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一見合成を使ったように見えますが・・・。

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セットの設計図によると、両者の間には45度に傾けた鏡が設置されています。

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垂直に据え付けられたディスカバリー号のコクピットのセットに座るゲイリー・ロックウッド。

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セットは水平にも置けるように設計されていた。

 以前も記事にしたように、キューブリックはなるべく合成のプロセスを減らそうと、ありとあらゆるアイデアを駆使して「合成なしの一発撮影」をしていますが、このシーンはその好例です。

 セットの図面にあるように、カメラは左上から真下を向けてセットされています。その真下にいるのはプールで、カメラを見上げています。一方のボーマンは通路を普通に歩いていますが、両者の間には45度に傾けた鏡が設置されているのです。ただ、このままだとボーマンの服が左右逆さまになるので、あらかじめ左右逆さまの服を用意したのではないかと思っています。

 この方法だとセットは大掛かりになりますが、合成のプロセスは不要になります。それも大切ですが、そのシーンの撮影に入ってから、その場でアイデアを出し合って俳優の動きやセリフを決めるキューブリックのやり方は、このように合成などの後処理がないことで自由度が広がります。現在のCG前提による映画撮影では、あらかじめシーンの要素の全ての動きを決めておかなければならないので、どうしてもアクションや、セリフまでもが紋切り型になりがちです。つまり「表現」が「プロセス」によって固定されているのです。キューブリックは「表現」のためには「プロセス」を厭いませんでした(その代わりそれに振り回されたスタッフは疲労困憊でしたが・・・)。このことが現在の監督の作家性を摩滅させているのだとしたら、なんとも寂しい時代です。


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NHK_AS

 2020年5月12日午後9時より、NHK BSプレミアム でオンエアされた「アナザーストーリーズ 運命の分岐点 『“2001年宇宙の旅”未来への扉は開かれた!』ですが、番組の構成上なのか、一部不正確な部分がありましたので、訂正をさせていただきます。

【視点1】

(1)地球外知的生命体を描く試みは映画製作の最終盤まで続けられた(キューブリックが最後までそれにこだわった)

(2)月面のモノリスのシーンは2001年ではなく1999年

(3)キア・デュリアが諳んじたセリフは小説版には残っているが、映画版では使用されなかった。(通信管制官のセリフと記事にしましたが、ボーマンのセリフでした。訂正いたします)

(4)カタリーナが語った「映画館から出て行った観客を数えていた」とは試写会での出来事で、一般公開時ではない

(5)カタリーナがスマホで読んだファンレターの全文『親愛なるスタンリー、あなたはこの映画において、私たちにどのように感じ、どのように考えればよいのかということについての説明をしませんでした。あなたは責任を持ってこの映画の製作を担当しました。私の担当は、責任を持ってこの映画の意味を解釈することです』

【視点2】

(6)モノリスの初期はピラミッド型ではなく「正四面体」。ただし、ピラミッドに見えてしまう問題も抱えていた

(7)アクリル製モノリスに対するキューブリック評は「ただの透明な板」ではく「完全な透明ではない」(少しグリーンがかった透明だった)

【視点3】

特になし

 今回のオンエアを見逃した方は、再放送や見逃し再配信の可能性がありますので、情報がわかり次第Twitterでお知らせいたします。

2020年5月14日追記:【再放送決定しました】BSプレミアム 2020年5月21日(木)午前8:00〜午前9:00(60分)

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NHK_AS

鬼才キューブリックが伝えようとした謎に迫る

残された映像や決定的瞬間を捉えた写真を、最新ヴァーチャルで立体的に再構成、事件の“アナザーストーリー”に迫る、マルチアングルドキュメンタリー。

アナザーストーリーズ 運命の分岐点
『“2001年宇宙の旅”未来への扉は開かれた!』


・放送日
5月12日(火)[NHK BSプレミアム]21:00〜21:59

・出演者
司会:松嶋菜々子
語り:濱田岳
出演:カタリーナ・キューブリック、キア・デュリア、ダグラス・トランブルほか

・内容
SF映画の金字塔「2001年宇宙の旅」。AIの暴走、人工冬眠、地球外生命との接触…半世紀前、まだ人類が月に到達する前になぜ未来を予見できたのか?そして難解なエンディングの意味するところは?鬼才スタンリー・キューブリックが私たちに投げかけた謎に迫るアナザーストーリー。共同原作者アーサー・C・クラークとキューブリックが思い描いた夢と衝突の真相とは?現実が映画に追いついた今、人類の未知なる旅は続く。

(引用元:NHK番組ホームページ/2019年5月8日




 実は、ダグラス・トランブルの講演レポートを送っていただいたカウボーイさまによると、ちょうど当日、日本のテレビ局の取材が入っていたそうです。その講演のレポートはこちらになりますが、番組と内容が重複しているかもしれないので、ネタバレを避けたい方は閲覧をご遠慮ください。

 NHKは以前も自局制作のキューブリックのドキュメンタリー『巨匠たちの青の時代 スタンリー・キューブリック 俺の眼を見つけた!』を放映していました(なにとぞ再放送か円盤化希望!)が、その丁寧な調査と番組編成には好感を持っています。期待してオンエアを待ちましょう。

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右手にグラスを当て、落として割ってしまうボーマン。

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年をとり、老眼であることを示すように眼を細める演技まで計算されている。

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撮影は1966年夏。モノリスのシーンはカチンコによると7月7日となっている。

 『2001年宇宙の旅』の終盤、「白い部屋」(カチンコには「Hotel Room」と書かれている)でのシークエンスで、食事中のボーマンがグラスを割ってベッドの年老いた自分に気づくアイデアは、演じたキア・デュリアが

「何かを聞いたり何かを感じたりする瞬間を(今までのシーンと)違った形で迎えてみたい。グラスを突き倒して、身をかがめようとして、その動きの途中で何かを感じ取れるようにすれば、これまでのやり方の繰り返しにならなくて済む」(出典:『2001:キューブリック、クラーク』)

 と提案しました。これに対してキューブリックは許可を出し、その日の撮影日報に「とてもよい」と書き込んだそうです。

 ところでこの「白い部屋」、2017年に銀座の資生堂ギャラリーで異星人が燃やしてしまった状態を再現した(と思いますが、説明はありませんでした)『善悪の荒野(Beyond good and evil, make way toward the waste land.)』として展示されました(詳細はこちら)。ここでもこの「割れたグラス」は再現されており、ちょっと驚いたものです。この展示、期間限定で東京のみだったのですが、作品が残っていれば再度展示して欲しいですね。

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『善悪の荒野(Beyond good and evil, make way toward the waste land.)』と題されたアート作品。

beyond3ボーマンが割ったグラスまで再現されている。

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目の光ったヒョウに襲われるテリー・ダガン。

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ヒョウに襲われる猿人を演じたテリー・ダガン。

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テリー・ダガンは1年近くヒョウとの友情を育んだ。

 まあキューブリックにもしものことがあれば、そこでこのプロジェクトは潰えてしまうので仕方ないにしても、キューブリック作品の撮影現場では「自分の安全には神経質だが他人の安全には無頓着(撮影に夢中になると更に)」というキューブリックの姿がよく見られたそうです。

 このシーンでヒョウに襲われているのは、「月を見るもの」を演じたダン・リクターではなく、調教師のテリー・ダガンでした。さすがのキューブリックもこの撮影は大変危険なものであることは承知していたので、キューブリックにしては珍しくたった2テイクでOKになりました。

 ちなみにヒョウの目が光っているのはカメラ側から背景写真を投影している、いわゆる「フロント・プロジェクション」が原因ですが、キューブリックはこの偶然を「ヒョウの凶暴性が強調される」と喜んだそうです。

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