2017年07月

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shining
『シャイニング』でそれとなく置かれたマルボロ。

 アメリカを代表するタバコの銘柄で、キューブリック作品には『フルメタル…』『アイズ…』(看板として)にも登場しています。しかし『シャイニング』では何か特別な意図を感じてしまいます。何故ならwikipediaに以下のような記述があるからです。

 アメリカ合衆国の人種差別や迫害の歴史がタイトルの中に隠されているという説があり、パッケージを逆さまにしロゴの上半分を隠すとそれを印象付ける絵が浮かび上がるとされているが、このような話はたばこのパッケージにはつきもので、一種の都市伝説である。

(引用先:wikipedia「マールボロ」


 当ブログでは「『シャイニング』は白人至上主義によって迫害されたネイティブインディアンの怨念の物語」という暗喩が含まれている。という説を唱えていますが、それを裏付けるアイテムがまたひとつ加わったことになります。そもそもマルボロはカウボーイを広告キャンペーンに使用していました。カウボーイはアメリカ西部開拓史を象徴する存在です。当然、ネイティブアメリカンにとっては忌むべき存在。キューブリックはカルメットの缶でネイティブアメリカンを、このマルボロで侵略者たる白人を象徴させようとしたのかもしれません。もっとも「三作品ともイギリスで撮影されていたから、アメリカらしさを演出するため」という理由も考えられますが、さて真相はいかに・・・。
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 キューブリックは周囲の人間によると非常にウィットに富んだ愉快な人間だったようですが、その「ウィット」は多分に皮肉やブラックな要素を含んでいたらしく、『時計…』のアレックス役、マルコム・マクダウェルによると「炭のように黒い」と評するほどです。そこで今回はキューブリック作品内におけるジョークを、蛇足と知りつつも解説したいと思います。



LOLITA

『ロリータ』

ヘイズ夫人:「私のクイーンを取るの?」
ハンバート:「そのつもりですが」

解説:
これはチェスのシーンでハンバードとヘイズ夫人が交わす会話ですが、ここで言う「クイーン」とはロリータの暗喩で、「私のロリータを取る(奪う)の?」とヘイズ夫人の問いかけに対し、ハンバートは「そのつもりですが」としれっと答えます。ここでロリータが登場するのは、その暗喩をわかりやすくするためです。観客はハンバートがロリータを目当てに下宿しているのを知っているので、ここで笑ってもらおう、というキューブリックの意図ですね。その後下手な手を打ったヘイズ夫人に、「それは利口じゃない」と言いながらクイーンを奪うハンバートの姿は、その後の物語の成り行きを暗示しています。因みにこのシーンは原作にはないので、チェス好きのキューブリックが創作したことになります。


STRANGE

『博士の異常な愛情』

マフリー大統領:「作戦室で戦争は困る」
 
解説:
英語圏では『博士…』を代表するジョークとして広く知れ渡っていますが、日本語訳だといまいち面白さが伝わりません。元のセリフは「Gentlemen. You can't fight in here. This is the War Room!(君たち、戦争部屋で戦争は困る!)」ですので、「戦争する部屋」で「戦争するな」という矛盾で諌める大統領が面白い、という意味なのです。現在のDVDやBDの字幕や吹き替えは、必ずしもこのジョークの意図を汲み取ったものではないので、日本で全く知られていないのは仕方ないですね。


2001

『2001年宇宙の旅』

トイレの注意書き:「無重力トイレ よく読んで使用のこと」

解説:
これは古いファンにはおなじみのジョークシーンですが、新しいファンにはいまいち知られていないので解説します。つまり「急を要する便意に対して、あんなに事細かな注意書きのあるトイレだったら間に合わないだろ!」というジョークです。クラークによるとキューブリックは最初からこのジョークのためだけにこのシーンを作ったそうです。その注意書きの全文の邦訳はこちらをどうぞ。


ACO

『時計じかけのオレンジ』

作家アレキサンダー:「今ごろ だれかな?」

解説:
作家の邸宅への訪問シーンは二度ありますが、どちらも同じ横移動のドリーショットで始まります。一度目は美しい妻が登場、二度目はキモいマッチョが登場します。二度目のシーンではなにやら荒い息遣いが聞こえていますので、観客は「あの奥さんがなにかいやらしいことをしているのでは?」と期待するのですが、結果はマッチョの筋トレ(笑。というジョークです。ドリーショットがゆっくりなのは、観客に「あらぬ期待」をさせるためです。わかりにくい? 管理人もそう思います(笑。


barry

『バリー・リンドン』

ナレーション:「元閣僚 ハラム卿」

解説:
ハラム卿を演じているのは前作『時計…』で内務大臣を演じていたアンソニー・シャープです。特徴のある顔なのですぐ気づくはず。ですので、ナレーションの「元閣僚」とは「前作の閣僚(内務大臣)」であることを示していて、このナレーションの裏の意味は「元閣僚(前作で内務大臣)ハラム卿(を演じているアンソニー・シャープ)」になるのです。


shining,

『シャイニング』

酒:「ジャック・ダニエル」

解説:
ジャックが禁酒を解く酒は、原作ではジンやマティーニでしたが、映画版ではバーボンに変更になっています。バーボンになった理由はここで考察した通りですが、ジャック・ダニエルは正確には「バーボン」ではなく「テネシーウィスキー」(実質的にはほとんどバーボンと同じですが、バーボンとは名乗れない)です。バーテンダーのロイドはジャックに「バーボンをくれ」と言われているので、正確を期すなら「アーリータイムス」や「IWハーパー」や「ワイルドターキー」でもよかったはずです。なのになぜジャック・ダニエルなのかというと、「ジャック(ニコルソン)が演じるジャック(トランス)がジャック(ダニエル)を飲む」というジョークをキューブリックはやりたかったのではないか、と思っています。ここ、多分笑うところですね(笑。


FMJ

『フルメタル・ジャケット』

標語:FIRST TO GO LAST TO KNOW

解説:
この「FIRST TO GO LAST TO KNOW(まずは行け、知るのは後だ)」というのは当時のアメリカ海兵隊戦闘特派員の標語だったそうですが、そんな標語とは真逆に、現場に行こうともせず、事務室で記事の捏造を平然と指示するロックハート中佐の背後に常に見えていることから、そういった「事務屋」連中を皮肉ったものだと言えるでしょう。原作小説では最前線の兵士たちが、過酷な戦場に身を晒すのを巧みに避ける「事務屋」たちを毛嫌いする描写がありますが、それがベースになっているのだと思われます。


EWS

『アイズワイド シャット』

「スピードボールだかスノーボールだか」

解説:
ジーグラーの愛人マンディーがドラッグの過剰摂取で意識不明になるシーンですが、ビルに摂取したドラッグを説明したセリフです。「スピードボール」とはコカインとヘロインの併用物というドラッグですが、「スノーボール」とは『フルメタル』でハートマン軍曹の名言「ふざけるな!本日より雪玉二等兵と呼ぶ!気に入ったか?」でおなじみのスノーボール二等兵のことですね。ジーグラーはきっと『フルメタル…』を観ていたんでしょう(笑。『アイズ…』では他にも「カミンスキー夫人」や「ミラー先生」という名前が登場しますが、この両者とも『2001年…』の登場人物です。まあこれらはキューブリックのファンに対する一種のファンサービスかも知れません。わかりにくいですが(笑。



 わりあい有名なものを中心に採り上げてみましたが、キューブリック作品にはこの他にも細かいネタが仕込んであります。特に音楽の皮肉っぽい使い方(例えば『アイズ…』の例の邸宅での素っ裸のダンスシーンでフランク・シナトラの『ストレンジャーズ・イン・ザ・ナイト(見知らぬ者同士の夜)』が流れる、といった具合)は気づいているのといないのとでは作品の面白さが違ってきますので、「もう何度も観てるよ」という方でも、こういった観点から見直してみるのも良いかと思います。もし「こんなジョークに気づいたよ!」ということがありましたら掲示板にてお知らせください。
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2001年宇宙の旅 [Blu-ray](amazon)


 20世紀から21世紀当初には優れたSF映画がたくさんあった。これらの作品は希望と夢と悪夢の未来を大スクリーンに描き出し、衝撃的だが現実離れした予言を行なった。

 そして時は流れ2017年。中にはびっくりするほど的確な未来予測もあったが、外れてしまったものもあった。

 ちょっと時間軸がずれただけで、そのあと起こりうる可能性も高いものもから、ちょっとこじつけなんじゃないの?と思うものまで、その主だった10作品が海外ランキングサイトにて特集されていたので見ていくことにしよう、そうしよう。

〈中略〉

 SF映画史上の最高傑作に挙げられる本作品。劇中で描かれたいくつもの未来の技術が、後に現実に登場している。

 本作品がリスト入りしたのは、宇宙旅行の時系列に問題があるからだ。現段階では木星はおろか、火星への有人飛行も実現しておらず、2001年にHAL 9000のようなコンピューターも開発されていない。

 制作当時、スタンリー・キューブリックらは最新の宇宙技術について綿密な調査を行なっており、映画にリアリズムを与えることに成功した。

 同時に、未来的な雰囲気を演出するために現実の科学者を追い抜く必要もあった。このために興味深い技術が映画に登場しているが、それは現在と過去の趣を持つ。

 例えば、電話付きのブリーフケースだ。これはタブレットやスマートフォンとの類似点が見られるが、いずれにせよ2001年には登場していない。

 『2001年宇宙の旅』には、現代社会を超えている技術と古い技術が混在している。時系列の点ではまったく未来の予測を間違っていたが、方向性の点では正しかった。

〈以下略〉

(全文はリンク先へ:カラパイア/2017年7月2日




 『2001年…』関連の資料を読んでみると、キューブリックは最初からできるだけ正確にされた未来予測に基づく映画を作ろうとしたわけではなく、割とアバウトな「未来感」を持った映画を考えていたようです。手塚治虫に美術監督のオファーをしたのもそれが理由ですし、クラークとの共同作業で作り出された物語も、当初はいわゆる「当時のSF映画のクオリティの範囲」を大きく飛び越えるようなものではありませんでした。それが「超リアリズム主義」に変わったのは、スタッフにNASAを退職したばかりのフレデリック・オードウェイハリー・ラングが参加したのかきっかけだったのではないでしょうか。

 彼らを通して当時最先端のNASAのテクノロジーやデザインがキューブリックの元に届きだすと、とたんにキューブリックの「こだわりの虫」が騒ぎ出し、それまで決定稿と思われていた脚本に次々にNGを出し始めます。また、NASAを通じて当時NASAに協力していた関連各企業(IBMやGM、ベルなど)とのコネができたことをいいことに、映画内で企業の宣伝(セットやガジェットにロゴを入れる)をするのと引き換えにデザインを担当させるという方法を採用しました。このことが素人が勝手にデザインしていたそれまでのSF映画のセットデザインをはるかに凌駕した主な理由ではないかと考えています。同年に公開された『猿の惑星』にも宇宙船や冷凍睡眠装置が登場しますが、専門家のデザインと素人のデザインの違いははっきりと見て取れます。キューブリックが一番苦労したデザインは専門家のいない「宇宙人」(結局全てボツにした)だったことを考えると、『2001年…』が公開から50年になろうとしていうのに輝きを失わないのは、キューブリックの功績は当然としても、それに陰に日向に協力した数多くの「専門家」(もちろん科学者でもあったアーサー・C・クラークを含む)の存在があったことは、もっと周知されてしかるべきだと思っています。
 
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_SX342_
Barry Lyndon Special Edition, Criterion Collection Blu-ray(amazon US)


 クライテリオンから届いた10月のBLU-RAYリリース・ラインナップ。10/17登場予定となっているのが、今年の目玉作品のひとつとなる巨匠スタンリー・キューブリック監督作『バリー・リンドン』(75)です。

 18世紀のヨーロッパを舞台に、貴族に成り上がろうとする男の数奇な運命が描かれる。出演は『ある愛の詩』『ペーパー・ムーン』のライアン・オニール、『ベニスに死す』『ホワイトハンター ブラックハート』のマリサ・ベレンソン。アカデミー撮影・音楽(編曲/歌曲)・美術監督/装置・衣装デザイン賞受賞。同作品・監督・脚色賞ノミネート。

 35mmオリジナルネガからの4Kスキャン/ワークフロー版。狂おしいまでに拘り抜いたカメラ美術画、厳密に再現された衣装や風俗等々、どのように再現されるか、乞うご期待です!お楽しみに。

(詳細はリンク先へ:Stereo Sound Online/2017年7月18日

※記事にある動画は昨年イギリスで再上映された際の予告編で、今回の4K版のものではありません。





 記事中に「35mmオリジナルネガからの4Kスキャン」とありますが、これが事実ならちょっとしたトピックです。実は『バリー…』のオリジナルネガは紛失したとされているからです。それがついに発見され、キューブリックの指示通りのアスペクト比、1:1.66での4K化ということになります。

 特典については

・Blu-rayは新4Kデジタル復元、非圧縮モノラルサウンドトラック付き

・Blu-rayのDTS-HDマスターオーディオはアルティメイト5.1サラウンドサウンドトラック

・1976年のキューブリックのオーディオインタビューからの抜粋だけでなく、キャストとクルーのインタビューを収録した新ドキュメンタリー

・1980年の撮影監督ジョン・オルコットのインタビューからの抜粋だけでなく、撮影助手のダグラス・ミルサムと撮影主任のルー・ボーグによる映画の画期的なビジュアルに関する新番組

・アカデミー賞を受賞したプロダクションデザイナー、ケン・アダムと、歴史家クリストファー・フレイリングの新番組

・編集のアンソニー・ローソンの新しいインタビュー

・1976年にオスカー賞を受賞した衣装デザイナー、ウルラ=ブリット・ショダールンドのフランステレビによるインタビュー

・批評家ミシェル・シマンの新しいインタビュー

・レオン・ヴィタリが監修した5.1サラウンドサウンドトラックについての新しいインタビュー

・芸術学芸員のアダム・エーカーが、映画からインスパイアされた美学を分析する新しい作品

追加:『アメリカン・シネマトグラファー』1976年3月号から、批評家ジェフリー・オブライエンによるエッセイ

となっています。特にレオンのインタビューが興味を惹かれます。期待して10月を待ちましょう。また、ワーナー版での発売も期待したいですね。
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 スティーヴン・キング原作の同名小説をスタンリー・キューブリック(Stanley Kubrick)が映画化した『シャイニング』(1980年)。この名作を1分間に凝縮したアニメーション映像が話題に。ドイツ・フランス共同テレビ「arte」が映画本編の放送にあわせて制作しています

(引用先:amass/2017年7月5日




 ネタバレしすぎだろっ!というツッコミはさておき、あまり感心しない&クオリティの低い完成度ですね。こういった手描きアニメーション風のイラストや動画はデジタル全盛の昨今、ある程度のセンスとスキル(単なるトレースだし)があれば誰でもできてしまうので、あまりインパクトはありません。昔、a-haの『Take On Me』という曲のPVがありましたが、アナログしかない30年前でもこのクオリティは出せますしね。

 まあ、TV局が制作したTV放映プロモーション用の映像ですので、予算が限られていたんでしょうけど、それでもアイデア次第でこのようなハイクオリティなパロディ映像も作れます。



これは2008年にイギリスTV局のチャンネル4が制作した、キューブリック特集『Kubrick Season』用のプロモーション映像ですが、DVDやBDに収録されている『メイキング・ザ・シャイニング』を観ていればより楽しめます。つまり「マニア心をくすぐる」んですね。このレベルを望むのは酷かもしれませんが、もう少し頑張って欲しかった、というのが正直なところです。
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