取っていないのならそれを削除する事を勧める」とテレックスで返事が来たそうです。それに対しギャレットは「ぞっとし、慌てて14フレームを削除した」とインタビューで応えています。

 キューブリックがこのデモ映像を見たのは1974年で、丁度『バリー…』製作中の頃。『シャイニング』の原作を読むのが翌年ですので、次作の原作として『シャイニング』を選ぶ際、このステディカムの存在が影響したであろう事は容易に想像がつきます。キューブリックはステディカムを効果的に使用するのを前提にホテルをだだっ広くしたり、生け垣迷路を設定したりと原作の改変を行っています。よく『シャイニング』は「ステディカムの効果を最大限に生かした映像が特徴的」と語られるのですが、正確には「ステディカムの効果を最大限に生かしたいがために、物語の設定やストーリーを改変した」と言えるでしょう。だだっ広いホテルが舞台だと濃密な家族愛の物語にはふさわしくありませんので、原作の該当部分をばっさりカットしたのはこれが一因かも知れません。つまりステディカムの存在が無ければ『シャイニング』はもっと原作に近いイメージで映像化されていた可能性があります。そうなるとステディカムの発明の最大の被害者はスティーブン・キングという事になってしまいますね。まあ、ステディカムの存在がなければ『シャイニング』を原作に選ばなかったかも知れませんし、それは何とも言えませんが。

 それにしてもキューブリックも見たデモ映像がこうして見られるのは感慨もひとしおですね。思った以上に滑らかに動いていて、これならキューブリックが飛びつくのも頷けます。