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Identical Twins, Roselle, New Jersey, 1967(Wikipedia)

 著名な女性写真家、ダイアン・アーバスの代表作。キューブリックは『シャイニング』の双子の幽霊でこの作品のモチーフを使い、自殺してしまったアーバスにオマージュを捧げている。
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ロリータ [Blu-ray](amazon)


 現在使われている、「ロリータ・コンプレックス(ロリコン)」という言葉は、「従順で大人しい、可憐な聖少女」的な意味合いで使われる事が多いようだが、原作よると、単純にそういう意味ではなく「狡猾で小生意気で口の悪い、蠱惑的な少女」といったニュアンスで定義されている…と思われるのだが、とにかく主人公であるハンバート氏の偏執的な少女への視線や妄想が凄すぎて、とてもじゃないが一般人には理解不可能。歩き方や仕種、話し方から肌のツヤ、揚げ句の果てにテニス・ウェアから覗く脇毛まで(謎)、彼の定義に当てはまらないものはニンフェット(妖精)とは呼ばないし、興味もないらしい。

 この映画はよく「ミス・キャスト」と評されることが多いようだが、原作を読んでみると一概にそうとは思えない。(原作のナボコフはこの映画を気に入っていたらしい)長篇の小説だが、よくまとめられて映像化されていて、ナボコフのファンだったというジェイムズ・メイソンも、ハンバートの「いっちゃってる」さ加減を上手く演じていた。それにピーター・セラーズの怪演も見逃せない。TV作家なる怪しげな職業の業界人は、キューブリックが生涯忌み嫌った、ハリウッドに巣くう胸くそ悪い連中を戯画化した姿だとも言えるだろう。

 とにかく一方的に妄想に溺れるハンバートの間抜けさ加減は、可笑しくもあり、情けなくもあり、憐れでもあるが、「男の恋愛」とは、はたから見ればその対象は誰であれ、以外とこんなものかもしれない…。そんなキューブリックの冷めた視線で描かれた「ブラック・コメディ」として観るべきではないだろうか。ハンバートは最後の最後に、妊婦になった一介の主婦姿のロリータを見て、自分が愛していたのは「ニンフェット」ではなく、あれだけ忌み嫌った母親シャルロットの血を確実に受け継いでいる、ロリータという「一人の女性」だったことに気づいてしまうのだが、それが少女の肖像画の頭部を銃で打ち抜く(少女愛からの決別)というラストシーンに象徴されている。ここにも「恋愛に対する男の身勝手な幻想」を打ち砕く、キューブリックらしい「皮肉の一撃」が感じられる。ただ、少しツメは甘かったかも知れない。当時の社会状況とか、タブーを考えれば仕方ない事かとは思うが。

 キューブリック自身も後に、「当時の様々な圧力団体の干渉を受け、ハンバートとロリータのエロティックな関係を充分脚色できなかった」と言っている。ロリータも原作の設定より少し年上の少女をキャスティングするしかなかったようだ。しかしこの37年後、『アイズ ワイド シャット』の少女売春婦役にリーリー・ソビエスキーをキャスティングして、この無念を晴らしている。(恐るべき執念…)彼女のような少女系女優がこの『ロリータ』でキャスティングされていたら、さぞかし異様な映画になっていただろう。

 近年、例の「ロリータ・ファッション・ブーム」で、この映画のポスターやポストカードを度々街で見かけるようになった。それはそれで良い傾向だとは思うのだが、やはり作品自体も観て欲しい。(この作品には性描写はまったく出てこないので、未成年者や女性でも心配ない)なぜなら、初期のキューブリック作品で最も冷遇されている隠れた名作だと思うからだ。

 この作品でキューブリックが皮肉ったのは、いわゆる「ロリコン」ではなく、女性を矮小化し、自分の好みのわくに閉じこめ、束縛しようとする男の独善的な欲望だ。(男自身はそれを「愛」と呼んでいる)その点は決して見誤ってはならない。
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時計じかけのオレンジ [Blu-ray]


 一般的に「難解」と言われるキューブリック作品の中でも、この『時計じかけ…』は例外的にシンプルで明快な作品だ。だが、未だにアレックスが罰らしい罰を受けずに復活するラストに違和感を覚え、それを批判する人も少なくない。これではキューブリックも浮かばれない。

 初公開当時「激しすぎる」と批判された暴力シーンも、現在の感覚からすれば、たいしたことはない。なのに今日に至ってもその描写に激しい拒否反応が噴出するのは、所謂「映画のお約束」の枠を越えているからだろう。つまり、今日の暴力描写はいくらそれが激しくても、「これはフィクションですよ」というお約束の中でなされている。しかし『時計じかけ…』にはそれがない。まるで、実際に暴力の現場を目撃しているかのような映像感覚…。それはひとえにキューブリックの天才的なカメラワークのなせる技だろう。

 やがて、アレックスの暴力三昧の日々はあっけなく逮捕という結末を迎える。しかしここでも暴力、暴力、暴力の嵐…。警官によるアレックスへの暴力、刑務所内での暴力(アレックスがホモ囚人を殴り殺すシークエンスはカットされてしまったのだが)、そして、権力者が一般大衆に対して行う最も恐ろしい暴力「洗脳」。かつて暴力で権力者を困らせたアレックスは、きっちりとその暴力で権力者に仕返しされてしまうのだ。

 アレックスにとって生きる喜びと自由意思の表現であった暴力(ついでに性欲とベートーベンも)を奪われ、見た目は有機物でも中身は機械人間、つまり『時計じかけのオレンジ』にされてしまう。そんな無力な彼を、かつて虐げた連中が暴力で仕返しをする。揚げ句、反体制小説家はアレックスを自殺に追い込み、それを政府批判の世論操作に利用しようと企てる。

 だが、その企ては失敗に終わり、今度は逆に権力者が広告塔として利用するために元の暴力的な人格に戻される。つまるところアレックスは暴力で逮捕され、暴力で洗脳され、暴力で解放されたことになる。しかもアレックスを取り巻く連中(権力側、反政府側、それにかつて虐待した老人でさえ)もそれぞれ暴力でそれに応える。このうんざりさせられるほどの「暴力の連鎖」。これこそがこの作品の核心であり、それを持ちあわせているのが「人間」という存在なのだ。

 ラスト、暴力性を取り戻し、ベートーベンの第九を聴きながら、性夢を夢想し、陶酔するアレックス…。これを単純な善悪の二元論で解釈してしまうと「アレックスが無罪放免なのが許せない」となってしまう。だが、残念ながら人間は聖人君子ではない。アレックスは多かれ少なかれ、等しく皆の心の中に住んでいるからだ。

 人間の暴力性と権力者の横暴、それに魂の救済であるはずのキリスト教でさえ暴力性を内包している(聖書を暴力・エロ本扱いにするなんて…)と告発したキューブリック。そのキューブリックは公開当時、マスコミの一大「暴力賛美映画」批判キャンペーンにより、本人はおろか家族まで脅迫されるという事態に追い込まれてしまう。それは奇しくも『時計じかけ…』で描かれている世界が現実のそれと何ら変わらない、という事を証明する事にもなった。もちろん、公開から35年以上を経た現在でも、この作品が突きつけてくるテーマは全く色褪せていない。むしろ、テロや犯罪が世界中で蔓延する現在の方が、より説得力を持ってこの作品を観ることができるのではないだろうか。

 尚、作品としては間違いなく星5つの評価だが、原作の素晴らしさに負う所も大きいので、その分マイナス1とした。原作の独自解釈・分解・再構成がお得意のキューブリックしては、素直に映像化しているところからも、キューブリックがこの原作を高く評価していた事が伺える。
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RLErmey
R. Lee Ermey (IMDb)
R・リー・アーメイ(MOVIE-FAN)

 『フルメタル…』には、最初はテクニカル・アドバイザーとしての参加だったが、キューブリックに見いだされて、鬼教官ハートマンを熱演した。実際に元教官で、ベトナム戦争へは下士官として参加している。この役の印象がよほど強烈だったせいか、他の出演作でも『トイ・ソルジャー』(1991)では将軍、『トイ・ストーリー』(1995)、『トイ・ストーリー2』(1999)、『トイ・ストーリー3』(2010)、『Xマン3』(2006)では軍曹の声、『セブン』(1995)では警察署長など、軍、警察関係が目立っている。また、ノー・クレジットながら『地獄の黙示録』(1979)にヘリ・パイロット役で出演している。1944年3月24日アメリカ・カンサス州生まれ。自身のサイトはこちら
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ロリータ(amazon)


1. Main Title (Love Theme From Lolita) (1:57)
 メイン・タイトル(「ロリータ」愛のテーマ)
 Bob Harris / Nelson Riddle & His Orchestra

2. Quilty (Qulity's Theme) (2:52)
 クイルティのテーマ
 Bob Harris, Nelson Riddle / Nelson Riddle & His Orchestra

3. Quilty As Charged (0:49)
 クイルティ・アズ・チャージド(セリフ)
 Bob Harris, Nelson Riddle / Nelson Riddle & His Orchestra

4. Ramsdale (Arrival in Town) (0:45)
 町への到着
 Bob Harris, Nelson Riddle / Nelson Riddle & His Orchestra

5. Cherry Pies (0:28)
 チェリー・パイ(セリフ)
 Bob Harris, Nelson Riddle / Nelson Riddle & His Orchestra

6. Lolita Ya Ya (3:23)
 ロリータ・ヤー・ヤー
 Bob Harris, Nelson Riddle / Nelson Riddle & His Orchestra

7. Hula Hoop (0:10)
 フラ・フープ(セリフ)
 Bob Harris, Nelson Riddle / Sue Lyon, Shelly Winters

8. There's No You (3:21)
 ゼアーズ・ノー・ユー
 Tom Adair, Hal Hopper / Nelson Riddle & His Orchestra

9. Quilty's Caper (Scholl Dance) (1:50)
 スクール・ダンス
 Bob Harris, Nelson Riddle / Nelson Riddle & His Orchestra

10. "A Lovely, Lyrical, Lilting Name" (0:23)
 愛しの名前(セリフ)
 Bob Harris, Nelson Riddle / Shelly Winters

11. Put Your Dreams Away (For Another Day) (3:05)
 アナザー・デイ
 Bob Harris, Nelson Riddle / Nelson Riddle & His Orchestra

12. Shelley Winters Cha Cha (3:11)
 シェリー・ウインタースのチャ・チャ
 Bob Harris, Nelson Riddle / Nelson Riddle & His Orchestra

13. Music To Eat By (Mother and Humbert At Dinner) (1:52)
 ミュージック・トゥ・イート・バイ
 Bob Harris, Nelson Riddle / Nelson Riddle & His Orchestra

14. Love Theme From Lolita (4:14)
 「ロリータ」愛のテーマ
 Bob Harris / Nelson Riddle & His Orchestra

15. Diary Entry (0:25)
 ダイアリー・エントリー(セリフ)
 Bob Harris, Nelson Riddle / James Mason

16. The Last Martini (Discovery Of Diary) (1:40)
 日記の発見
 Bob Harris, Nelson Riddle / Nelson Riddle & His Orchestra

17. Charlotte is Dead (Thoughts of Lolita) (4:04)
 シャーロットは死んだ
 Bob Harris, Nelson Riddle / Nelson Riddle & His Orchestra

18. Instant Music (Two Beats Society) (2:12)
 インスタント・ミュージック
 Bob Harris, Nelson Riddle / Nelson Riddle & His Orchestra

19. Don't Smudge Your Toenails (0:34)
 足の爪を汚さないで(セリフ)
 Bob Harris, Nelson Riddle / Sue Lyon, James Mason

20. The Strange Call (4:02)
 変な電話
 Bob Harris, Nelson Riddle / Nelson Riddle & His Orchestra

21. Mrs. Schiller (2:03)
 ミセス
 Bob Harris, Nelson Riddle / Nelson Riddle & His Orchestra

22. Twenty-Five Paces (0:18)
 25歩(セリフ)
 Bob Harris, Nelson Riddle / Sue Lyon, James Mason

23. End Title (4:32)
 エンド・タイトル(「ロリータ」愛のテーマ)
 Bob Harris / Nelson Riddle & His Orchestra



 ボブ・ハリスのペンによるロマンティックなピアノ曲「メイン・タイトル」をBGに、少女のロリータにペディキュアを塗るハンバートの手がアップになる。この淫媚で猥雑なシークエンスだけで、微妙なハンバートとロリータの関係が想像できる、すぐれたオープニングだ。尚、この曲を書いたボブ・ハリスはプロデューサーのジェームズ・ハリスの実弟。身内を使いたがるのは何もキューブリックばかりではない。

 いかにも50年代的なポップス「ロリータ・ヤ・ヤ」は、開放的で奔放なロリータのテーマ・ソングだ。タンゴのリズムがちょっと小バカにしているように聴こえるのは、終始高飛車だったロリータの性格のせいかもしれない。

 「シェリー・ウィンタースのチャチャ」は、酔っぱらったヘイズ婦人が、嫌がるハンバートを無理矢理ダンスに誘うシークエンスで使われている。でも、なぜ役名でなく役者名の曲名がついているのだろう?

 「ミセス・シラー」とは、まだ年端もゆかぬというのに、怒濤の人生を過ごした挙げ句、貧乏でだらしない妊婦に成り果てたロリータの事を指していて、ラスト直前のハンバートとの対峙するシークエンスに用いられている。

 ラストを飾る「エンド・タイトル」は、やっと少女愛から決別したものの、愛するロリータには別れを告げられ、キルティを殺した罪で逮捕、投獄され、その後獄中死してしまうハンバートの悲劇的な最期を効果的に盛り上げている。

 キューブリックは当初「サイコ」で有名な作曲家バーナード・ハーマンを起用する事を考えていた。しかし結局はフランク・シナトラ等に楽曲を提供していたネルソン・リドルに決定するのだが、当時キューブリックは、サウンドトラックをあまり重視していなかったのか、その後の作品で見られる「音楽と映像の相乗効果」や「アイロニックでシニカルな音楽起用」という方法論は感じられず、どちらかというと割とオーソドックスな方法論でまとめられている。また、この経緯から伺えるように、ヒッチコックの影響も感じさせる。

 この作品以降加速する「キューブリック独自の音楽起用」を知るものとしては少し物足りなさも感じるが、再発・再構成CDとしてはよくまとまっているし、どちらにしてもオリジナル音源は入手困難だろうから、ファンなら持っていてもいい一枚だろう。
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