元の脚本によると、ラストシーンは原作通りに、夜明けに寝室でビルがアリスに全てを告白するシーンで終わっている。なのにわざわざおもちゃ屋のシークエンスとこの台詞をつけ加えたのには、特別な理由があると考えられる。やはり「ファック=セックス」という意味だけではないのだ。劇中やたらアリスがこの言葉を口にするのも、ラストシーンだけでいきなり口走ってしまうと、唐突すぎてしまうからではないだろうか。

 このアリスを演じたキッドマンに「ファック」は「似合わない、下品だ」とか、「いや、上流社会の人間も一皮剥けばこんなもんだ、という皮肉だ」とか的外れな論評ばかり撒き散らしたメディアの責任は大きい。だが、一番の戦犯は字幕で「セックスよ」と訳した戸田奈津子氏だろう(ダブルミーニングなので「ファック」と訳すべき)。つくづくキューブリックとは相性の悪い翻訳家だ。