スタンリー・キューブリック マスターピース・コレクション(初回限定生産/9枚組) [Blu-ray](amazon)
メーカー：ワーナー・ホーム・ビデオ
発売日：2014年12月3日
希望小売価格：14,790円＋税
品番：1000533203
ASIN：B00NHTKJ6Q
EAN：4548967135923
ディスク枚数：9枚
ディスク内容（デジパック仕様）は以下の通り
Disc 1『ロリータ』
映像：【ヨーロッパビスタ】
High Definition 1080p／スクィーズ
画面：【16：9】サイドパネル
本編：154分
音声：英語（1.0ch DTS-HDMA）
録音：ドルビーデジタル
字幕：日本語・英語
特典：オリジナル劇場予告編
Disc 2『2001年宇宙の旅』
映像：【シネマスコープ（1：2.2）】
High Definition 1080p VC-1／スクイーズ
画面：【16：9】レターボックス
本編：148分
音声：オリジナル英語（5.1chサラウンド）
オリジナル英語（5.1Dolby TrueHD）
キア・デュリア、ゲイリー・ロックウッドによる音声解説
字幕：日本語、英語字幕、英語（For the Hearing Impaired）、音声解説用
特典："2001年"という神話（43分）
キューブリックが残した遺物（21分）
キューブリックの見た未来（21分）
2001年という"未来"（23分）
"2001年宇宙の旅"の哲学（20分）
コンセプチュアル・アート（9分）
キューブリックの初期作品（3分）
キューブリックのインタビュー（76分）※メニュー画面静止画
（日本語字幕未収録、対訳書封入）
オリジナル劇場予告編（1分51秒）
Disc 3『時計じかけのオレンジ』
映像：【ヨーロッパビスタ】
High Definition 1080p VC-1 ／スクイーズ
画面：【16：9】サイドパネル
本編：137分
音声：オリジナル英語（5.1ch dts-HDMA）
マルコム・マクドウェル、ニック・レッドマンによる音声解説
字幕：日本語、英語
録音：ドルビーデジタル
特典：ドキュメンタリー（43分）
メイキング（28分）
現代社会の歪みと時計じかけのオレンジの世界観（25分）
“あの頃は〜”当時をふり返って （10分）
オリジナル劇場予告編
Disc 4『バリー リンドン』
映像：【16：9】
High Definition 1080p
画面：【16：9】
本編：185分
音声：オリジナル英語（5.1ch dts-HDMA）
録音：ドルビーデジタル
字幕：日本語・英語
特典：オリジナル劇場予告編
Disc 5『シャイニング』
映像：【ビスタ（16：9）】
High Definition 1080p VC-1／スクイーズ
画面：【16：9】
本編：119 分
音声：オリジナル英語（5.1chサラウンド）
オリジナル英語（5.1ch PCM）
フランス語（5.1chサラウンド）
ドイツ語（5.1chサラウンド）
イタリア語（5.1chサラウンド）
Castellano（5.1chサラウンド）
ギャレット・ブラウンとジョン・バクスターによる音声解説
字幕：日本語、英語、音声解説用 他
特典：オリジナル劇場予告編
恐怖の展望ホテル（30分）
スタンリー・キューブリックの世界（17分）
メイキング・ザ・シャイニング（34分）
（ヴィヴィアン・キューブリックによる音声解説）
インタビュー／ウェンディ・カーロス（音楽）（7分）
Disc 6『フルメタル・ジャケット』
映像：【16：9】
High Definition 1080p VC-1／スクイーズ
画面：【16：9】
本編：117分
音声：オリジナル英語（5.1chサラウンド)
オリジナル英語（5.1ch PCM)
アダム・ボールドウィン、ビンセント・ドノフリオ、リー・アーメイ、ジェイ・コックスによる音声解説
録音：ドルビーデジタル
特典：フルメタル・ジャケット：善と悪の境（30分）
オリジナル劇場予告編
Disc 7『アイズ・ワイド・シャット』
映像：【16：9】
1080p HD収録／スクイーズ
画面：【16：9】
本編：159分（無修正オリジナルマスター版）
音声：5.1chサラウンド（日本語吹き替え収録）
録音：ドルビーデジタル
特典：ドキュメンタリー（もうひとつの使命ーA.I.についてーキューブリックを語る）
キューブリックの未完成作品
１９９８年度Ｄ．Ｗ．グリフィス賞
クルーズ、キッドマン、スピルバーグインタビュー集
ＴＶスポット集（「Jealousy」「Combo」）
オリジナル劇場予告編
Disc 8 ボーナスディスク1
STANLEY KUBRICK:A LIFE IN PICTURES
O LUCKY MALCOLM!
（約227分）
Disc 9 ボーナスディスク2 ※新規特典ディスク
キューブリックの素顔（KUBRICK REMEMBERED）
キューブリックの原点（KUBRICK IN FOCUS）
“時計じかけのオレンジ”を分析する（ONCE UPON A TIME… A CLOCKWORK ORANGE）
（約164分）
封入特典：フォトブックレット（76ページ）※未見の資料や撮影現場の写真が多数掲載
アートカード（1枚）※クリスティアーヌによるキューブリックの肖像画
ドキュメンタリーレター（1枚）※『…リメンバード』のプロデューサー、ゲイリー・カマーの序文
豪華外箱＆帯
備考：Disk1〜8は『スタンリー・キューブリック リミテッド・エディション・コレクション』と同内容。
『スタンリー・キューブリック：マスターピース・コレクション』の特典映像として収録された『キューブリック・リメンバード』は、ファン必携の名作ドキュメンタリー『ア・ライフ・イン・ピクチャーズ』の第二弾と言うくらい充実した内容になっています。『…ピクチャーズ』はキューブリックのヒストリーとキューブリック作品を、時系列に関係者が紹介・証言したものでしたが、今回の『…リメンバード』はキューブリックの良き家庭人として、そして優れた映画製作者の側面を紹介したもので、完全に『…ピクチャーズ』とは補完関係になるように構成されています。
収録されているインタビューはキューブリックのドキュメンタリーではおなじみのクリスティアーヌ、カタリーナ、ヤン・ハーラン、ジェームズ・B・ハリス、スピルバーグ、レオン・ヴィタリ、マルコム・マクダウェルなども登場していますが、珍しいのは『時計…』や『フルメタル…』のポスターのアートワークを担当したフィリップ・キャッスル、『バリー…』からは主役のライアン・オニール、バリーの初恋の相手ノーラを演じたゲイ・ハミルトン、ブリンドン卿の幼少時代を演じたドミニク・サヴェージ、『アイズ…』の少女のリーリー・ソビエスキー、マリオンの恋人カールを演じたトーマス・ギブソンなどが製作現場やプライベートでのキューブリックの素顔を証言しています。
構成は前半がキューブリックの家庭人としてのプライベートの証言、後半は映画製作のプロセス（キャスティングなどプリプロダクション→撮影→編集などポストプロダクション→宣伝→公開）に合わせて証言されています。更には突然の死に対するそれぞれの想い、現在世界を巡回中のスタンリー・キューブリック展の紹介もされています。ただ、収録作品の関係か『現金…』以前の作品や、キューブリックの二人の先妻については一切言及がありませんでした。まあ、この頃のキューブリックに関しては『…ピクチャーズ』で充分に語り尽くした、という事なのでしょう。
死の前後の状況を語るクリスティアーヌは、世間で無責任に流布されているいわゆる「キューブリック暗殺説」を意識したものになっています。カタリーナも父娘の確執を証言してますが、ここにヴィヴィアンが登場すれば素晴らしかった（次女のアンヤはすでに故人）のですがまだ無理なんでしょうね。俳優やスタッフの証言は、キューブリック作品の製作現場がいかに他のハリウッド作品とはかけ離れているのかをよく表しています。予算に厳しいが少人数で家庭的な現場。俳優の自然な演技を引き出すために、また選択肢を多く持ちたいがために多テイクになり撮影が長時間に及ぶこと。リサーチなどプリプロダクションを徹底すること。「これからは俺の時間」と言って編集を楽しんでいる様子。こういった点は当ブログでも再三にわたってご紹介しています。また、リーリーが語る「ファミリービジネスだった」というのは、キューブリックがスタッフに家族を重用した事実を物語る証言で、ケータリングを担当した義理の息子のフィリップ・ホッブス、『アイズ…』に出演した孫のアレックスを指していると思われます。キューブリックの家族がいかにキューブリック作品に参加しているのかはこちらでまとめて記事にしていますので参考までにどうぞ。
ライティングの話も興味深かったです。ここには登場していませんがジャック・ニコルソンが「照明のリハーサルにも俺が呼ばれて（通常代役で行う）まいった」と愚痴っていましたが、他人だと顔の形が違うので、落ちる影も違ってしまいます。キューブリックはそれを嫌がって本人で延々とリハをしたのでしょう。その効果は特に『シャイニング』ではっきりと分かります。
映像は既知のものが多く新鮮さほとんどありませんが、使えるソースはもうあまり残っていないんでしょうね。ヴィヴィアンが『フルメタル…』のドキュメンタリーを作ろうとして撮影した映像はまだ残っているかもしれません。いつの日にかヴィヴィアンが戻ってきてそれを完成させて欲しいものです。
キューブリックのドキュメンタリーは本作を含めいくつかリリースされていますが、この『…リメンバード』と『…ピクチャーズ』だけとりあえず押さえておけばキューブリックに関する最低限の知識は得られるでしょう。そういった意味では両作品が収録された『マスターピース・コレクション』の存在価値は高いのですが、二度に渡ってリリースされたBDのボックスセット（『スタンリー・キューブリック コレクション』と『スタンリー・キューブリック：リミテッド・エディション・コレクション』）を所有していると二の足を踏んでしまうのもまた事実。ここではあまり期待できない旨の記事を書きましたが、『…リメンバード』単独リリースの可能性は過去の事例から考えてまずないでしょうから、ワーナーの思惑に振り回されるようであまり言いたくはないのですが、資料と撮影現場写真が多数収録された内容充実のブックレットも併せると、BDのボックスとしては現時点で『マスターピース・コレクション』が決定版だと言えるでしょう。
尚、『マスターピース・コレクション』には他に『ワンス・アポン・ア・タイム』が新規収録、『スタンリー・キューブリック・イン・フォーカス』が新HD収録となっています。『イン・フォーカス』はここで観る事ができます（iTunesを起動）。残りの『ワンス…』ですが、出演者や各専門家が『時計…』の解説をするというもので、たいした内容はありませんでした。そもそもここで語られている内容は本編を観れば十分に理解が可能で、こんな解説ビデオを観なければ理解できない視聴者なら、キューブリックのファンにはなっていないだろうと思われます。収録した意図や意義を感じない埋め草ドキュメンタリーでしかありませんでした。
※ほんのさわりだけですが紹介動画です。
スタンリー・キューブリック コレクション [Blu-ray](amazon)
※『ア・ライフ・イン・ピクチャーズ』は収録されているが、『ロリータ』『バリー…』が未収録。今となっては存在価値はない。
スタンリー・キューブリック リミテッド・エディション・コレクション（初回限定生産） [Blu-ray](amazon)
※特典ディスク2がない以外は『マスターピース・コレクション』と同内容。映画のスチールから流用した写真ばかりの2冊のブックレットにあまり価値は見いだせない。しかし当時はこれが決定版だったので、後だしで『マスターピース・コレクション』をリリースするワーナーの姿勢には疑問を感じる。
